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2013年12月の3件の記事

2013年12月17日 (火曜日)

テニス部員のリーダーシップ研修

昨年に続いて立教大学テニス部員・立教新座高校・池袋高校テニス部員を対象にリーダーシップ研修を行なった。チームスポーツであれば「権限のないリーダーシップ」が無いと勝てないことは分かりやすいのだが、テニスのような1-2名単位の競技でも、大学のように団体戦の比重が高い場合や、また平素の練習の効果や長期にわたる士気の維持のためを考えるとリーダーシップが必要であることは、私がテニス部長顧問に就任してから強調して、徐々にテニス部員やOBOGにも浸透し始めている。

そこで今回は冒頭で、部員たち個人個人の将来にとっての体育会の新たな意味も追加して説明してみた。体育会は従来から2つの意味で企業に似ている。一つには成果目標が明確であること。企業であれば利益をあげねばならないし体育会であれば勝たねばならない。もう一つには上下関係がはっきりしていることである。大学の中で上下関係がはっきりしているのは体育会と職員組織であるがその点は体育会のほうが上かもしれない。体育会の厳しい上下関係の中で、権限のないリーダーシップを発揮しようとすると、企業組織の中において部下が上司に対してリーダーシップを発揮するのとほぼ同様の障害に直面する。すなわち、リーダーシップとは適切な指示・命令を出すことだと思い込んでいて、さらに悪い場合にはその指示・命令が適切でないこともあるにもかかわらずその自覚がなく、当然ながら部下(下級生)の、権限にもとづかないリーダーシップを、自分に対する非難や組織に対する反抗とうけとめるような上司(上級生)の存在である。これを防ぐには、上司(上級生)と部下(下級生)を一堂に集めて議論しながら「権限のないリーダーシップ」を経験してもらい、それが日常の活動に活かせることを納得してもらうのが一番よい。今回のテニス部のリーダーシップ研修では、部員の大半が集まり、学年が異なるグループに別れてゲーム等を行い、簡易的な360度フィードバック(SBI)ののち、最後に日常の活動との関係まで議論できたことでそれがかなり実現したところに大きな意義があると思う。今後も年二回のペースでこうしたリーダーシップ研修を行う計画がある。

在学中に、長期にわたって、厳しい上下関係のあるなかで権限のないリーダーシップを発揮した経験というのは、体育会に所属していない学生には滅多にできない経験であり、きちんと言語化できていれば大きなアドバンテージになるのではないか。企業の採用担当者は、体力や上下関係への慣れで体育会出身者を採用するのではなく、「上下関係のあるなかでの『権限のないリーダーシップ』の経験者である」という観点で体育会出身者を再評価してほしい。そのような人材は、グローバル基準での良い上司・良い部下の候補者であることにもっと注目してほしい。

また、全国の大学体育会(と高校の部活動)には、こうしたリーダーシップ研修を取り入れていただきたい。文武両道をかかげる体育会は多いが、そもそも、体育会の活動が武で、授業での勉強が文だという理解は皮相である。体育会活動のなかにも文と武がある。適切に設計すれば、体育会の活動自体の中に、体力・技能養成(武)と、グローバル基準のリーダーシップスキルの涵養(文)という要素を組み込むことができるのである。

Ls

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2013年12月15日 (日曜日)

New York Times in Leadership

偶然ニューヨークに滞在中に "New York Times in Leadership"に私の寄稿が掲載された。来月ぐらいになるとarchiveに入ってしまうらしいのでここにpdfとurlで再録しておく。

「the_new_york_times_in_leadership_leading_thoughts.pdf」をダウンロード

2013年12月15日時点でまだ載っているサイトを閲覧

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ASTD Creating LDP Certificateと大学教職員リーダーシップ研修

Nyc

 ASTD Certificate講座のコーチング(会場デンバー)と、アクション・ラーニング(会場アレクサンドリア)のを受講して、その質の高さに感心したので、今度は”Creating Leadership Development Progam”(会場ニューヨーク)を受講してみた。予想と少し違う方向ではあるが非常に有益であった。

まず事前課題があり、そこからして「どうリーダーシップを教えるか」とは違う内容であるなと予感される。

a. How important is a leadership development program to our organization?
Why?

b. What events over the next 5 to 10 years will have the most impact on our
company’s success?

c. What leadership competencies will be required to address these events? How
different are these competencies from those required of our leaders today?

d. What is the biggest stumbling block to a successful leadership development
program in our organization?

