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2011年8月28日 (日曜日)

私語と対話のあいだ

 授業見学二日目。午前と午後別の教員の(しかし受講生は同じ40人)授業を見せてもらった。スタイルがかなり違い、学生たちの反応も違ってなかなか面白かった。共通しているのはワークショップスタイルを多用しているという点で、数人のグループで話してからクラス全体で共有という時間帯がどこかに必ずある。それを経てからは個人単位でもよく手が上がる。この点は日本でも(学校でも企業でも)同じだろうと思う。そういえば一昨年だったか、経営学部の「金融組織論」だったかの講義を私が担当したときに、「授業中に、いま授業で教師が話していることについて隣の人とひそひそ話すのは私語かどうか」とアンケートしてみたら、「私語とは思わない」という人が過半数で、驚いたことがある。驚きはしたものの、よく考えてみれば経営学部生は入学直後から教室ではクラスメートとディスカッションするようにと習慣づけられているのだから不思議なアンケート結果ではない。この金融組織論を翌年度は他大学の教員にお願いしたのだが、その人に尋ねてみると、「私語はあるが、この(学部)の授業の私語には特徴がある。他大学での非常勤では大教室の後ろのほうがうるさくてそのため教室全体にうわ〜んと響いているのだが、ここは一番前にいる熱心なはずの学生がよく隣と話している。むしろ前のほうが私語が多い気がする」。やっぱりこれは経営学部のBLPやBBLなどの影響で、(やってはいけない)私語だと認識していないからなんでしょう。
 そこで、比較的大人数の講義を担当する教師としては(少なくとも)三つの選択肢があることになりましょう。第一は昔ながらの方法で、前のほうに座っている熱心な学生だけを対象に粛々と話し続ける。でもこれ、前のほうもうるさかったら相当早く限界に達しますよね。第二はいろいろな工夫によって静粛を保っていただく。座席指定するという方法もあるだろうし、あるいは、いつかどこかのFD授業で拝見したのだが、私語している学生一人一人と対決し黙らせていくという怖い方法もある。限られた時間の中である一定の分量の知識はどうしても伝えねばならないという授業のときはこの方法をとらねばならないときもある。あるいはコンテンツが面白いという一点のみで集中度を保つ。これは理想的ですが、しかしある程度以上の読解力のある学生を相手にしているならば、「なら本を読めばいいじゃん」という反論には真剣に答えなくてはいけなくなる。つまり学生が自分一人で教科書なり参考書なりを読むよりも能率がいいか、あるいは深く学べるような講義内容にしなくてはいけない(これはこれで実は相当にハードルが高い)。
 第三の道としては(現行二者を論じたあとに新たな第三の道、と書くのはお決まり過ぎて気が引けるのだけど)、お隣と話している「私語」をグループディスカッション扱いに昇格させて、講義→私語(GD)→共有→講義→私語(GD)→共有、というふうに大規模ワークショップにする方法。これは企業研修などではとうに行われていることだし、大学でも(もしかしたら経営学部でも?)おそらくどこかではなさっているかたが居ると思うけれども、経営学部でBLP/BBLを経験している学生ならそうしたワークショップ型の大教室授業にも他大学よりもっとうまく対応できるのじゃないか。200人とかでは辛いけれども80人くらいなら何とかなるのでは。サバティカルが明けて講義型授業を担当することになったら(忘れてなければ)試してみようかと思います。

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