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2015年10月の10件の記事

2015年10月25日 (日曜日)

Virginia Tech honors residential program (その2)

ここの学生寮のうち学習効果重視のものは、寮(dormitory)と言わずに敢えてresidential hallとか、residential learning communityと言うようだ。その運営については、私の用語でいえば、「洗練された消費者になるのではなく、リーダーシップを発揮する」ことを仕向けるような種々の工夫がされている。例えば、1) RA(resident advisor)が居るが、彼らには指示する・教えるのでなくメンターやコーチとしての立ち位置をとれるような訓練をする、2) RAに対して(消費者として)不満を言うだけで終わらせず提案し実行することを促す。そのためにRAとは別に自治会をおく(ここは大学紛争の苦い経験から導入をためらう大学も多いだろう)。3) (これは別の方向にも作用しうるが)hallへの入居は2年契約とする。 4) 学生発の企画提案は歓迎するが、その参加は学生には強制しない。

2)については、つい先週に、GPAが不振で、本来の規則では退寮しなくてはいけない学生が発生したのだが、学生たちの投票で、規則に「自治会活動でリーダーシップを発揮したと認められる学生については例外を設けることができる」という附則(amendment)の追加が提起されたそうだ。このプログラムを統括する教授(同じresidential hallに家族全員とともに住んでいる)に「その決議、歓迎するんですか」と水を向けると「実はいろいろ考えているところだ」という。RAもそうだが同居する教員も、リーダーシップを体現していて生涯にわたって学習をつづけるような人である必要があるかもしれない。

フットボールは、生で見るのは実は初めてだったが、非常に面白かった。特に、テレビではあまり映らない縦方向がよく見えるゴール後ろだったので、QB(怪我から復帰したばかりで本調子でないらしいMichael Brewer選手)の動きや躊躇がよく分かる。Virginia Techはここまでリーグ戦3勝4敗で、「きょうのDuke大学(ノースカロライナ州)戦を落とせばVirginia Tech (VT)は地区優勝にはirelevantになるだろう。最近Virginia Techホームの観客は、リードされるとsourになる傾向があるので序盤が大切だ」と地元紙に書かれていた。それなのに序盤に2つのタッチダウンで7-14とリードされ、一時追いついたものの逆転できず、4度の延長戦のすえ、2点差で負けてしまった。


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2015年10月24日 (土曜日)

Virginia Tech honors residential program (その1)

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Virginia Techで、residential honors programの取材。メリーランドはhonorsではなかった(巨大なhonorsが別にある)のだが、Virginia Techではいくつかあるhonors programのうち、最も組織化が進んでいるらしいところを見せてもらった。午前中2時間まるまるかけて担当職員さん3人に、予めこちらが用意していた質問をもとにディスカッション。午後はディレクター(知り合い)と学生に室内を案内してもらったり、私が学生と教職員40人ほどの前で講演して質疑応答。そのあとお茶の時間になり、夕食まで一緒に過ごしてしまった。土曜は、Virginia TechとDuke Universityのアメリカンフットボールの試合があるので、写真のようなマルーン(えび茶?)Tシャツをもらった。明日の試合に着て来いというのである。で、今朝これを来てホテルの廊下を歩いていたら、同じTシャツを来た人に何組にも会い、”See you at the game.”と言われた。”honors”という文字が目に入ったのか、敬礼する人もいた(笑) 大学全体のhomecoming day(同窓会)の週の最後の行事なので、卒業生たちがゲームを見がてら泊まりがけでやってくるらしい。おかげで私は大学そばの宿をとれず、空港近くのホテルなのだが、そこにも卒業生がたくさん泊まっているようだ。キャンプ用品みたいなキャスター付き保冷箱に飲み物や食べ物を入れて、ゲーム前に芝生でピクニック(tailgating)するのも恒例らしい。

