« 2016年3月 | トップページ | 2016年5月 »

2016年4月の2件の記事

2016年4月10日 (日曜日)

リーダーシップ教育の普及元年

昨日書いた「立教で11年間やってきたことを早稲田に移植するだけではなくて伝統的な早稲田の強みをも掘り起こして活用し、できればコミュニティ自体も復興せよ」ですが、これって結構高い目標ですよね。しかも私にはこの後のゴールとして「全国の大学・高校にリーダーシップ・プログラムがある状態」というのを設定していたりします。この二つを次々に実現するなんて、ほとんどmission:impossible (作戦暗号名「不可能」)でしょうか。
 
私は二つの達成は不可能ではないと考えています。というのは、立教発のリーダーシップ教育を他大学で始めようとするときに、まともにやろうとするならほぼ必ずその大学固有の事情を考慮してカスタマイズしなくてはなりません。立教のやりかたは現状では(公開されている)ベストの工場出荷状態の一つなので、そこから各大学に併せて環境設定をいろいろ変えていくわけですね。それ無しに立教のものをコピペしたら、まずうまく行かないのは当たり前だと思います(コピペしようとしてうまくいきそうにないので「あれは立教だからできたんだ」などと言う方もいらっしゃるようです)。このカスタマイズの過程はおそらく結構大変ですが、そこが面白いところでもあります。

いま立教には、学部でリーダーシップを行うなら経営学部BLPと、全学対象の立教GLPと二つのバージョンのプログラムがありますから、他の大学で、リーダーシップ教育を学部単位で始めたいところはBLPを、全学対象で始めたいところではGLPを、当面はまず参考にしていただけるのではないかと思います。早稲田では全学対象なので、まず立教GLPのやりかたから出発しています。これをどのくらいのスピードで早稲田化できるかが、私の当面の課題です。早稲田より一歩先んじて、國學院大學経済学部も開始して、教員と一緒に授業を主導するSAの養成も本格化しています。

そうした各大学でのカスタマイゼーション作業の結果として、逆にどこの大学でも使いやすい新しい(立教版以外の)工場出荷状態(デフォルト)が見えてくるかもしれません。そうすれば、より長期の目標「全国の大学・高校にリーダーシッププログラムがある状態」の実現がいっそう近づくでしょう。

高校については、東京都が今年から「人間と社会」という新設・必修科目にリーダーシップ教育を採用しました(東京書籍発行の「人間と社会」指導書)ので、これから高校版のリーダーシップ教育のモデルがいくつかの都立高校から生まれてくると予想しています。しかもアクティブラーニング運動・政策という追い風も吹いています。なぜこれが追い風かというと、アクティブラーニングは「学生・生徒のリーダーシップを活用した授業」だからです。しかも、アクティブラーニングは「教育手法」にしか過ぎませんが、リーダーシップは「教育目標」でもあるので、この目標に賛同してもらえる教員・学生・生徒なら(内向的な人でも)コミットしやすいからです。

そんなわけで、いよいよ高校・大学でリーダーシップ教育が普及する元年になるのではないかと期待しています。日本リーダーシップ学会も発足し、まもなく記者発表も行われます。これは北米を中心に多くの参加者をもつInternational Leadership Association (ILA)にならって、実務家と大学関係者がリーダーシップ開発・教育について対話できる場の提供をめざすものです。恒例になった立教リーダーシップカンファレンスも第10回を迎え、その場を借りて日本リーダーシップ学会発足も報告される予定です。

R0011136_1


|

2016年4月 9日 (土曜日)

新しい職場での新学期

早稲田での初めての正課授業を水曜に経験しました(相方は、立教でもご一緒してきた稲垣憲治さん)。「正課」とわざわざ書いたのは、実は大学からの強い要請で昨年秋に、お試しの非正課授業を行っていたからです。そのときは学年の途中でもあったので、職員さんたちが学内の他のプロジェクト型科目の受講生などに声をかけて30人ほどの学生を集めてくれました。単位にならないのに参加してくれた学生たちの意欲はおおむね高く、初めての早稲田での授業からいろいろなことが分かりました(学生の気質の違いなどについては、仮設としてまだ未熟で危険な段階なので今後おいおい書いていきます)。

先週水曜に始まった正課(リーダーシップ開発1:略称LD1)には、初年度なので応募数は決して多くないものの、お試し授業のときよりもさらにリーダーシップそのものに関心がある学生が多く来てくれたような印象を持ちました。これは、プロジェクト型授業であることや産学連携授業であることよりも、これから一人一人に必要な世界標準のリーダーシップを身につけようということを軸に宣伝したからと思われます。このあたりは立教でも経験したことです。つまり、クライアントは有名大企業ですよというような売り込み方をすれば学生は多く集まるのですが、リーダーシップに関心の少ない学生が多数集まってしまって、授業が始まってからその勘違い(まあ教員の自業自得なのですが)を直すのに多くの時間をとられてしまいます。

そもそも何故早稲田がリーダーシップ教育を本格的に始めようとしたかですが、(1)創立150週年をめざした「早稲田Vision 150」で「10年間で10万人のリーダー輩出」をかかげていること、(2)伝統的に早稲田は逆境に強いリーダーを輩出してきた(と自負している)のですが、最近その強みにはっきり陰りが見えてきたこと、(3)もともと「逆境に強いリーダー」を早稲田が生んできたこと自体、早稲田の正課教育の成果というより教室外を含めたコミュニティで自然に生まれてきたものらしいこと。

そこで私に与えられたミッションは、自然発生的なコミュニティに任せるだけでなく教室でもリーダーシップ教育を行い、その際に伝統的なそうしたコミュニティの特質を活用・復活してほしい、ということなのです。つまり立教で11年間やってきたことを早稲田に移植するだけではなくて伝統的な早稲田の強みをも掘り起こして活用し、できればコミュニティ自体も復興せよという欲張りなミッションなのです。


|

« 2016年3月 | トップページ | 2016年5月 »