« 2012年4月 | トップページ | 2012年7月 »

2012年5月の13件の記事

2012年5月24日 (木曜日)

「反転」授業?

スタンフォードの「逆転授業」が話題になっています(例えば東大の山内さんの記事)が、それと同様の試みは日本でも行われて来たとも聞きます(例えば早稲田大学の向後さんらのeスクール)し、講義系と演習系というふうに広くとらえてみると、「本はみんな読んできて授業時間中は議論しましょう」という方式は昔から演習形式の授業の前提だったとも言えます。その意味では「反転」の歴史は意外に長いですね。

ただ、この「みんな読んできて」という部分の能率や意欲については、

1)一人ですいすい本を読んでくる人(研究者に向いてる人かも)、
2) 仲間と一緒に読書会するほうがいい人、
3) 視聴覚教材のほうがいい人、

と個人差があるんですね。

その中で3)について、モバイル適合的な視聴覚教材を用意して受講生に見てきてもらう、というのが今話題の「反転授業」の主なトレンドなのだと位置づけられるかもしれません。また、伝統的なチューターシステムつまりメイン授業と並行してTA主導で宿題教材の読み合わせをしてからメイン授業に臨むというのは1)と2)の組み合わせとも言えるかもしれません。

なお、いま私のゼミでは、2)と3)を組み合わせて、授業の前に数人の班ごとに読書会をしてもらって、まとめビデオをyoutube(限定公開)にあげて、ゼミ全員が自分以外の班のまとめビデオを授業前に見てきて、授業時間中は班の間の違いを議論したり、その場で気づいたことを議論したり、関連知識や関連文献を日向野が紹介する、という方法を試しています。テキストはエドガー・シャインの『人を助けるとはどういうことか』。なお、実はこの本の中では質問の方法や分類がとても重視されていてアクションラーニングに直接役立つので、この本を読みつつALセッションをゼミ時間内に実行したい、しかし両方する時間がない、その時間を稼ぐための苦肉の策として考案したものなんですが、けっこううまく機能している気がします。


|

日本アクションラーニング協会での講演

2011年11月に日本アクションラーニング協会のエクセレントアウォード2011をいただいたときの受賞記念講演の映像です。私と、SAたちが話しています。

|

デンバーあれこれ

1) 高地だとたかがエアロバイクでも低地よりどっと疲れる気がする。運動していないときでも少し水補給をおこたると軽い頭痛がしてくるし。気温の変動も激しいし、一日の最高気温が16-17時に来る(太陽の南中が遅いせいか)のも変と言えば変。南中と自分で書いて、シドニーでの笑い話を思い出した・・・

2) デンバーでは、ビールだけで酔うような気がしていたのでまだ時差ボケなのかと思っていたら、高地だとアルコールの効きも早いんだそうで。知らなかった。地元人曰く、二つのAに気をつけろ、と。airが薄いのと、alcoholが効くの二つ。
 気圧が低いとそうなるってことなら飛行機の中もその傾向があるわけですよね。夜のフライトで普通に飲んだら飲み過ぎになって、現地に着いたら日が高くてそのまま仕事、というのが最悪でしょうねw

3) デンバーで気づかないうちに日焼けしていました。なんとなくスキー焼けのような感じ。コンベンションセンターへの往復と、あとは夕方のスーパーへの買い物往復くらいしか行ってないのですけどね。高度が高いというだけでこんなにいろいろなことが違うのか。知らなかったけど、米国の中ではリゾートとしての人気第三位(たぶんフロリダとハワイの次?)だそうです。

4) デンバーと言えば、映画の「夜明けの大空港」(Doomsday flight, 1966)で決定的な役割を果たすんでよね。なかなかよくできたパニック映画だったという記憶があります。機長のバン・ジョンスン、FBI捜査官ジャック・ロード、それに爆弾犯のエドモンド・オブライエンの演技が光ります。なお、この映画、「エアポート2001」(Nowhere to land, 2001)と混同されることがあるけど別の映画です。しかもこの二本、どちらも「大空港」や「エアポート」シリーズとも関係ないというややこしさw

