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2015年10月17日 (土曜日)

バルセロナでリーダーシップ教育者のキャリアについて考える

International Leadership Association (ILA)の年次総会に出席するためバルセロナに居ます。ここまでで最も印象深かったのは、リーダーシップ教育者のキャリアについてのワークショップです。一番最初にILA総会に参加した2011年(ロンドン)に偶然隣に座って以来のつきあいであるKerry Priestさんと、同僚のCorey Seemilerさんがファシリテータでした。各テーブルで、自分がどういうきっかけでリーダーシップ教育にかかわるようになったかという経験を共有してみると、会場の大多数が、「偶然」や「なりゆき」で始めることになったと語り、しかもその結果にこれまた大多数が満足している(偶然やなりゆきに感謝している)ことが分かりました。逆に言うと、学部から大学院まで一貫してリーダーシップを研究してきて、そのままリーダーシップ教育を始めたというキャリアの人は非常に少ないということです。

これはいったいどういうことかというと(以下、私の考えです)、リーダーシップ教育を担当し続けることを選ぶ(始めたのは偶然やなりゆきであっても)人は、自分の人生を振り返ってみて、それなりのリーダーシップ経験をしてきており、その経験はリーダーシップについての学部や大学院の授業に限らず、高校・大学・職場のようにさまざまなところで得られたものなのでしょう。で、その経験を、リーダーシップの観点から振り返るという機会があるかどうかが分かれ目なのです。その機会があれば、リーダーシップに興味を持つようになり、自分のリーダーシップをさらに磨こうと思ったり、他人にもリーダーシップをつけてもらうとその人ももっと幸せになれるし社会のためにもなる、と考えるようになるのは自然ななりゆきだからです。私自身、いま振り返ってみれば中学くらいから(高校時代はどちらかというと不振でしたが)大学・大学院時代に数々のリーダーシップ経験と呼ぶべきものを重ねてきていたのに、それをリーダーシップという概念では理解できていませんでした。それができるようになったのは、白状しますが、なんと立教大学に来て自分自身がリーダーシップ教育(BLP)を担当するようになってからです。いったんそれを意識するようになってからは、BLPの主査としてどうリーダーシップを発揮するのが正しいのかを毎日考えることになって今に至りました。

また、学生についても、Kerryさんの言う”to help a student to live a better life”という考えが、私も大学教員になった当初からあったように思います。ところが、better lifeを生きるために学生に知っておいてほしいこととして経済学(当時の私の専門)一本では、あまりに迂回的だとずっと感じていました。そこで、経済学以外にもいろいろなことをゼミ生らと一緒に勉強しようとしてきたのだと思います。その意味では、上記のワークショップ参加者たちと全く同じように、私も、2005年にリーダーシップ教育に出会って「これだ!」と思えたのでしょう。なんだか他人事のような書き方ですがね(笑) 

リーダーシップの理論と出会うのは、私のように中年になってからではなく、もっと早いほうがいいので、大学生か、できれば高校生のうちがいいと思います。私が、アクティブラーニングと一緒にリーダーシップも勉強しましょうと提唱しているのもそれが理由です。

現状の立教のBLPでは、リーダーシップ経験を全然積んでいない学生も居て、その学生にとっては学びが極端に少なくなってしまうので、(必修授業であることを考慮して)リーダーシップ経験そのものも教室内で提供(クライアント企業への提案コンペなど)していますが、学生の経験度合い次第では、大学生であってもリーダーシップ経験の部分はアウトソースというか、教室外で積んでもらうのでもいいのです。例えば体育会リーダーシップ研修はその典型です。2012年にテニス部で始めたこの研修も、いまでは女子ラクロスなどいくつかの部で好評のうちに繰り返し展開するようになりました。 これも高校の運動系部活や吹奏楽でも同じように展開可能なはずです。

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