で、residential honors programだが、learning communityを作り維持するには上級生の役割が決定的という点では、教職員も学生も意見が一致していた。この点はメリーランドと同じ。1-2年生が中心で、1年生は特に、他人と同室になるのが生まれて初めてな人が8割以上という話なのでナーバスにもなるだろうし揉め事や相談事も多い。honorsの場合はその傾向がさらに強いとも職員が言っていた。しかも、honors同士で集まって生活することの意義を、honorsの学生自身が一番痛感しているのが印象的だった。もともとこのキャンパスは人種・出身国の多様性が低い(大半が白人、一部アジア人)ので、同じ学部同士で同居していると同じバージニア州出身、白人同士、同学部、といった組み合わせになりがちなのである。ここのhonorsの場合、全学部から集まってくるので、違う分野同士で強みを発揮し合うという、リーダーシップ醸成についても良い環境であるようにも思えた。honors courseの設置自体が困難な大学が日本では多いかもしれないが、もし設置するなら全学部混ぜて同居させて、コアになる(リーダーシップなどの)ヒューマンスキルのコースを付ける、というのは多様性を増し学びを増す有力な方法であるかもしれない。

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ag leadershipの由来

ag(ricultural) leadershipについては以前にも少し書いたが、今回、VirginiaTechで専門家に話を聞けた。もともと、米国で農業に従事する人たちは、土地を自分で買って、あとは何をどう植えようが耕そうが自由で、誰にも依存しないで生きる独立独歩の傾向が強かった。ところが、政府の各種規制(農薬や土壌汚染など)が出てきたり、企業(バイオ、遺伝子組み換え)や需要家団体との交渉が必要になってくるなど、多数のステークホルダーと交渉・相談・連携する場面が増えてきたので、対人スキルが必須になってきた。1950年代にケロッグ社が大学に資金を提供して、大学に「農家のためのリーダーシップ」の講座を作るようになり、もともと農学部重視だった州立大学にはそれが典型的に現れた(ケロッグはコーンフレークで有名な企業だが、大学との連携にも熱心で、ノースウェスタン大学にMBA課程も作った)。というわけで、最近になって急にブームになったわけではないという話。なお、予想どおり、農学部で教えられてるリーダーシップが、他の学部や大学全体で教えられているリーダーシップとは何ら変わるところはない。

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Chinatown in NY

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約2年ぶりのニューヨーク。アップタウンもミッドタウンもまともなところは1泊300ドル当たり前(しかも円安)だし、今回は短期滞在なので、連泊が条件の割安コンドミニアムにも入れないので、少し安いチャイナタウン地区のホテルに宿泊。聞いていたとおり、80年代に比べてチャイナタウン自体がかなり大きくなっていました(Little Italyは対照的に、どこに消えちゃったのかという感じ)。おそらくは中国から人口が流入しているのでしょう。これは中国から米国への留学生が増えたことにも対応していそうです。チャイナタウン南部にあるNew York Public Libraryの支所は、チャイナタウンにいる若い学生たちが勉強する場所になっているそうです。チャイナタウン内の人口密度と住宅事情を想像すると納得できます(すみません、今回は伝聞と推測が大半です)。チャイナタウン内の道ですれ違う若者たちのグループは、明らかにアジア人の容貌である私と出くわすと、仲間同士の歓談を中断して真顔になり「え~とこのおじさんは知り合いの人だったかな?」と、急いで思い出そうとするような目で1,2秒見て「あ、ちがうみたい」という感じで目をそらしてご歓談に戻っていきます。想像をさらにたくましくすると、図書館で勉強しているはずなのに仲間と馬鹿話しているところを、お世話になっている遠い親戚のおじさんに見つかって一喝されるのが怖い、というような感じ。こんなことが一度ならず二度も三度もありました。これは他の地域では経験しない現象でした。(30年前にチャイナタウン絡みで遭遇した事件についてはこちらをどうぞ)

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2015年10月21日 (水曜日)

Over there

ワシントンDC郊外に食事に行くときに使ったUberのドライバーが女性だったので、正直のところ、運が悪いと思ったのだが、なんのなんの彼女は運転は非常に上手く、公式のスクールバス運転手の免許も持っていた。後席に乗りこむと、buckle upしろと言われたので、You speak like a mother.とおどけると、Yes, I am(笑). 多少渋滞して30分以上乗っていたのでいろいろ話したが、お兄さんが沖縄に駐屯していたことがあるというので、海兵隊?と尋ねるとデルタ(陸軍特殊部隊)だったという。「だった」というのは、”He deceased OVER THERE.” 抑揚の強いover thereは明らかに沖縄のことではないようで、イラクかアフガニスタンで戦死したのだろうと思う。(少し前に見たイラク戦争の秀逸なミニシリーズで”Over there”というのがあったので思い至った) 「私が子供の頃だった」というから同じイラクでも湾岸戦争のほうかもしれない。当然しばらくしんみりしたが、「で、あなたは何の仕事?」という話になり、リーダーシップの話題になってからは、アメリカでの通例どおり話は弾んだ。「権限のない状態で良いリーダーシップを発揮できる人こそ、権限を与えられるべきだ」と言うと「私のeメールアドレスはこれだから英語の本を出したら教えてくれ」と言われた。これもドライバーとしてのレーティングを上げるための営業かな?

