経営学と関係ないリーダーシップ開発とleadership minor設置の意義
サンノゼ州立大では、経営学部が全学に対してリーダーシップ・マイナーを提供し始めました(始めました、というのは三年前に訪問したときには無かったからです)。ワシントン・ボルティモア方面で訪問した3大学ではStudent Affairs (Student Life)が提供していたので、サンノゼ州立大(以下SJSU)ではどうしてそうしないのかと尋ねたら、確かに、専門科目は各学部が提供し、(リーダーシップのような)ジェネリック・スキル養成についてはStudent Affairsが提供するという分業は魅力的だけれども、この大学ではStudent Lifeが出す科目に対して単位を出すことには学内の抵抗が強そうだからという答でした。ジョージ・メーソンでもStudent Lifeの提供科目を公式単位科目として認定してもらうようにするまでにいろいろ苦労したと聞きましたから、同じ事情でしょう。メリーランド州立大は大学の職員側部局が教育上の役割を直接果たすことについて全米で見ても先進的で、それに関する博士課程もあって弟子を輩出しているから他大学への影響力が大きいそうです。そういえばメリーランド州立大教育学部の重鎮Susan Komivesさんのところから、ジョージ・メーソン(バージニア州立)大にもKomivesさんの弟子や同僚が何人も送り込まれています(4月はじめに会った人の何人かは、まさにその人たちだったわけです)。また、リーダーシップ・マイナーを誰が提供するかについては、Student Affairsの位置づけ以外に(まあ当然のことですが)学内でどのセクションがリーダーシップ教育のノウハウを最も持っているかという要因も大きくて、サンノゼ州立大では経営学部に優位がある(たぶんJoyceさんが居るから)ので現状のようになった、と。
そのような違いがある半面、東部で訪問した三つの大学とサンノゼ州立大で共通しているのは、主専攻と副専攻の二本立てが(必修にせよ選択にせよ)確立していて、副専攻の中には専門知識ではなく(リーダーシップのような)ジェネリック・スキル涵養のための科目群があること。また、学生が副専攻として○○を学びました、と履歴書に書くためには副専攻内で積み上げ式に科目をとらなくてはいけないこと。
リベラル・アーツを重視するとしたら、一般教養科目のようにいろいろな科目をとることを強制するか、主専攻と副専攻を持つことを強制するか、どちらがいいのかについては既に多くの議論があると思いますが、積み上げ式の科目を提供するなら副専攻のほうが好都合で教員にも(意欲的な)学生にも良いのでしょうね。
リーダーシップマイナーを作ることにはもう一つ大きな意味があります。英語の leadershipには、「経営陣」「責任者たち」「管理職たち」という意味もあるせいだと思いますが、米国の大学や大学院でleadership programがあります、と自称しているところでも、実は「管理職にな必要な科目群」という意味でしかないようなものがかなりあります。つまり、「管理職に必要な会計学」「管理職に必要なマーケティング」「管理職に必要な経営戦略論」「管理職に必要なHR」等々の集合体がleadership programですよ、というわけだ。これはリーダーシップそのもののスキルを磨くというリーダーシッププログラムではない。どこの大学が真のリーダーシッププログラムを提供しているかを見分けるかなり確実な方法があります。それは、リーダーシップをマイナー(副専攻)として提供していれば、そのリーダーシッププログラムは大なる可能性で(管理職の知識集合体という意味ではなく)リーダーシップスキルの涵養を目指しているのです。そうだとすると、真のリーダーシッププログラムを持っていると自称する大学(学部)は、外からそのように判断されるためにはリーダーシップマイナーを持つのが効果的であり必要なことなのではないでしょうか。
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