リーダーシップ教育の普及元年
昨日書いた「立教で11年間やってきたことを早稲田に移植するだけではなくて伝統的な早稲田の強みをも掘り起こして活用し、できればコミュニティ自体も復興せよ」ですが、これって結構高い目標ですよね。しかも私にはこの後のゴールとして「全国の大学・高校にリーダーシップ・プログラムがある状態」というのを設定していたりします。この二つを次々に実現するなんて、ほとんどmission:impossible (作戦暗号名「不可能」)でしょうか。
私は二つの達成は不可能ではないと考えています。というのは、立教発のリーダーシップ教育を他大学で始めようとするときに、まともにやろうとするならほぼ必ずその大学固有の事情を考慮してカスタマイズしなくてはなりません。立教のやりかたは現状では(公開されている)ベストの工場出荷状態の一つなので、そこから各大学に併せて環境設定をいろいろ変えていくわけですね。それ無しに立教のものをコピペしたら、まずうまく行かないのは当たり前だと思います(コピペしようとしてうまくいきそうにないので「あれは立教だからできたんだ」などと言う方もいらっしゃるようです)。このカスタマイズの過程はおそらく結構大変ですが、そこが面白いところでもあります。
いま立教には、学部でリーダーシップを行うなら経営学部BLPと、全学対象の立教GLPと二つのバージョンのプログラムがありますから、他の大学で、リーダーシップ教育を学部単位で始めたいところはBLPを、全学対象で始めたいところではGLPを、当面はまず参考にしていただけるのではないかと思います。早稲田では全学対象なので、まず立教GLPのやりかたから出発しています。これをどのくらいのスピードで早稲田化できるかが、私の当面の課題です。早稲田より一歩先んじて、國學院大學経済学部も開始して、教員と一緒に授業を主導するSAの養成も本格化しています。
そうした各大学でのカスタマイゼーション作業の結果として、逆にどこの大学でも使いやすい新しい(立教版以外の)工場出荷状態(デフォルト)が見えてくるかもしれません。そうすれば、より長期の目標「全国の大学・高校にリーダーシッププログラムがある状態」の実現がいっそう近づくでしょう。
高校については、東京都が今年から「人間と社会」という新設・必修科目にリーダーシップ教育を採用しました(東京書籍発行の「人間と社会」指導書)ので、これから高校版のリーダーシップ教育のモデルがいくつかの都立高校から生まれてくると予想しています。しかもアクティブラーニング運動・政策という追い風も吹いています。なぜこれが追い風かというと、アクティブラーニングは「学生・生徒のリーダーシップを活用した授業」だからです。しかも、アクティブラーニングは「教育手法」にしか過ぎませんが、リーダーシップは「教育目標」でもあるので、この目標に賛同してもらえる教員・学生・生徒なら(内向的な人でも)コミットしやすいからです。
そんなわけで、いよいよ高校・大学でリーダーシップ教育が普及する元年になるのではないかと期待しています。日本リーダーシップ学会も発足し、まもなく記者発表も行われます。これは北米を中心に多くの参加者をもつInternational Leadership Association (ILA)にならって、実務家と大学関係者がリーダーシップ開発・教育について対話できる場の提供をめざすものです。恒例になった立教リーダーシップカンファレンスも第10回を迎え、その場を借りて日本リーダーシップ学会発足も報告される予定です。
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