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2014年8月の6件の記事

2014年8月19日 (火曜日)

高校生の交友関係とリーダーシップ教育

経営学部の学生団体「高大連携学生プロジェクト(高プロ)」の諸君が都立調布北高校に出かけていって、家庭科の授業の特別版でワークショップを運営するというので、見学に行ってみた。この団体は、高校生に対してPBL授業のミニ版を行うことには慣れていて、経営学部でもオープンキャンパスの中味や学部案内を依頼することがある(経営学部には、学部の教職員の活動を支援しながら自分たちの活動範囲も広げて学習するという学生の自主団体が4つもある。アクション・ラーニングの普及につとめるRALsもその一つである)。調布北高校側の担当者はもちろん、7月5日の立教リーダーシップ・カンファレンスにも登壇した「リーダーシップ・レンジャー術」の木村裕美教諭。

この日は、調布北高校の1年生が、大学生のファシリテーションのもとで、広い意味でのキャリア教育や他者理解についてのワークショップを行うというものだった。私は高校生を対象にリーダーシップ教育を行うことのメリットや、障害になることにはどんなものがあるかを取材するという目的で出かけたのだが、グループワークで漏れ聞こえてくる高校生たちの言葉や、大学生の経験談からいろいろと気付かされた。ある生徒曰く「いまの一年生クラスは凄く仲がいいので、いまから来年の新しいクラスで友達ができるかどうかが凄く心配」。まだ8月ですよ、君、って、そういう問題ではないのか。いま所属している高校のクラスの人間関係に失敗したらもう人生絶望というくらい交友関係が狭いのだろうか(会社にしか交友関係がないという一部の大人と同じか?)。それだと「リーダーシップ」を発揮してみよう等という授業は、相当のお膳立てが必要になる。大学生ならクラスだってサークルだっていろいろだから人間関係はやり直しがきく(まして経営学部なら少人数クラスが常に複数走っていて毎学期クラス替えがある)。この心配性の?生徒の発言に関しては、この高校の卒業生で経営学部1年生になった学生が、「高2のはじめのクラス替えを経ると、高1のときの失敗をある程度リセットしたり、逆に高1のときの繋がりを維持したりというふうに選択肢が多少増えて落ち着く」とも言っていた。また、立教の付属高校から進学した女子学生は「中学のときはイジメや仲間外れがあるが、高校になるとクラスの一体感は落ちてくる代わりに認め合うようになる」と言っていた。また、別の女子高から経営学部に進学した学生は「私のコースは15人で三年間固定だったので、最初こそ人間関係に失敗したら大変とおそるおそるだったものの、学校のいろいろなイベントを経るうちに、どのみちお互いさらけ出す他に共存の道はないと思い知らされるようになった」と語っていた。学校や学年によってコンテクストが違うようだが、高校でリーダーシップ教育を行う場合は大学生よりさらに慎重に、例えばその高校の生徒の生活を熟知する教員と協力してお膳立てする必要がありそうだ。

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360度フィードバックの効能

先日のGL101受講生有志のパーティで、料理しながら聞こえてきたのですが「GL101受講して何が一番収穫だった?」という問いかけに対して「自分にも長所があるんだと知ったこと」と学生が答えていました。これは嬉しかったですね~ 責任感が強く努力家で自分に厳しい人のように見受けられ、それだけに今まで自己肯定感が足りなかったんでしょうね。プロジェクトの途中や最後におこなった360度フィードバックで、初めて自分の長所に気付かされたようです。(短所を含めて)自分を知ることは、リーダーシップ3行動をおこなうためにも常に必要なことなので、それがGL101の収穫であると学生が考えているのはまさに狙い通りです。今後BL0でもGL101でも最初からこれを強調したほうがいいかもしれません。「最大の収穫は・・・有名な○○社をクライアントにむかえたプロジェクトが経験できたこと」などと答える勘違い学生が続出しては困りますからね。有名なクライアントなので気合が入るのはいいのだけど、目標はさらにその向こうにあるので。

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真夏の連日アクションラーニング

来年4月のウェルカムキャンプでまた(三度目)新入生全員にアクションラーニングを体験してもらうために、この夏はアクション・ラーニング・コーチ養成講座を、RALs( Rikkyo Action Learners)と日向野ゼミ合同で行なっている。連日4ないし5つのフルセッションを行なって学内コーチ認定試験を兼ねるというものだ。幸い、連日学外ゲストが入れ替わり立ち替わり来て社会人ならではの「問題」を持ち込んでくださるし、アクションラーニングが初めてのかたも多く、コーチ役になる学生には適度な(時にシビアな)試練の場になっている。セッション中のコーチぶりと、終了後のセッションジャーナルの内容とで合否を決める。落ちて夏休み中や秋に再試験の学生も数多く居る。

組織内コーチを認定する公式の(協会認定の)資格は、協会シニアコーチである私たち少数の教員にしかないからこうしているのだが、夏休み中の集中9日間(きのうはDay 4)は実はかなりつらく、持続可能性の点で不安があった。それを昨日ちょっと口に出したら、数時間後には、参加した受講生と卒業生から、年間で三段階(AL101からAL301)に有機的に講座を分散して負荷のピークと総量を下げる提案が出てきた。素晴らしい。ありがたい。私もやる気がまた出てきたし、こういうときにも、リーダーシップ教育の成果を実感する。