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メリーランド大学のresidential leadership program (その2)

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寮で展開するのにふさわしい科目としては、リーダーシップ以外にはどんなものがありますか? と質問したら、第一にはcommunity buildingだという。これは、たまたま寮で同期や一つ上あるいは下になった学生たちと親しくなるだけではなくて、翌年は上級生として下級生のコミュニティ作りを手伝ったり、さらにはここでの寮生活が終わって3-4年生用の寮に移ったり社会に出たりしても、コミュニティを作るにはどうしたらいいのかが分かっていて転用が効くということまで目指しているという(全員がそこまでできるようになるわけではないだろうが)。これは立教の経営学部でいうとSAや学生団体のメンバーたちの役割によく似ている。ゼミの先輩後輩の関係もそれに近い場合があるのだろうが、一つのゼミのなかで閉じずに、学年全体でそういうコミュニティを作れている(よく言われるのは「経営学部では友達の友達はみな友達」)。それにはウェルカムキャンプとBL0の役割が非常に大きいし、そのことが専門ゼミの活性化にも貢献していると思う。

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メリーランド大学のresidential leadership program(その1)

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メリーランド大学カレッジパーク校にある1-2年生用の寮Somerset Hallで展開される、CIVICUSという評判のいいresidential leadership programを見学。1-2年生限定で全学部から60人x2の学生を集める。他にも寮があり、このプログラムは小さい方(学生はキャンパス全体で23000人、そのうち約1万人がキャンパスに住む)。community buildingを重視しておりリーダーシップも重点的に教えているのがこの寮の特徴。別にある巨大なhonors programと違って特に成績のいい学生だけを集めるわけではないという。

リーダーシップ経験はかなり外注しており、1つの学期あたり短期長期含めて4つのサービス経験を義務づけている。大学全体の制度であるCAという寮監(通いでバイト。2-3年生が多い。GPA2.0以上)と、CIVICUSの卒業生から選抜されたRAというpeer leader(寮に同居する3-4年生、GPA2.5以上)がcommunityを支えている。ほかの寮でなくここを選ぶ理由としては、親元を初めて離れる学生にとって面倒見のいい寮は敷居が低い。親御さんにとっても同様だという。1年生の最初に寮に入ったときに、同室で兄弟でない人と寝るのが人生初めてという寮生が97%だというので、そこの環境激変をケアする先輩の役割は重要なのだという。人数が少ないこともあって、先輩や同僚との関係が密で、卒業率・満足率はキャンパス全体より10%も高いという。寮内もくまなく見せてもらったが、共通のスペースがたくさんとってあって、勉強も余暇も寮の仲間と一緒にすごせるように工夫してある。120人は全員が顔見知りだと言う(所属学部は全学に散らばっている)

リーダーシップを教えているならILAにいらしたらどうですかと尋ねたら、他の大学寮と共通の寮費をとっているだけで、プログラム費はとっていないのでいつも予算不足で出張費は無いという。州立大学の制約で、プログラム費を徴収できないのが痛いようだ。PBLを導入して法人スポンサーから資金を集めたらどうですかと尋ねたら、それは良いわねとも。1999年のスタート時から責任者だった女性(学生部職員出身)の情熱で成り立っているような印象もある。私自身の経験を話して、もしあなたが病気になったらこのプログラムはどうなりますかと質問したら、それは困ったわねと。succession problemは確実にありそうだった。(同大学図書館にて)

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2015年10月20日 (火曜日)

Uber vs. MyTaxi

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バルセロナの空港に着いて、Uberアプリを起動するも、サービスが開始せず。あとで知ったのですが、バルセロナ市の裁判所がUberは違法であると裁定したのでバルセロナには一台もUberが走っていないのです。これは困った。サンディエゴ大会のときは、会場近くのホテルは高くて狭いので、Uber利用を前提に1km以上離れたコンドミニアムに泊まって正解だったので、今回もそうしたのが見込み違い。しかたなく空港から正規のタクシーに乗って宿に着きました(スーツケース二つで電車とかバスとか乗りたくありません)。ネットでバルセロナ裁判所の判決のことを知り、もう少し検索すると、Uberの代わりに、ドイツ発のMyTaxiというサービスがあって、そちらはバルセロナでも盛んに使われていることをつきとめました。(Uberの直接のライバルにLyftというのもありますが、それもバルセロナにはありません)。

