ILAオタワ大会
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ここ3年くらい,ILA/ALE界隈では,community organizingとleadershipの関係つまりcommunity organizingに(権限によらない)leadershipがどのように役立つのか,とか,役立つのならばleadershipのどの面を特に強化したらよいか,何を足したらいいか等の議論が盛んに行われるようになった.多くの場合どういうコミュニティのことを指しているのかはあまりはっきり特定されないが,聞いているとやはり地理的なコミュニティのことが多い.そうなることには何か理由があるのだろうか.
ごくおおざっぱな直観的な議論だが,コミュニティから退出する自由があるかどうかが大きな分かれ目ではないかという気がする.退出する自由があるなら,(たとえば)コミュニティに貢献しないメンバーが居てフリーライドされるのが嫌ならやめればよい.また,逆にフリーライドされないように規定を決めることもできるだろう.
ところが,地域コミュニティのように,転居のコストはかかるし地域に思い入れはあり,本人がそこに居続ける限りは入らざるを得ないようなコミュニティの場合は,やめるほうもやめさせるほうも容易ではなく,適応的課題が起きた場合にはまずは現状のメンバーを巻き込んでいくことが前提になる.これこそリーダーシップが必要とされる場面なのではないか.つまり,community organizingにリーダーシップが必要になるのは,退出の自由が少ないようなコミュニティにおいてである,というのが地域コミュニティが議論の中心になる理由ではないか.(写真は今回のALE年次総会のために宿泊したadobe house)
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いまニューメキシコ州アルバカーキで開かれているAssociation of Leaderhship Educatorsの年次総会に来ていて,3月にカンザスに招いてくれたKerry Priestらのリーダーシップ開発論のワークショップに参加しているうちに,学習についてのPositivism vs. Constructivism(実証主義対構成主義と訳されることが多いようだ)という方法論のスライドが出てきた.いろいろ細かい話はあるようだが,ごくおおざっぱに言うと,人が学習するのに,絶対の真実というものがあって,それに向かって段々啓蒙されていくことこそが学習であるという見方(positivism)と,経験から(行く先は事前には確定はしていないが)学習していくしかないという見方(constructivism)と言っていいかもしれない.
リーダーシップ開発者界隈(つまり主にILAとALE)で,やや長めの自己紹介しろと言われて,前は経済学者だったと言うと驚かれる.何かのアクシデントがきっかけでリーダーシップ開発に転向したことくらいはアメリカ人には珍しくないのだが,選りに選って経済学からとは!というニュアンスである.長いバージョンの自己紹介をしてくれと言われたら私の場合のそのアクシデントの詳細と,そのあとの立教と早稲田での体験談を話すことになるので,落下傘部隊の比喩を使った体験談に重点が移ってしまって,「選りに選って経済学から!」という最初の驚きの部分は本人も含めて忘れていたのだが,その驚きが何だったかが今回わかった気がしたのである.
経済学は上に書いたPositivismの権化と世間では考えられてきた(hard scienceと表現されることもあるようだ).だから経済学からConstructivismの極致のリーダーシップ開発論へのシフトは唐突ととられるのだろう.
ところが,いまの経済学はだいぶ違うらしいし,しかもたとえば30年か40年前でも,Positivismに依拠しない経済学(ハイエクやウィーン学派など)は健在だったのであり,彼らからすると,経済学はPositivismだから優れているが歴史主義は駄目だなどという一部の科学哲学の議論などは迷惑千万ないし贔屓の引き倒しだったのである.
そして院生だった頃の私も,金融論と並んで思想史・学説史に興味があって「間接金融」という考え方をめぐる戦後日本の40年間くらいの金融思想史を書いてみたこともある.指導教員からは「君はその方向に向きすぎているからやめたほうがいい」,と火に油を注ぐような止め方?をされた記憶がある.いや,あれは煽っていたのかもしれない.ともあれ,経済学のいう間接金融のとらえかたが正しくて,他の間接金融論は愚論だというのは簡単だけど,他の間接金融論者の議論の欠点ではなく,たとえばどういう動機や背景(あるいは先入観かもしれない)でそのような主張をしているのかを一度は探ってみる価値はあるのではないかと考えたのである.
そういう経緯がきょうのワークショップで急に思い出されたので,「経済学からリーダーシップ開発者に転じられたのは,もともとあまりpositivisticでない経済学者だったからだと思う」という感想を共有した.
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最終日午後は,Leadership Studies所属ではないが関連組織でつながりの深い職員さんたち5人とTA一人の合計6人で質問会議を2セッション行なってもらいました.時間の制約が厳しかったのですが,さすがに職員さんたちの持ってきてくれた問題は質問会議向きの良問で,議論は白熱しALコーチ(私とKerry)は何度も臨時介入をしました.メンバーの飲み込みは早くて学びも深く,最後の感想共有では「コンテンツに一切介入しないALコーチが,生産性向上に貢献できているのは驚きだ」という初心者とは思えない感想も聞かれました.また,ただ一人学部学生から参加した女性(写真左から二番目)も,目を見張る質問力で大活躍していました.(続く)
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Kerry Priest によるLEAD450つまり一番最後の科目(capstone course)をオブザーブしてきました.主な時間はグループコーチングをやっていましたが,最後の10分くらい,彼女が気を利かして,この授業に限らず,リーダーシップ教育プログラム(LEAD)全体が学生自身にとってどういう価値があったかを希望者挙手制でヒアリングしてくれました.not necesarily nice thingsと注文したのにnice thingsばかりw. 何人かが言っているように,全員専攻が違うなかで安心安全の場を共有できたというのはリーダーシップ科目の基本ですね~ 3人目の答え「授業が終わって教室を去るとき嬉しかったり頭に来ていたりするけど,それでまた人との関わりが深まる」というのも泣かせるというか,頼もしいですよね.
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