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2011年12月の5件の記事

2011年12月27日 (火曜日)

Nurredina Workman, Change(読書ノート)

選挙で選ばれる学生代表がchangeをもたらす過程を想定。任期が終わって代表が入れ替わるたびに変革が途切れてしまうのを防ぐのに、引き継ぎ事項を書いたバインダーを用意するというのはsingle-order change。そうではなく、選挙で選ばれた少数の者だけで運営するという体制自体を変えてしまって広い範囲の人々とノウハウを共有しておくようにするというのがsecond-order change(Boyce 2003の応用)。

John Kotterの8段階の適用。2004年コロンビアでコカコーラ工場で、労働組合を組織しようとした従業員の謎の死亡事件で、米国の都会の大学の多くでコカコーラ不買運動。[若者にとっては、企業に就職した場合、Kotter型を経験できるのは相当の時間が経ってから。そうであればむしろ学生時代に一度は経験しておいたほうがいいかもしれない] ただし、large social systemならではの固有の問題はある(境界がはっきりしない、動員がかけづらい等)。

ネットワーク型の組織・社会では、変化はコントロールしづらく、予想外に早く・大きくなることもある。それに対応して、変化を起こそうとする人change agentも、自分がしかけたつもりの変化でもその効果を予測しづらいので、"Learn as you go"という姿勢をもっている必要がある。変化の浸透のしかたにもいくつものパターンがある(濡れた砂型、電線の上の鳥型、イースト菌型、ウィルス型など)。

変化に反対する人々の言い分のパターン
1) その変化の必要性は既に満たされている
2) その変化によって必要性の充足がむしろ難しくなる
3) その変化のリスクは利益を上回る
4) その変化は不要である(なくても困らない)
5) その変化の過程が不適切に行われている
6) その変化は失敗すると予測される
7) その変化の意義を信ずることは、他の価値観と矛盾する
8) その変化を担当している者たちが信用ならない

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Jose-Luis Riera, Applying the Social Change Model(読書ノート)

Jose-Luis Riera, Applying the Social Change Model, in Susan Komivez et.al.(eds.), Leadership for a Better World, 2009.(読書ノート)

Case Study #1: An Inconvenient Truth
州立大学のある市内の貧しい地区での環境教育のプロジェクト
メンバー間の情熱の違い、"Rocking the boat"など。

Case Study #2: Starving for Attention
名門私立大学生が、大学の一部職員の最低賃金についてキャンペーン
[大学でSCMを使用するなら学生のこうした行動も容認する覚悟が必要]

Case Study #3: Clear Haziness
地元に愛されている州立大で大学新聞の写真部門の編集者になり、写真家たちが不適切な写真を自分のFacebookに載せる慣行があるのに気づき、それを直そうとしてベテラン写真家たちと戦う。

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2011年12月21日 (水曜日)

Kristen Cilente, An Overview of the Social Change Model of Leadership Development(読書ノート)

Kristen Cilente, An Overview of the Social Change Model of Leadership Development,in Susan Komivez et.al.(eds.), Leadership for a Better World, 2009.

Bass(1990)によればリーダーシップ論は古代エジプト時代からあるが、産業革命以降の西欧では、リーダーのポジションについた人が他人をどう働かせるかという問題に焦点が絞られていた。その傾向が大きく転換したのは、1970年代のGreenleafとBurns、それに続く80-90年代のリサーチ、さらに90年代のKouzes&Posnerらの著作以降である。しかしcollaborative leadershipというのは概念化が難しい。そこでリーダーシップはリーダーの行うことである、という定義からリーダーシップは過程であるという定義に移行した。このアプローチを採る場合、リーダーの地位にある者が他の者にどう働きかけるかという考えは捨てて、(組織内に上下関係がある場合でも)全員が[リーダーシップのある]行動をとるべしという考えに変わらねばならない(2000年前後の各種研究)。

こうした研究面での変化を受けて、大学教育においても変化がおきた。1993年米国教育省は大学でのリーダーシップ教育に補助金を出し始め(UCLAなど)、96年にはSocial Change Model of Leadership(SCM)が大学教育界に広く知られるようになった。

