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2019年4月29日 (月曜日)

セキュア・ベース・リーダーシップ

 コーリーザー他著『セキュア・ベース・リーダーシップ』(原題Care to Dare, 2012年,邦訳2018年)は,人が困難に挑戦する意欲を持つためには安全な基地(secure base)を持っていることが必要で,この基地としては個人(例えば親,家族,友人,同僚,上司や場合によっては会ったことのない人や故人もありうる)でも組織でもよいが,絆すなわち自分と共通の目標があることが肝心と説く.絆の形成の前後には愛着(安心感)>絆の形成>別離>悲しみの4段階があって,一つの絆から別の絆に移るまでには充分に悲しまないといけないといった,やや予想外だがなるほどと思わせる指摘もある.そして本の前半の,自分の安全な基地は誰だろう,どう作ろうという話から後半は自分が誰か他人の安全な基地になるにはどうするか(careとdareの目標リストを作る等),さらに,組織を従業員の安全な基地にするにはどうするか,という経営学寄りの話になっていく.

 第9章にはセキュア・ベース・リーダーシップがセンゲの『学習する組織』(1990年,邦訳1995年,増補改訂版邦訳2011年)のめざす組織を作る意欲をもたらすものとして必須であるという主張もある.センゲの同著については,キーガン&レイヒーの『なぜ人と組織は変わらないか(原題Immunity to Change』(2002年,邦訳2013年)も,学習する組織は皆が望んでいるが人々のimmunity to changeが最大の障害になっているので,免疫マップを書いては改善し,また改訂していくという一種のコーチングプロセスが効果的ではないかと提案している.
 さらに,リーダーシップ論としては,Care to Dareは最小3要素の「相互支援」と「目標共有」の重要なアップグレードであるとも言える.特に,同書の後半の組織が従業員の,上司が部下の安全な基地になるためにどうするかという文脈では,権限を持っている人が,部下にリーダーシップを存分に発揮してもらうにはどうしたらいいかという説明として,サーヴァント・リーダーシップよりも具体的で,しかも個人個人の幼少からの経験とも照らし合わせやすく,分かりやすいので,ビジネススクールはもちろん,学部生にも読みやすいかもしれない.

 学部生は社会人に比べて幼少のときからの年月が浅く,それを社会人になったときどう使えばいいのか想像するしかないが,社会人と合同で質問会議セッションを経験すると,安全な基地づくりはなぜ必要なのか,どうしたら安全な基地づくりができるのか(ルールやコーチの役割など)などを学ぶこともできるだろう.

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