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2012年2月の4件の記事

2012年2月24日 (金曜日)

バウンティ号の叛乱

Bounty

映画「バウンティ号の叛乱」は、劇場版だけでも少なくとも三度制作されている。主人公フレッチャー・クリスチャンを演じた俳優名で言うと、

クラーク・ゲーブル版(1935)
マーロン・ブランド版(1962)
メル・ギブソン版(1984)

この三つを見比べてみた。(2011年にテレビ版もあるそうだが、それは見ていない。)

1787年、英国軍艦のバウンティ号のタヒチへの長い航海の帰路、過酷な船長に対して叛乱が起こり、船長が船を追われて小舟を与えられ、船長は小舟で行けるところへ辿り着いてから英国に帰り軍事法廷で勝ち、その間、主人公率いる叛乱隊はバウンティ号に乗ってタヒチに戻る。主人公らのその後は不明である。そこまでは史実らしく、三つのバージョンで共通しているが、その後主人公がどうなったのかについては三者で三様の解釈(想像)がされており、その伏線としてタヒチに至るまでの航海中やタヒチ島で起きる出来事も相当に三者三様の描かれ方だ。
 私の好みで言えば、演技・脚本・カメラ、どれをとっても62年のマイルストン監督、マーロン・ブランド主演版がずば抜けていると思う。唯一他の二作に比べて62年版で首をかしげる点があるとすればタヒチの族長がミスキャストに思えることくらいか。叛乱に至る過程での主人公の描かれ方は、クラーク・ゲーブル版では、航海自体が冒険で、その勢いというか延長線上で叛乱も起こしてしまったように映るし、メル・ギブソンは例によって一時の激情で叛乱に至ったかのような演技だ。しかしマーロン・ブランドは出港のときには叛乱など起こしそうにない享楽的で冷笑的な士官であったのが、徐々に変わっていき、叛乱の前にもたっぷり逡巡があり、叛乱を起こして船長になってからもさらに変貌していき、やがてそれが運命を左右する。その意味ではストーリーはブランド版が一番重いが、重苦しいわけではなくエンタメ要素も充分ある。
 なお、まだ知らない人が多いようだが、DVDと違ってBlu-rayディスクについては日本と米国は同じリージョンAなので、米国のBlu-rayディスクはそのまま日本のBlu-rayプレーヤーで視聴できるので日本でも普通に販売され始めている。このディスクを含め、米国版の多くの映画ディスクには英語字幕もある。

Mutiny on the Bounty (1962) (アマゾン)

08. 音楽・映画・美術 |

2012年2月21日 (火曜日)

日本橋でFDワークショップ

山形での「英語で学会発表にエントリーし当日プレゼンするまで」の練習会(一泊二日)に続いて、東京の日本橋で「FDワークショップ」(いずれも日本教育工学会)終了。FDワークショップはInstructional Design (ID)の初歩を、大学教育にたずさわっている人たちとのワークショップで学ぶという構成。二十代・三十代の人たちが多い中で遅ればせながら勉強させてもらった。IDはBLPの設計や運営のうえで使えるに違いないとずっと気になっていたのだが、これまで体系的に勉強する機会がなく、同僚たちや学生たちの経験や知見だけでBLPを運営し改善してきた。熊本大の鈴木克明さん(教授システム学)主導のユーモラスでパワフルなワークショップを経験して、今後BLPの革新のためにはIDの知見が不可欠だと痛感した。

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2012年2月19日 (日曜日)

山形で合宿研究会

 粉雪の舞う山形での学会(合宿研究会)終了。参加人数20-30人くらいで、特定の研究テーマについての議論やスキル向上を目的について毎年開かれる会で、今回は「海外の学会でプレゼンする」ための練習。数カ月前のエントリーから当日のプレゼンまでをカバーしており、やりかたについての講義を聞いた直後に実際に各自当日のシナリオ(発表原稿)を作りプレゼンし批評しあいコメントをもらう、という極めて実践的な内容だった。学生時代にはそういう訓練を受けていないので今まで我流でやってきたが、今回のようなトレーニングをもっと早く受ける機会があればよかった。EAPを学部学生のときに受けられる経営学部生がうらやましい。  初日が終わったところで懇親会があった。普通、学会や研究会のあとの懇親会というのは、「おつかれさま」という意味もあるのだが、今回は翌朝一番から各自プレゼンしなくてはいけないので、「おつかれさま」どころか、講義で仕入れたノウハウに基づいて自分のスライドや原稿を直すために皆早く宿に戻りたいので、どちらかというと懇親会は翌日のセッションで遠慮無くコメントしあうためのアイスブレーキングの意味合いがあることにきづいた。  ただ、私を含め年長組は(経験上、地元の美味いものがあるに違いないと思っていてw)ついつい二次会に行ってしまい、私は翌朝早く起きてスライド直しした。7月のバージニアと10月のコロラドで学会発表があるのだが、まだ論文は影も形もないため、11月にホノルルで行なったワークショップのイントロ部分を使ってみた。インタラクティブに行おうとするときにはスライド一枚あたりの時間を多めに見込まないといけないことや、ワークショップのイントロ部分だけを使うときにもイントロだけを聞いた人が何を学んで欲しいかをこちら側から明示しなくてはいけないこと等を指摘された。二番目の点はまったく盲点だった。  明日は別の研究会が終日ある。そちらは日本語だが、比較的少人数で相互批評がある点は共通している。秋のロンドンでのリーダーシップ学会が多人数のわりにフレンドリーで建設的なのにも驚いたが、今回の少人数ワークショップ的な研究会も非常に良かった。大規模学会の大きな部屋でのプレゼンとは別の魅力がある。

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2012年2月 8日 (水曜日)

Ceciio Alvarez, Controversy with Civility, in Susan Komivez et. al.(eds.), op.cit.(読書ノート)

個人でなくグループで仕事をすることの主な長所は、他人の考えを活用できることである、という認識。

"Be nice."や"No fighting."という行動基準に従っているとcontroversyを回避してしまいがち。

Civilityは個人の特性というよりは、態度・行動・価値観である。

意見の相違があるときに(1)論争を回避して無理に賛成したり沈黙したり、(2)逆にcivility無しに論争し人と意見を分離しなかったりするのは有害。

価値観の違いによる論争は歓迎してよいが、論争であれば何でも歓迎するのも間違いで、lack of decision making process, unresolved prior disagreementsなどが原因の論争は、別途処理して回避したほうがよい。

大学でIntergroup Dialogueと題してlearning across differenceをめざすところが増えている。標準的な手順としては 1) 意図的なteam building activitiesののちdialogueの概念を学ぶ 2) 各メンバーのbackground, experience and valueを開示しあい、互いにそれをrespectすることを学んで、本格的dialogueに備える。 3) 敢えて論争的なトピックについてdialogueを試みる。相手の考えを理解することが第一で、賛成したり反対したりは措く。 4) 相互理解に基づいて、グループごとにaction planを作る。

[ディベートをどこに位置づけるかも問題。civilityを前提にしないとできないものなのか。あるいはディベートを重ねることでcivilityを学ぶ効果も期待できるのか。もし後者ならば、上の四段階法との代替関係や補完関係はどうなるか。]

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