SCMは8つのvalueをめざす(図省略)。まずリーダーシップがそもそもchangeのためにある。他の7つのCは3つのレベルで追求される。個人レベルでconsciousness of self, congruence, commitment,組織(グループ)レベルでcollaboration, common purpose, controversy with civility, 社会全体との関係でcitizenship。7つそれぞれについて、knowing (knowledge acquisition), being (attitudes), doing (skills)が明示されている。[常に暗唱するには7つは多そうに見えるが(PMは2つだしKouzesらは5つだ)、3レベル別になっているので実はそう大変ではない。またknowing,being,doingが明示されているのも良い。また、controversy with civilityのところを多少拡張すれば多様性対応・グローバル対応も可能に思える。groupを企業組織に読み替えることも容易である。]

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2011年12月20日 (火曜日)

Wendy Wagner, What is Social Change?(読書ノート)

Wendy Wagner (2009), What is Social Change? , in Susan Komivez et. al.(eds), Leadership for a Better World.

リーダーシップは「変化」に関するものである。変化をもたらす者のなかに、自分はリーダーであるという意識の者とそうでない者もいる。

この本に書いてあることはビジネスにもあてはまることが多いが、主な想定読者は社会に変化をもたらそうとする学生である。

social changeがcharityと違うのは、(前者が)社会問題のroot causeが何であって、それはどう解決できるかを調べる点である。

social changeはcollaborativeで、カウボーイアプローチ(問題を抱える町に外からカウボーイがやてきて問題を片付けてしまい、町民から成るadminを作ったら去る)ではない。自分の味方を他人に押しつけないことが鍵になる。

social changeは単純ではなく、例えば、「飢えている人に魚をあげるよりも魚の釣り方を教えよう」と言っても「魚の釣り方を学ぶまでの間をしのぐ魚をあげなくてはいけない」。

97-2001の調査のころと違って、学生のあいだのシニシズムは弱まってきて、collective actionの可能性を肯定的に評価している。

social changeに参加する人の動機はさまざま。
a) 自分や家族が経験した問題を解決したいと思ったこと。
b) はみ出し者(marginal)であることが強みを形成して、social change agentになる。
c) making a differenceで満足感を得る。

p.26 social changeに巻き込まれる前からリーダーである人は稀である。social changeのさなかにリーダーになっていくのであり、その意味でsocial change agentはやりながら学ぶことを喜んで実行しなくてはならない。また、初期には影響力が小さすぎて無力感をもつかもしれないが、影響力もchangeを行いながら徐々に拡大するものである。

p.29 陥りやすい間違い
1) 共同体に何かが欠如していて、それを補うのが使命であたら思い込む(deficit-based perspective of the community)こと。他に比べて何かが欠けているからそれを補おうという発想を逆転して、どんな資産を現状で持っているかを考えるほうがいいことが多い。
2) Seeking a magic bullet=quick fixを求めてしまう
3) Ignoring cultural differences
4) Avoiding the potential pitfalls

p.32 Socially resposible leaderhship
メンバーへの責任と社会への責任の両方

p.38 最良のリーダーシップ開発方法は、経験と振り返り。Kolb (1981)によるjornal writing法がよい。
1) concrete experience
2) reflective observation
3) abstract conceptualization
4) active experimentation

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2011年12月 3日 (土曜日)

ホノルルで質問会議(アクションラーニング)