 ウォール街のさらに南のBowling Greenという駅近く、One New York Plazaが会場。creatingだから、まだリーダーシップ開発プログラムのないところ(主に企業)にそれを導入するにはどうしたらいいか、という話。まる1日かかっても、まだ教科内容・研修内容には全然入らない。講師が脱線しているのかというとそうではなくて、当初の予定どおり。それだけ研修の目的や社内(組織内)での場所取り・立ち位置を重視している。午後になって、参加者それぞれが自分の組織の問題点とリーダーシップ開発の必要性についての診断をプレゼンしあう。電話帳を作っていた会社から来ていた女性(参加者は私以外全員女性だった)が、最近経営陣が総入れ替えになって、電話帳を出版する会社からデータベース企業に変貌するのにリーダーシップ開発が必要だということになってこの研修に来たのだが、経営者自身戦略なんか無い、とかかなり赤裸々。お互い自己紹介はしていてfirst nameで呼び合ってはいるが、名刺交換するわけでもなく、会社の固有名はお互い知らない。逆にそれだけ自由に赤裸々に自社のことを語れるという面白い設定だった。そういえばASTDの他の研修セッションでも原則としてそうだった(もしかして禁酒会alchoholic anonymousとかも同じことか!) 
 で私はというと、BLPはもう7年以上前からスタートしているからcreatingじゃないな、GLPの参考にもなるかなと思ってきたのだが、これが大間違い。自社あるいはクライアントの経営上の問題点と社員のリーダーシップ開発というこのプログラムを使うべきは、学生の教育じゃなくて、教職員のリーダーシップ開発なのだろう。大学にあるリーダーシップ・プログラムは必ず教職員を対象に含めなくてはいけない、ということは5月の立教でのシンポジウムでもゲストスピーカーたちが強調していたことであった。で、しかたがないので(?)立教大学全体と経営学部について、かかえている問題と教職員の状況を私の知っている範囲で話すと、議論の結果は、「大学間グローバル競争と学生の教育サービス選別指向とBLP/GLPの成長は、perfect stormだよ、Miki」となってしまった。perfect stormはジョージ・クルーニーの映画の題名で、現状の進路のままで居ると遭難間違い無しの超弩級台風群であり、問題点が致命的な形で現れてしまうだろう、だからそれを避けるには教職員のリーダーシップ開発をしなくてはいけない、ということらしい。私が立教についてどういう話をしたかは秘密。
 結局翌日夕方になっても教材そのものの話は出てこなかった。準備やフォローアップやアセスメントの話ばかり。トレーニングプログラム自体のことは知っている人のための上級篇という位置づけらしい。よく言われるようにヒトの開発は(リーダーシップに限らず)70:20:10の法則で、70は仕事中、20は他人との関係(メンタリング、コーチング、フィードバック等)、最後に10だけが教室や研修でのトレーニングで習得されるとしたら、それも当然とも言えるだろう。ある意味でBLP/GLPはこの3つの要素が全て大学で起きるように設計されているとも言える(プロジェクト課題のために教室外で作業している時間を含む、という意味)。
 きのう必要性に思い至った大学教職員のリーダーシップ開発について、漠然と上記の10のトレーニング・研修をイメージしていたが、きょうのディスカッションで必ずしもその必要はないと気付かされた。例えば、学内で解決したい問題で多分リーダーシップ不足によるのではないかと思われるようなものを選んで、課題解決を数人から十数人の教職員有志でやってみる。最初と最後にリーダーシップ持論を書いてもらう。途中で振り返りを入れる。複数班で実施するなら解決案のコンテストしてもいい。最後にもう一度持論を改訂し、360度フィードバック。問題解決部分にアクション・ラーニングを使ってもいい。つまり教職員版PBLないしアクション・ラーニング(あ、学生にコーチになってもらうのもいいかもしれない)。楽しそうだし問題解決というわかりやすい実利もあるかもしれない。

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