5) 冷たい雨が降っていた時、地元の人が「皆さん、明日山をご覧になると冠雪していますよ」と言ってた。で、翌朝見ると(朝6時)ほんとに冠雪している(写真)。

535833_10150910248586357_540941356


6) 頭痛がするので風邪をひいたのかと思っていたら「頭痛は空気が薄いせいです。喉が乾く前に水を飲んでください」という注意があった。鼻血もでやすいようだ。デンバーで日本のかたと会食したとき鼻血がでていたので「大丈夫ですか」と心配してくださったけれど、その人と日本で再開したら「私も翌日鼻血がでました」と苦笑していた。

7) 雪山や湖水や川があるので、夏と冬のスポートやアウトドアは楽しいでしょうね。ただ、ボクシング12ラウンドとかテニス5セットマッチとかあったら、死人が出るんじゃないかという気もします。

8) 怖いところだみたいな印象をお持ちになるといかんので慌てて付記すると、山の景色は素晴らしく、街の中心部もオシャレです。アメリカの普通の地方都市とは全然違って個性的です。ですがmile cityと呼ばれるだけあって高地にあるためいろいろ下界では起きないことが起きる次第。

|

ASTD Certificate Programs

 577642_10150928534001357_540941356

(デンバーでのCoaching Certificate講座にて。左から、ベネズエラの社長さんFernando、私、ミネソタ大学公開講座の講師Maxine(名札の主のポルトガル系ハワイアンCherieは離席中)、サウジアラビアから来た無口なAbdullah)

続きを読む "ASTD Certificate Programs"

|

コーチングとSBIフィードバック

 Coaching Certificate講座は、受講生たちとのディスカッション7割・講師からの講義3割くらいの比率で進んでいた。そのためテキストはかなりすっ飛ばすというか、読めば分かるところをわざわざ説明しない。受講生たちがひっきりなしに手をあげて質問したり経験談を語ったりするので、自然にそうなるとも言える。日本人ばかりの場合は皆講師に気をつかって(および、他の人にどう思われるかを恐れて)決してこうはならないのでは。グループで特定の問題について話してもらってからそれを教室全体で共有するという方式なら日本人も大丈夫ですけど、一人でスパっと手を挙げるという人は学生でも社会人でも少ないですね。  コーチングに使う質問の練習の時間帯があり、アクションラーニングの練習の蓄積を活かしたらペアを組んだ米国人(モーガン・フリーマンみたいな人)に感心された(へへ)。これで思いついたんだけど、アクション・ラーニングの練習をひと通りしたら、質問力だけにフォーカスした練習を、コーチングの教材を使って行う方法を思いついた。日本に帰ったら試してみよう。
 アクションラーニングと同様にクライアントを支援することが目的で、質問力が重視されるが、質問の性質・傾向について多少違いがあり、アクションラーニングに比べると少し誘導的なものを許容する傾向があるようだ。ではファシリテーションと同じ方向の質問かというと、また少し違う。逆にある種のコンサルティングとも多少は重なるところがある。より広い「支援」の一つの形だから質問が重要になり、質問の種類が少し違うということなのだろう。  きょうはロール・プレイもあり、コーチング対象のクレイグの役をやる番になって、ちょっと暴れてみてw面白かった。ただ、コーチ役のほうはただしくコーチすればいいので方向性はまあはっきりしているのだが、コーチング対象の社員(でありなおかつクライアント)であるクレイグについては、どのように暴れたらいいのか充分に研究?する時間が与えられず(あるいはそのように設計されておらず)、難しい面もあった。また、他のメンバーたちのクレイグ役としての暴れ方はもっと凄くてコーチ役にあたった私は困惑したが、コーチ役2ラウンド目は多少マシにできたかも。  BLPで節目節目で使うSBIアプローチによる相互フィードバックは、「成績評価には使いませんよ」と明言しているのだが、「じゃあ何のためなのか」と言われれば「お互いの向上のための贈り物なのだ」と説明している。これは実はコーチングなのですね。ポシティブ・ネガティブと言っているのは、コーチングの用語でいうと、reinforcing(もっとその方向でやったほうがいいよ)とredirecting(ちょっと違う方向でやったほうがいいよ)という二種類のフィードバックで、どちらも建設的であることがはっきりするでしょう。なので、コーチング(のうち特にフィードバックのしかた)の技量をあげることが目的でもあるんです、と受講生にも言っておいたほうがいいのかもしれません。