 ホノルルは雨期に入って、ほぼ毎日のように少しずつ雨が降る。夜は気温が下がるので、短パン半袖では寒い日も多い。しかし雨は長くは降らないし弱いのでカサをさす人はあまり居ない。雨のあとに晴れ上がることも多い。英国の湖水地方出身のBarkerさん(APLPの責任者)は故郷の気候との類似性を感じるのだろうか、自分にとっては11-12月がベストシーズンだと言っている(短期間にビーチや山の景色を楽しみたいという人には、はやり乾季4-9月のほうがいいのかもしれない)。
 さて、9月に、映画「12人の怒れる男」における質問の使われ方という形で予告篇授業をおこなっておいたアクションラーニング(質問会議)を、今週日曜と月曜に、学生を対象に実施した。目的は、リーダーシップのための質問力の養成。学生たちは、前にも書いたように平均年齢31歳、22カ国から来ている42人(の中から希望した者)。全員働いた経験があり、学歴としては修士・MBAが普通でPhDやMD(医学博士)もいる。共通言語は英語で、ネイティブは半数強くらい。
 今回の実施設計としては、全日程二日間で、初日に4-6人くらいでまる一日かけてコアメンバーを養成する(本当はこのコアメンバー養成だけで2日間くらいはあったほうがいいが今回それは不可能)。そして翌日はコアメンバー1人につき4人の新メンバーがついてセッションを4つ行う。人数は前日まで分からなくて辛かったが、初日は結局5人。なので、一応は20人まで収容可能な体制ができて、事前の調査で14人手を挙げていたのが結局10人だったので、3グループで済んだ。シニアコーチが全体で共有するときのことを考えると、このくらいの人数(テーブルごとのコーチを含めて15人)までのほうがやりやすい。タイミングが最悪(朝一番に重大なレポートの締切がある当日とその前日)であったのにもかかわらず、適切な人数だったのは良かった(Barkerさんの人数の読みも正確だった)。
 初日は日曜午後。参加してくれたのは、米国、クックアイランズ、インド、中国、マレイシアの学生。最初の三人はネイティブだ。最初にスライドで30分ほど導入し、あとは50分のセッションを1つ、日向野がコーチとして行い、そのあとは希望者がコーチになって、結局13時から19時まで6時間、小休止をはさみながらおこなった。翌日はこの5人が核になり、3つのテーブルに5人が分かれて入るという、結果としては結構恵まれた設定になった(グループの中に経験者が二人いると質問の質が断然高くなるだろう)。二日目のほうはノンネイティブの比率がぐっと高くなった。
 コアメンバーの一人で普段はエモーショナルでクラス内で多少浮いているところのある米国の女子学生が、コーチ役になるとメンバーの表情を読むのが抜群に上手く、非定例介入を毅然としておこなうという新しい面を見せてくれたのが嬉しかった(私がヒラのメンバーとして加わったセッションでは、私の本質的な質問について、「Miki、あの質問、もう少し後だったらもっと良かったかも」と後でコメントしてくれた。同じくコアメンバーの中国の学生は夏ごろからこの講座に関心を示していて人一倍熱心だったのだが、クリアに短く表現するのが苦手なのか初日にはセッションのメンバーとしては苦戦していた(しかし後日、昔の航法で太平洋をカヌーで渡るので有名なNainoa Thompsonのスピーチセッションでは早速エドガー・シャインの質問法を使って安全を確認したうえで質問していた。)
 二日目だけ参加した学生も、ランダムにテーブルに座ったので、同じクラスで8月から同じ寮にいるとはいえ余り親しくない学生もいる中で結構個人的な問題を提示していて、アクションラーニングの効能(とくに問題解決面)を実感していたようだ。チームビルディングに役立つという面も、多くの人が驚いていて、コアメンバーの一人のクックアイランズとマレイシアの学生は「アクションラーニング自体面白いし、今年の学生の何人かは仕事でハワイに残るので、今コーチ研修をうけておいて、来年の学生のセッションのコーチになれば上下を結びつきもできますよね」(これはまさにBLPでSAがおこなっていることに近い!)と、いま候補探しの活動中。近々私も参加して追加セッションをおこなう予定だ。
 終わってから翌日以降に個人的にフィードバックをくれた学生も何人かいた。その中で、二日目から参加した米国人は、「この方式のセッションの良さを明確な形で示すには、第一セッションはアクションラーニング方式でなく普通の会議にしてみたらどうですか?」と意見をくれた。これは面白い提案。実施にはいろいろ工夫が要るけれども、うまく実行できればデモとしては凄いだろう。コアメンバーの一人のインド人(医師)は、「Miki、三つ直すところがありますよ」と言う。(1)How to better ask questionsという題名だと、一日で質問が上手くなると思い込んで参加してがっかりされる危険があるのでLearning outcomesをもう少し正確に表現したら? (2)前のと関係するが、ツールのパッケージではなくてプロセスを経験することが主眼であることをもっと強調してはどうか? (3)シャインの四つの質問のどれを今尋ねるべき時間帯かをテンプレートに追記してしまってはどうか?
 (3)はすぐ実行できる。(1)(2)は題名をHow to practice asking (better) questionsに変えることから始めようか。
 こんなに建設的なフィードバックをもらえて、しかも授業時間外にも追加セッションやって次世代に繋ぎましょうなどという提案まで出てきたので、初回としては大成功だったと言っていいと思う。授業時間枠をくれたうえにメンバーとして自らも参加してくれたBarkerさん、二日間合計11時間参加したコアメンバー、締切明け寝不足状態なのに長時間参加した他メンバーに感謝。

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