ユーザから見ると、アプリ上でユーザ(乗客)とドライバーが出会う点は同じ。ドライバーをレーティングできる点も同じ。支払いは車内でのやりとりではなくアプリ上でもできる点も同じ。違いは、正規タクシーなので料金がUberより高いこと。正規タクシーなのでドライバーの腕は確かなこと(Uberには、たまにカックンブレーキのドライバーがいます。その腕では普通はレーティングで低くなって生き残れないのでしょうが、私の遭遇した運転のヘタなUberドライバーは皆女性でした。乗客は男性のほうが多いと思われますので、それでレーティングが甘いのではないかと推測します) MyTaxiにドライバーとして登録するかどうかはタクシードライバー側の選択だそうですので、個人タクシーみたいな人なのか、または社員がMyTaxiにも登録するのをOKするタクシー会社のドライバーなのかでしょうか。バルセロナのようにUberが禁止されているところでMyTaxiが繁盛するというのは分かりますが、UberとMyTaxiが競争しているような市はどのくらいあるのでしょうかね。法廷が介在することもありますが、そうでない場合も、Uberと正規タクシーが競争した結果、ユーザに利益がもたらされているように思えます。海外でUberに乗り慣れて、日本でも、電車よりタクシーのほうが絶対早くて、時間のロスを考えると、タクシー代を払う価値がある場合が結構あることにきづきました(結構高い時給のはずの人でも、どんな場合も移動にタクシーは即贅沢と思っている人は多いですね)。ところが、日本の「全国タクシー」というアプリは、MyTaxiに似ていますが、「迎車料410円」がバカバカしすぎてよほどの事態でないと使う気になれません。迎車料なんて配車を人力でおこなっている時代の遺物です。日本のタクシー会社でどこかMyTaxiと提携を始めてくれないでしょうか。

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2015年10月19日 (月曜日)

バルセロナでリーダーシップ教育者のキャリアについて考える(その2)

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リーダーシップ教育者のキャリアが多種多様で、リーダーシップ一本で学生のころからまっすぐ来た人なんか滅多に居ないというのがわかったのですが、そのままで放置すると、いろいろな人がてんでに勝手なことを教えているのがリーダーシップ教育の実態になってしまいます。それではならじと教科書も多数出版されていて、Susan KomivesさんらのExploring LeadershipやPeter NorthhouseさんのLeadership:Theory and Practiceがよく使われているようです(お二人ともILAの常連というか重鎮です。Komivesさんは2013年に立教リーダーシップカンファレンスにお招きしました。今回Komivesさんの姿は見かけませんでしたが、実はKomivesさんのExploring Leadershipの日本語訳が進行中で、順調にいけば来春発売です。私も関わっています)。他に、ビジネス界でも有名なKouzesさんとPosnerさんのLeadership Challengeもベストセラーです。

これらの本は学生もすみずみまで読むべきだと思いますが、それとは別にリーダーシップ教育に新しく関わることになった教員用に、教えるというか、クラスをファシリテートするときに何が肝かを実用的にコンパクトにまとめたものがあれば、リーダーシップ教育の普及と標準化のために非常に役立つでしょう。2014年夏に立教リーダーシップカンファレンスにお招きした若手リーダーシップ研究者のDan Jenkinsさんらが発起人になって今年から始まった合宿形式の研修も、そうした試みです。一日めは最小限のリーダーシップ理論。二日目は最小限の(アクティブラーニング的)教授法だそうです。

