立教リーダーシップ・カンファレンス
先週から、私立大学戦略的研究拠点形成事業への選定、立教リーダーシップカンファレンス開催、リーダーシップ寮のお話、と素晴らしいことが続いた。まずカンファレンス。
初日
http://www.jial.or.jp/event/al_forum2014.html
二日目
http://www.kawai-juku.ac.jp/info/active/
初日は日本アクションラーニング協会の年次総会清宮代表の方針で今年はぐっと組織開発方向に舵が切られた。清宮さんは私が立教でやってきたことは組織開発とも言えるのじゃないかとそそのかすのでw、その方面の文献を読み始めると、なるほどかなり近い。調子にのった私の講演タイトルは「立教大学における人材開発と組織開発」。Toshihiro Kanaiさん、清宮さんの機知と示唆に富んだ講演に続き、キリンHiroyuki Oshimaさん、キヤノンの桑江さんら企業における組織開発事例の紹介と同じセクションで、立教大学において過去9年間やってきたことを(職員研修を担当したHさんと一緒に)若干新しい視点で表現してみた。個々のリーダーシップ開発のツールの導入や改良も重要なのだけど、そのツールを実効性のある形で導入するには組織開発というか高橋俊之さんのいうエコシステムの構築が欠かせない。
カンファレンスに先立って、リーダーシップ研究所が私立大学戦略的研究拠点形成事業にタイミング良く選定されたので、二日目冒頭の私の講演では、最近あちこちで話している「アクティブラーニングに先立って、学生へのリーダーシップ教育が欠かせない」という話と一緒に、「立教リーダーシップR&Dセンター Rikkyo R&D Center for Leadership」の構想をご披露した。R&Dとは、もちろんResearch and Developmentのことだが、リーダーシップ方面ではdevelopmentとは能力開発や人材開発の開発と同じように教育のような意味があるので、「リーダーシップのR&D」と言えば「リーダーシップの研究と教育」という意味になる。これは去年4月にニュージーランドのオークランドで開かれた International Leadership Associationのオセアニア大会で聞いてきた表現で、これからの立教にぴったり。つまり、今回の拠点形成選定(今年から5年)による研究(R)と、文科省教育GP・立教GPの連続選定(合計10年)による教育(D)とを両輪としてリーダーシップを掘り尽くすセンター構想なのである。
この話をしたとき会場を見回すと、いつもなら何割かは手元の資料の目を落としたりメモをとっている人がいるはずが、この時ばかりはほとんど全員の目がこちらを向いていて、しかもその目が点状態になっている人が少なくなかった。察するに、河合塾が共催だというのHideo Naritaさん(この日会場にいた立教大学生にもファンがいた)の定評あるアクティブラーニング授業を聞きに来たのに、なんだか開催挨拶代わりにいきなり「アクテイブラーニングやりたいなら、まずは学生にリーダーシップ教育ですよ」などと言われたうえに、リーダーシップR&Dセンター構想まで聞かされてしまった、という次第で驚かれていたのではないか。やや心配になって昼休みに何人かに尋ねてみると、前日の私の講演を聞いていれば違和感はないけれど、ということだった。午後Toshiyuki TakahashiさんYoshikazu Tatenoさん、それに学生二Risa KuriharaさんYu ShimabukuroさんによるBLP授業内容とその進化、そこからの学びの紹介をお聞きになって、その違和感の大半は解消されたことを願う。
カンファレンス二日目午後は私達にとって記念すべき「全国のリーダーシップ教育拠点の取り組み紹介」。工学院大学Toshio Araiさんの、「研究・開発・事業化・市場」の各段階に不確実性があり、不確実性がリーダーシップを要求するのだが、MBAは最後の市場の部分を主に担当しておりその前の段階に行くほど技術者の役割が重要になり技術者にもリーダーシップが必要になるので、理系大学院でリーダーシップ教育を行う積極的な意義がある」という報告。大変おもしろかった。松山大学Michiko Izumitaniさんは、昨年立教でのSusan Richardson Komivesさんらの講演会のときにも来てくださり、その後3月にハワイ大学に学生を連れてサービスラーニング研修をいらしたときに、たまたま同じハワイ大学の学生部を訪問していた小生に遭遇された。泉谷さんは関西の14大学+3短大と連携して、ダイバーシティを確保したうえでリーダーシップ教育をされている。「異文化」を広義にとらえて他学部→他文化→国外→多国籍と段階的に人の構成を用意したり、災害対策型サバイバルや、サイパンツアー、ハワイツアー等、場所や環境を変えてリーダーシップ教育を行なっている。(これならリーダーシップは教室でのみ発揮すべきもの等という誤解は発生しようがない)。木村 裕美さんは都立高校の家庭科の教員。高校生が人間関係に過敏(「複雑でかつ幼稚」)で、教室で教師に促されても他の生徒にどう思われるかを気にして仮面プレーヤーと化してしまうのに困っていたところでたまたま昨年BLPの授業をご覧になり、「仮面プレーヤーだった高校生に質問ブーメランを持たせリーダーシップレンジャーに変身させると、自己開示と自己肯定ができるようになり安心して仮面を脱げるようになるのではないか」と気づいて、高校の授業で実践中だという。高校では完全に一人でなさっているようなのだが全くへこたれず、6年くらいのサイクルで転勤になってしまうことも、そしたら次の高校でまた始めれば横に広がるからかえっていいとポジティブにとらえていらっしゃるようだ。
このあと Dan Jenkinsさんから米国のリーダーシップ教育手法についてのサーベイがあり、最後に二日間通しで参加してくださったToshihiro Kanaiさんから、各拠点について強力な励ましと、下記のようなリマークをいただいて閉会した。
1) なるべく若い時からリーダーシップに入門しよう。
2) 入門したらどんどん上達するように練習し続けよう
3) 先に始めた人は後輩を育てる意識を持とう
4) 自分が使えるリーダーシップ理論を探し続けよう
5) 日本のリーダーシップ研究者の多くがリーダーシップ開発の研究をやっていないのは残念だが、立教のBLP/GLPは大きな励ましになるだろう
6) リーダーシップの学習論についてもっと情報がほしい
太刀川記念館での会を終えて、立食パーティの間も熱気は続いていた。2007年から毎年形を変えながらリーダーシップカンファレンスをやってきたがあんな熱気は初めて。これは何かが起きるぞという感覚があった。
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