アクティブラーニングには学生・生徒のリーダーシップが必要
8月22日(土)は、毎年恒例の立教リーダーシップカンファレンスでした。本年の全体テーマは「アクティブラーニングのためにリーダーシップ教育が必要な理由」で、例年よりだいぶ早く満席になってしまいました。私が最近繰り返し申し上げているように「アクティブラーニングは学生・生徒のリーダーシップを活用した授業」なのであれば、大学だけでなく高校でもアクティブラーニングが導入されようとしている今こそが、全国の高校・大学にリーダーシップ教育が必要かつ好適な時期であるという意識にたっての企画でした。カンファレンスの全貌についてはこれからBLPのFacebok pageから報告されるので、ここでは午前の高校の部と午後の大学の部を繋ぐ「アクティブラーニングの授業のどこにリーダーシップが発揮されているか」という実験について報告します。
まず、高校の物理を題材に、アクティブラーニング型授業の普及のために全国を飛び回っていらっしゃる小林昭文さんに20分余りで模擬授業をしてもらいます。(この模擬授業の様子については、実際に高校1年生に対しておこなったものについてブログ記事にも書きましたのでそちらをご覧ください) 今回参加なさっているのは高校と大学の教職員ら大人でしたが、彼らを完全に高校生と見立てて授業を行い、生徒同士のディスカッションで学んでいく授業を短時間体験してもらうわけです。物理の内容の則した「学習目標」と並んで、ディスカッションや教え合いを促す「態度目標」が最初から明示されているところが肝で、これが「教室内のリーダーシップ行動」を促すのです。授業が終わって(教え合いが完了して)全員が確認テストで満点をとったところで、リーダーシップについての振り返りに切り替えます(ここからはおそらく全国でも初めての試みです)。物理の授業を受けた班のままで、誰のどういう行動があったためにディスカッションや教え合いが進んだかをPostItに書き出し、そのPostIt一枚一枚が「リーダーシップ最少3要素」のどれに入るか班内で分類してもらいます。
例えば、いくつかの班であがった「ここが分からない、と最初に発言した」は典型的に「率先垂範」。「尋ね合いやすいように雰囲気づくりをしてくれた」は「同僚支援」です。「率先垂範」や「同僚支援」に比べると「目標設定とその共有」が少なかったのは、最初から「態度目標」が明示されているからでしょう。三つの要素のなかで「目標設定とその共有」が一番難易度が高いので、そこが教員側から予め明示されているのも、理にかなった作りと言えましょう。(運営側の反省としては、PostItに書き出しもらう直前に、「状態ではなく行動について書いてください」という趣旨をもっと詳しく説明すれば、三つのどれにもあたはまらない付箋の割合がもっと低くなったという点があります)。この振り返り作業によって、アクティブラーニングの一つの典型的な授業が、学生・生徒のリーダーシップ行動と、それを促す教員の「補助輪」付けに支えられていることが実感していただけたと思います。
そのあとで、せっかく高校の授業にアクティブラーニングを導入するのであれば、そこで促される「態度目標」はリーダーシップに非常に親和性が高いので、リーダーシップ教育の入門として位置づけませんか? そのほうが内向的な(アクティブラーニングが嫌いな)学生・生徒にとっても納得感が増すのではありませんか? という私の持論も説明しました。
最後の質疑応答セッションでは「自分は物理にとても苦手意識があり、きょうの模擬授業でも、自分は何の貢献もできないのではないかという点が不安でたまらず、とてもリーダーシップ体験とは思えなかった」という感想をいただきました。1科目だけでなく、多くの科目で、また正課以外の多くの場面でリーダーシップが奨励される場面が増えれば、どこかしらで発揮できる学生・生徒の数がうんと増えるはず、というのが私のいまの答えです。
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