|

Teaching, coaching and learning

「ティーチングからラーニングへ、と言われて久しい」のだそうですが、教師が教室内外ですべき仕事は何か、という意味では「ティーチングからコーチングへ」あるいは「ティーチング専業からコーチング・ティーチングの兼業・使い分けへ」のほうが正確ですよね。コーチング以外にラーニングをデザインするという仕事も含めるなら、「コーチング・ティーチング・ラーニングデザインの兼業」か。ああ忙しいw ただ、教師がKhan Academyみたいなビデオを自分で作ることにこだわらずどんどん外部のものを使うようにすると、未来の教師はコーチングとラーニング・デザインに特化することになるのかもしれませんね。これは面白いかも。

|

job shadowing

 これもジョイスさんと話していて思いついた。リーダーシップ開発やキャリアデザインの方法の一つとしてshadowingというのがあるので、BLPでも一部に導入してみたらどうだろう。これは優れたリーダーシップを発揮していると思われる人(主に社会人)のそばに一日とか一週間とか一ヶ月とかしじゅう影のように付いていて、どんな仕事をしているのかを見て学ぶというもの。単純に好奇心を満たせることもあるだろうし、凄い決断の瞬間に立ち会えることもあるかもしれない。そのときにはどういう決断だったか教えてもらえないこともあるだろうけど、後で意味が分かって、そのときの様子が思い出されるようなこともあるでしょう。昔「かばん持ち」として社長さんや政治家から新人が学ぶ機会として日本にもあった習慣とよく似ているとも言えますね。立教のOBOGに頼んでみるといいかもしれない。希望者も居そうですよね? 守秘義務とか誰に頼むかについて何度かBLP教員・事務局側にもお試し・学習期間が要りそうでもあります。

|

BLP内部にリーダーシップ開発論を設置したい

ジョイスさんがサンノゼ州立大でやっていることからヒントを得たのですが、いま経営学部のSAで行なっている質問会議などの研修は、典型的なリーダーシップ開発ツール教習なので、これをもっと広げて、「リーダーシップ開発論」という授業として(例えば後期に)開講したらどうでしょう。リーダーシップを教える、つまり他人にリーダーシップをつけさせるにはどうしたらいいか学ぶ科目です。SAになりたいという人はこの単位をとってなくてはいけないし、SAになるのとは関係なく開発論そのものに興味がある人もいるかもしれません。  わざわざ「開発論」と銘打っているのは、リーダーシップという現象を解明するリーダーシップ論とは区別して、受講者にリーダーシップをつけさせるにはどういうツールをどう使ったらいいか、それは何故かという、いわば研修方法とその理論の勉強だからです。BLPで既に使っているプロジェクトベーストラーニングの基礎理論や、振り返りの理論や、成人学習の理論も少し、それから質問会議の理論も当然入りますね。企業研修の最先端で使われているツールのどれが学生向きかを吟味したり、学生向けにカスタマイズしたりという作業も面白いかも。準備するのも大変そうですが、しかし非常に面白そうな気がします。  こういう構想ってただちに実現できないとしたら、まず最初は単位にならなくても熱心に参加した人が一定の数居た、という実績があると強いんですけど、希望者は集まりますかね?

|

リーダーシップに対するニーズ

 私の経験した範囲での話ですが、米国では、リーダーシップが重要だ、とかリーダーシップ教育は必要だ、という認識は、日本とケタ違いに普通のことのようです(米国でリーダーシップ教育の成果が順調にでているかどうかという話は別だけど)。リーダーシップというとカリスマ性のある凄い人、織田信長とか豊臣秀吉をイメージしてしまって、「私には関係ないこと」と思ってしまう人が多いせいかも(あげくの果てに「フォロワーシップも大事」という話になってしまう。これはリーダーシップを二元論dualismでとらえているせいですね)。米国では、大学の職員とか、銀行で口座を開くときに話すマネジャーとか、「何を教えているんですか」という話に自然になり、そのとき「マーケティング」と答えるの以上に「リーダーシップ」のほうが分かってもらいやすいと言えるかもしれない。ホノルルでタクシーの運転手が興味を示すからリーダーシップのことを話したら料金を値引きしてくれてこっちが驚いたこともありますw