日本にもこの種の本や研修があっていい時期ですね。いま立教のBLP/GLPには他大学や高校から授業と教員SAミーティングを見にこられるかたが毎週いらしてます。教員とSAが一緒に議論して作る授業のmakingのところから公開しているので注目されているのだと思いますが、現在BLP/GLPを担当している教員でも、リーダーシップ教育経験は最長で10年くらい、最短は1年です。1年のかたでも毎週のミーティングや共同スライドを通じてみるみる勘所を体得なさっていくので、その過程を言語化して、Dan JenkinsさんらのAcademyも参考にしながら、本や研修パッケージの形にできたら、ニーズに応えられるんじゃないかな~と考え始めました。アクティブラーニングと一緒にリーダーシップ教育の初歩もしてみようという教員たちにも有用でしょう。いまBLP/GLPには國學院・成城・武蔵の専任教員のかたがいらしているし、来年度からは早稲田と東大も加わるので、立教を中核に、これらの大学の共同事業として開発できたらさらにインパクトがあるかも。

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2015年10月17日 (土曜日)

バルセロナでリーダーシップ教育者のキャリアについて考える

International Leadership Association (ILA)の年次総会に出席するためバルセロナに居ます。ここまでで最も印象深かったのは、リーダーシップ教育者のキャリアについてのワークショップです。一番最初にILA総会に参加した2011年(ロンドン)に偶然隣に座って以来のつきあいであるKerry Priestさんと、同僚のCorey Seemilerさんがファシリテータでした。各テーブルで、自分がどういうきっかけでリーダーシップ教育にかかわるようになったかという経験を共有してみると、会場の大多数が、「偶然」や「なりゆき」で始めることになったと語り、しかもその結果にこれまた大多数が満足している(偶然やなりゆきに感謝している)ことが分かりました。逆に言うと、学部から大学院まで一貫してリーダーシップを研究してきて、そのままリーダーシップ教育を始めたというキャリアの人は非常に少ないということです。

これはいったいどういうことかというと(以下、私の考えです)、リーダーシップ教育を担当し続けることを選ぶ(始めたのは偶然やなりゆきであっても)人は、自分の人生を振り返ってみて、それなりのリーダーシップ経験をしてきており、その経験はリーダーシップについての学部や大学院の授業に限らず、高校・大学・職場のようにさまざまなところで得られたものなのでしょう。で、その経験を、リーダーシップの観点から振り返るという機会があるかどうかが分かれ目なのです。その機会があれば、リーダーシップに興味を持つようになり、自分のリーダーシップをさらに磨こうと思ったり、他人にもリーダーシップをつけてもらうとその人ももっと幸せになれるし社会のためにもなる、と考えるようになるのは自然ななりゆきだからです。私自身、いま振り返ってみれば中学くらいから(高校時代はどちらかというと不振でしたが)大学・大学院時代に数々のリーダーシップ経験と呼ぶべきものを重ねてきていたのに、それをリーダーシップという概念では理解できていませんでした。それができるようになったのは、白状しますが、なんと立教大学に来て自分自身がリーダーシップ教育(BLP)を担当するようになってからです。いったんそれを意識するようになってからは、BLPの主査としてどうリーダーシップを発揮するのが正しいのかを毎日考えることになって今に至りました。

また、学生についても、Kerryさんの言う”to help a student to live a better life”という考えが、私も大学教員になった当初からあったように思います。ところが、better lifeを生きるために学生に知っておいてほしいこととして経済学(当時の私の専門)一本では、あまりに迂回的だとずっと感じていました。そこで、経済学以外にもいろいろなことをゼミ生らと一緒に勉強しようとしてきたのだと思います。その意味では、上記のワークショップ参加者たちと全く同じように、私も、2005年にリーダーシップ教育に出会って「これだ!」と思えたのでしょう。なんだか他人事のような書き方ですがね(笑) 

リーダーシップの理論と出会うのは、私のように中年になってからではなく、もっと早いほうがいいので、大学生か、できれば高校生のうちがいいと思います。私が、アクティブラーニングと一緒にリーダーシップも勉強しましょうと提唱しているのもそれが理由です。

現状の立教のBLPでは、リーダーシップ経験を全然積んでいない学生も居て、その学生にとっては学びが極端に少なくなってしまうので、(必修授業であることを考慮して)リーダーシップ経験そのものも教室内で提供(クライアント企業への提案コンペなど)していますが、学生の経験度合い次第では、大学生であってもリーダーシップ経験の部分はアウトソースというか、教室外で積んでもらうのでもいいのです。例えば体育会リーダーシップ研修はその典型です。2012年にテニス部で始めたこの研修も、いまでは女子ラクロスなどいくつかの部で好評のうちに繰り返し展開するようになりました。 これも高校の運動系部活や吹奏楽でも同じように展開可能なはずです。

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