ワシントンDCでアクションラーニング
ワシントンDCで三大学を訪問する旅に来ているのだが、ちょうど、郊外のアレクサンドリア市(バージニア州)にあるASTD本部でアクションラーニング基礎講座があったので、二日間受けてきた。東京でGarry Luxmooreさん(WIAL豪州代表)のグローバル講座を受けてきたばかりだが、今回の内容とダブりは意外に少なくて、今回は企業の具体的な経営問題をアクションラーニングで解決しようとする場合におこりそうな問題とその対処方法を、講師と受講生がともに出しあって議論することに相当の時間をさいていた。講師は当初Marquardtさんの予定だったのが、急遽Arthur FriedmanとJoanna Irvingという人たちに代わってしまい、「あれま」と思ったらこの人たちも極めて優秀なコーチで、刺激的だった。受講生たち(12人)はアクションラーニングがまったく初めてという人が大半だったが、コーチたちの熱心な指導のおかげで、時間が経つにつれてどんどんアクションラーニングにのめり込んでいくのが分かった。二日間終わると、次のステップに行きたいという人が大半だった。 アクションラーニングのセッションそのものは二日間で合計4つだけだったが、ALコーチ役と問題提示者役に志願した。
12人のうちnative speakerでないのは、一緒に行った同僚の森永さんと私と、ドイツ人女性1名の合計3名だけ。語学的には、実は一般メンバーになるのが一番ハードだということも経験した。例えば一番最後のセッション(二日目午後)では、私の耳には少し聞き取りづらい話し方をする女性が問題提示者になり、近所に犬を放し飼いにしている人がいて迷惑しているがどうしたらいいか分からないという問題を提示した。私は犬のことはまったく分からないので、その犬は大きいのかとか、途中で出てきたanimal controlという役所だかNPOだかは一体何なのか等いちいち質問しなくてはいけなかった。いい加減に聞き流していると問題再定義のときに非常に困っただろう。あとで聞いたら問題提示者の住んでいるメリーランド州は全米で一番犬が多いところで犬のことをよく知らない人などいないらしいw しかもこのセッションのコーチ役の人はファシリテータとALコーチの違いを理解していなくて、しばしばコンテンツに入り込んできてしまうので、一般メンバーである私が質問によってコーチの役目を補完しなければならなかった。
ALコーチ役は(日本で充分に経験している人なら)皆の表情に気を配って入ればさほど難しくはない。コーチ役に関して今回学んだこととしては
1) 日本語でのALコーチ経験があれば、それが英語に代わっても格段に難しくなるわけではない。極端な話、コンテンツが全部わからなくても、皆の表情を読み、ルール違反に注意していれば、非定例介入も充分できる。
2) LuxmooreさんもFriedmanさんも問題の再定義の一致にはあまりうるさくこだわらないが、Irvingさんは日本式に、二度・三度と再定義の一致を確認するよう指導していた。このように協会の講座を担当するレベルのコーチの間にも多少のやり方の違いはあるようだ。
3) ALコーチの非定例介入の方法の一つとして、黄金の三本組ともいうべき質問セットがある。
a) I noticed xxxx is going on. Did anybody notice that?
b) How do you feel about it? (What is its impact on the group?)
c) What would you like to do about it?
これはグループの関係性の問題を、グループに気づかせることで問題解決と学習の両方を促すのに強力な効果がありさまざまな場面で使えそうだ。
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