|

経営学と関係ないリーダーシップ開発とleadership minor設置の意義

 サンノゼ州立大では、経営学部が全学に対してリーダーシップ・マイナーを提供し始めました(始めました、というのは三年前に訪問したときには無かったからです)。ワシントン・ボルティモア方面で訪問した3大学ではStudent Affairs (Student Life)が提供していたので、サンノゼ州立大(以下SJSU)ではどうしてそうしないのかと尋ねたら、確かに、専門科目は各学部が提供し、(リーダーシップのような)ジェネリック・スキル養成についてはStudent Affairsが提供するという分業は魅力的だけれども、この大学ではStudent Lifeが出す科目に対して単位を出すことには学内の抵抗が強そうだからという答でした。ジョージ・メーソンでもStudent Lifeの提供科目を公式単位科目として認定してもらうようにするまでにいろいろ苦労したと聞きましたから、同じ事情でしょう。メリーランド州立大は大学の職員側部局が教育上の役割を直接果たすことについて全米で見ても先進的で、それに関する博士課程もあって弟子を輩出しているから他大学への影響力が大きいそうです。そういえばメリーランド州立大教育学部の重鎮Susan Komivesさんのところから、ジョージ・メーソン(バージニア州立)大にもKomivesさんの弟子や同僚が何人も送り込まれています(4月はじめに会った人の何人かは、まさにその人たちだったわけです)。また、リーダーシップ・マイナーを誰が提供するかについては、Student Affairsの位置づけ以外に(まあ当然のことですが)学内でどのセクションがリーダーシップ教育のノウハウを最も持っているかという要因も大きくて、サンノゼ州立大では経営学部に優位がある(たぶんJoyceさんが居るから)ので現状のようになった、と。
 そのような違いがある半面、東部で訪問した三つの大学とサンノゼ州立大で共通しているのは、主専攻と副専攻の二本立てが(必修にせよ選択にせよ)確立していて、副専攻の中には専門知識ではなく(リーダーシップのような)ジェネリック・スキル涵養のための科目群があること。また、学生が副専攻として○○を学びました、と履歴書に書くためには副専攻内で積み上げ式に科目をとらなくてはいけないこと。
 リベラル・アーツを重視するとしたら、一般教養科目のようにいろいろな科目をとることを強制するか、主専攻と副専攻を持つことを強制するか、どちらがいいのかについては既に多くの議論があると思いますが、積み上げ式の科目を提供するなら副専攻のほうが好都合で教員にも(意欲的な)学生にも良いのでしょうね。
 リーダーシップマイナーを作ることにはもう一つ大きな意味があります。英語の leadershipには、「経営陣」「責任者たち」「管理職たち」という意味もあるせいだと思いますが、米国の大学や大学院でleadership programがあります、と自称しているところでも、実は「管理職にな必要な科目群」という意味でしかないようなものがかなりあります。つまり、「管理職に必要な会計学」「管理職に必要なマーケティング」「管理職に必要な経営戦略論」「管理職に必要なHR」等々の集合体がleadership programですよ、というわけだ。これはリーダーシップそのもののスキルを磨くというリーダーシッププログラムではない。どこの大学が真のリーダーシッププログラムを提供しているかを見分けるかなり確実な方法があります。それは、リーダーシップをマイナー(副専攻)として提供していれば、そのリーダーシッププログラムは大なる可能性で(管理職の知識集合体という意味ではなく)リーダーシップスキルの涵養を目指しているのです。そうだとすると、真のリーダーシッププログラムを持っていると自称する大学(学部)は、外からそのように判断されるためにはリーダーシップマイナーを持つのが効果的であり必要なことなのではないでしょうか。

|

建物も出身国も多様

548539_10150836000911357_540941356


続きを読む "建物も出身国も多様"

|

Student Center建設

427872_10150835936516357_540941356


続きを読む "Student Center建設"

|

2012年5月23日 (水曜日)

サンノゼ再訪

556276_10150835956851357_540941356

続きを読む "サンノゼ再訪"

|

« 2012年4月 | トップページ | 2012年7月 »