ホノルルで質問会議(アクションラーニング)
ホノルルは雨期に入って、ほぼ毎日のように少しずつ雨が降る。夜は気温が下がるので、短パン半袖では寒い日も多い。しかし雨は長くは降らないし弱いのでカサをさす人はあまり居ない。雨のあとに晴れ上がることも多い。英国の湖水地方出身のBarkerさん(APLPの責任者)は故郷の気候との類似性を感じるのだろうか、自分にとっては11-12月がベストシーズンだと言っている(短期間にビーチや山の景色を楽しみたいという人には、はやり乾季4-9月のほうがいいのかもしれない)。
さて、9月に、映画「12人の怒れる男」における質問の使われ方という形で予告篇授業をおこなっておいたアクションラーニング(質問会議)を、今週日曜と月曜に、学生を対象に実施した。目的は、リーダーシップのための質問力の養成。学生たちは、前にも書いたように平均年齢31歳、22カ国から来ている42人(の中から希望した者)。全員働いた経験があり、学歴としては修士・MBAが普通でPhDやMD(医学博士)もいる。共通言語は英語で、ネイティブは半数強くらい。
今回の実施設計としては、全日程二日間で、初日に4-6人くらいでまる一日かけてコアメンバーを養成する(本当はこのコアメンバー養成だけで2日間くらいはあったほうがいいが今回それは不可能)。そして翌日はコアメンバー1人につき4人の新メンバーがついてセッションを4つ行う。人数は前日まで分からなくて辛かったが、初日は結局5人。なので、一応は20人まで収容可能な体制ができて、事前の調査で14人手を挙げていたのが結局10人だったので、3グループで済んだ。シニアコーチが全体で共有するときのことを考えると、このくらいの人数(テーブルごとのコーチを含めて15人)までのほうがやりやすい。タイミングが最悪(朝一番に重大なレポートの締切がある当日とその前日)であったのにもかかわらず、適切な人数だったのは良かった(Barkerさんの人数の読みも正確だった)。
初日は日曜午後。参加してくれたのは、米国、クックアイランズ、インド、中国、マレイシアの学生。最初の三人はネイティブだ。最初にスライドで30分ほど導入し、あとは50分のセッションを1つ、日向野がコーチとして行い、そのあとは希望者がコーチになって、結局13時から19時まで6時間、小休止をはさみながらおこなった。翌日はこの5人が核になり、3つのテーブルに5人が分かれて入るという、結果としては結構恵まれた設定になった(グループの中に経験者が二人いると質問の質が断然高くなるだろう)。二日目のほうはノンネイティブの比率がぐっと高くなった。
コアメンバーの一人で普段はエモーショナルでクラス内で多少浮いているところのある米国の女子学生が、コーチ役になるとメンバーの表情を読むのが抜群に上手く、非定例介入を毅然としておこなうという新しい面を見せてくれたのが嬉しかった(私がヒラのメンバーとして加わったセッションでは、私の本質的な質問について、「Miki、あの質問、もう少し後だったらもっと良かったかも」と後でコメントしてくれた。同じくコアメンバーの中国の学生は夏ごろからこの講座に関心を示していて人一倍熱心だったのだが、クリアに短く表現するのが苦手なのか初日にはセッションのメンバーとしては苦戦していた(しかし後日、昔の航法で太平洋をカヌーで渡るので有名なNainoa Thompsonのスピーチセッションでは早速エドガー・シャインの質問法を使って安全を確認したうえで質問していた。)
二日目だけ参加した学生も、ランダムにテーブルに座ったので、同じクラスで8月から同じ寮にいるとはいえ余り親しくない学生もいる中で結構個人的な問題を提示していて、アクションラーニングの効能(とくに問題解決面)を実感していたようだ。チームビルディングに役立つという面も、多くの人が驚いていて、コアメンバーの一人のクックアイランズとマレイシアの学生は「アクションラーニング自体面白いし、今年の学生の何人かは仕事でハワイに残るので、今コーチ研修をうけておいて、来年の学生のセッションのコーチになれば上下を結びつきもできますよね」(これはまさにBLPでSAがおこなっていることに近い!)と、いま候補探しの活動中。近々私も参加して追加セッションをおこなう予定だ。
終わってから翌日以降に個人的にフィードバックをくれた学生も何人かいた。その中で、二日目から参加した米国人は、「この方式のセッションの良さを明確な形で示すには、第一セッションはアクションラーニング方式でなく普通の会議にしてみたらどうですか?」と意見をくれた。これは面白い提案。実施にはいろいろ工夫が要るけれども、うまく実行できればデモとしては凄いだろう。コアメンバーの一人のインド人(医師)は、「Miki、三つ直すところがありますよ」と言う。(1)How to better ask questionsという題名だと、一日で質問が上手くなると思い込んで参加してがっかりされる危険があるのでLearning outcomesをもう少し正確に表現したら? (2)前のと関係するが、ツールのパッケージではなくてプロセスを経験することが主眼であることをもっと強調してはどうか? (3)シャインの四つの質問のどれを今尋ねるべき時間帯かをテンプレートに追記してしまってはどうか?
(3)はすぐ実行できる。(1)(2)は題名をHow to practice asking (better) questionsに変えることから始めようか。
こんなに建設的なフィードバックをもらえて、しかも授業時間外にも追加セッションやって次世代に繋ぎましょうなどという提案まで出てきたので、初回としては大成功だったと言っていいと思う。授業時間枠をくれたうえにメンバーとして自らも参加してくれたBarkerさん、二日間合計11時間参加したコアメンバー、締切明け寝不足状態なのに長時間参加した他メンバーに感謝。
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