Johns Hopkins大訪問
4月3日、ジョンズ・ホプキンズ大学訪問の初日。朝8:30の朝食会から18:30-20:00の夕食会までびっしり予定が組まれていました。今回訪問する中では唯一の私立大で、授業料が年間3万5千ドルだそうです。学部学生の90%以上がキャンパス内の寮かキャンパス近辺のアパートに住んでいます。今回、最初はバージニア工科大学も全寮制の大学の例として見に行かねばと思っていたが、ジョンズ・ホプキンズも実質的に全寮制なので、ある意味で助かりました(バージニア工科大はワシントンDCからはすごく遠い・・車で3時間以上)。ロンドンのリーダーシップ学会で知り合ったBill Smedickさんが朝8:30に大学そばのホテルまで迎えに来てくれて朝食会でスタート。SmedickさんはStudent Life (Student Affairsと同じ)の職員の身分ながら博士号を持っていて、Engineering Schoolの中でリーダーシッププログラムを11年前に始め、授業が段々増えてきて正規の授業になり、今ではEngineeringだけでなく広くArts and Scienceの学生も選択する人気授業になってきたようです。ジョージメーソン大学や、次に訪問するメリーランド大学にあるstudent leadership programと同じようにLeadership for a Better WorldやExploring Leadershipのような学生用リーダーシップ開発論の本に基づいたプログラムです。その意味では今回訪問する三つの大学は同じ理論にもとづいたリーダーシップ教育をおこなっていると言えますが、リーダーシップと言えば「命令の出し方」のことだと思ったり、「カリスマ」のことだと思ったりする人が結構多いという点はアメリカも日本も同じであることが今回分かったので、「権限のない場合でも発揮できるリーダーシップを身につける」ことを目標にしていると明言しているところを探すと自然に絞られてくるとも言えそうです。ついでに言うと、student leadership programと銘打ったプログラムがある大学は、1980年代には50個くらいだったのが90年代に100くらいになり、2010年には全米で1000を超えた(ILA調査)と言われていますが、その全部が「権限のないリーダーシップ」を主眼にしているかというと、まだまだそうでもない点は注意が必要かもしれません。
さて、朝9時半から夕方4時まで4つ授業見学が組まれていて、少人数授業なので4回自己紹介し質問を受けコメントを求められ、4時半からのfaculty meetingに行くとそれまで見てきた4つの授業の担当教員4人が集まっていて感想を求められたりBLPの紹介をしたり(といっても皆BLPの紹介ビデオは何度も見てくれていました)ノウハウの交換をしたり、と素晴らしい時間を過ごしました。連れの二人も、段々自己紹介がうまくなってきたり、学生の聞き取りづらい話に対しても質問のツボは外さないなどの進歩が見えました。ただ、授業中に、こちらが学生の表情に注目しているとき等に急に話を振られることもあり、そういうときは三人とも言葉に詰まることもありました。class observationは今まで何度も経験していますが、ほとんど常に何か自己紹介以上のことを言わされますね。
4月4日、Johns Hopkins二日目。学部学生の90%はこのキャンパスに居ます。日本と違って、なんと一斉の昼休みがないんですね。授業間は30分時間があるので、quick biteしたい人は食べられなくはないし、空き時間がある人はそこで食べる。一斉昼休みを設けたせいで食堂が激混みするということがないようになるとか、授業数を増やせるといった考えなのかもしれません。例えば一日目に見た授業の一つは、12時から13:15という普通ならランチタイムの時間帯に開かれる「Leadership theory」。講義が少しあり、事前課題に基づいてグループディスカッションに入る。グループ分けはカジュアルで、よくある机付きの椅子でそれをズルズルと回して近場の人とグループディスカッションしてまた戻す、というくり返し。授業は75分間で週2回か、50分で週3回かのどちらかで、13-14週。
クリスマスで秋学期が終わり、春学期が始まるのは1月末なので、間に3週間ほどintersessionという期間があります。その期間中に3週間の集中でリーダーシップの授業があります。学期中忙しい人もそこでとって、さらに極めたいと思えば学期中のを取ることもできます。冬休みのこの授業の終わりにBLPに似たコンテストがあって、さきほど書いたのはそのことです。この授業で面白さが分かってリーダーシップの授業を続けてとる学生も多いし、学生リーダーシップ団体に入る学生も多いそうです。学生リーダーシップ団体にとっては、というかリーダーシップ教育自体にとっても、学生のほとんどがキャンパスに住んでいるというのは大きなメリットになっているようです。
この日は授業見学以外に、学生組織の活動ぶりを紹介してもらい、そこで活躍する学生たちと会って話す時間が2時間もとってあって刺激的でした。ここで最も驚いたのは、ビジネスコンテストに対して卒業生が資金を寄付してくれて、優秀賞に選ばれた計画を学生が実行に移すために使っていることだった。実行部分についても学生が自分の手で行うというところが凄いですね。この日聞いた中では「ブータンやアフガニスタンからの難民が米国に定着すべくガーデニングや農業のノウハウを身につける練習用に農園を開く」というものが光っていました。
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