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APSSA総会@京都

同志社大学で開かれたAPSSA総会に参加してきた。環太平洋地帯の大学で、学生部のように学生を支援している教職員(職員のほうが多そう)の集まりである。アメリカの多くの大学のStudent Affairsがリーダーシッププログラムを持っているように、環太平洋地帯でも同様の大学が多そうだ。

中国の武漢にある大学(全国トップ30に入る超優良大学)のインターンシップの話を聞いてたまげた。インターンシップの授業は、正課(つまり単位つき)で、授業は本採用の選考過程そのものとして使われる。教員も企業から来た特定企業の人である。つまり大学は、特定企業に、単位認定権も成績評価権も渡してしまい、場所も時間帯も貸すのである。大学は給料や待遇のいい「特定企業」をたくさんインターンシップ授業担当企業として引っ張ってくることで学生に就職機会をアレンジすることを就職支援活動の柱とする。学生は内定が決まればこのインターンシップ授業を途中でやめていいが、決まらなければ数学期受け続けることも可能。これほど徹底したというか、柔軟な「授業」は、日本や欧米の普通の大学ではまず考えられないのではないか。

武漢の別の大学の学生部長のプレゼンテーションである。全寮制の中国の大学全てにあてはまることらしいが、classと英訳される「班」は、むしろ日本の小中高の「学級」に近い。寮でも一緒という意味ではそれ以上である。入学時に専攻別に30人ごろに決められ、四年間続く。専攻の授業もこの単位(xいくつか)で受ける。(この班が学年全部集まると「班級」になる)この班単位でStudent Affairsのサービスも受けるので、それぞれの班にStudent Affairsのアドバイザー(プロのカウンセラーではないが職員)がつく。その職員たちのトップが学生部長Dean of Student Affairsということらしい。この方式が学生の状態をモニターするのにも有効であるという。オーストラリアからの参加者から、「その班を嫌いになった学生が居たらどうする?」という質問があったが、班の選択や変更の機会はないという答えだった。

翌日午前中はフィリピンとマレーシアの大学のリーダーシッププログラムのプレゼンテーション。特にマレーシアのほうは力がはいっていて(学長じきじきの指示で5年前に作られたらしい)、目指しているリーダーシップは我々と同じく世界標準のリーダーシップで、主催は学生部。学長は「2016年までに、Top Emplyer’s Top Choice of Universityになる」という明確で後に引けない目標を打ち出しているらしい。Liberal Artsの中にも前からリーダーシップ科目があった(これも凄い)が、それは教室内のものが中心で、学生部のほうは教室外・学外での応用(つまり補助輪無し)が中心という役割分担のようだ。日本の中で、リーダーシップ教育はウチの大学の特徴なので他には波及してほしくないなどとケチな考えでいるとアッというまえにこうした大学に負けてしまう。日本全国の大学・高校でリーダーシップ教育をおこなって国内でも海外でも切磋琢磨するという考えが必要なのだと思う。

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海の日にリーダーシップ教育の将来を考える

海の日に、「教職員が立教のリーダーシップ教育の未来を考えるワークショップ」があった。高橋 俊之さんの発案で、ワークショップ運営の達人・舘野さんとの共同運営という強力タッグである。日頃のミーティングでは授業運営で手一杯で、いま目前にある問題(最大でも半年先)の解決に追われる一方、少し長いレンジの計画はもっぱら日向野が担当していたので、今回初めてそれをリーダーシップ教育に関心のある教職員おおぜいで考える機会になった。BLPとGLPの教職員に加えて、理学部・法学部の専任教員や、冬から春に実施した職員リーダーシップ研修参加者も参加してくれた。この日に話したことは何も拘束力を持つものではないが、かえってその分、自由に発想を広げられたように思う。今から15年後の立教の理想状態として、私の班の若手から出てきた案は特に素晴らしかった。「全教職員が自らリーダーシップを体現している状態」というものだ。そこから、もしそうなっていれば何ができるか。また、そうなるためには今から何をどうして行けばよいかを(例によって)PostItと模造紙で考えて行くのである。例えば、その理想状態が実現しているならリーダーシップの授業を担当する教員をリクルートするのは難しくない。全学部の一年生にリーダーシップ入門を受けてもうためには全部で200クラス開設する必要があるのだが、それすら可能に思えてくるから凄い。

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錬金術的広報?

大学の広報関係者の集まりに呼ばれて講演して、いつものBLP紹介ムービーを流したら、あとの懇親会で、某有名大学の広報担当者から「きょうの聴衆の中には、後半の授業風景の部分はヤラセなのではないかと思った人が多いと思う」と言われ、唖然としました。少し腹もたったが、やがてそういう発想をする人が可哀想になってきました。無いものを有るかのように広報することが習慣になっている人たちなのでしょうか。BLP/GLP的にはああいう授業風景はごく日常的ですけどね。

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