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2011年8月26日 (金曜日)

1階のバルコニー

 初日に見学して印象的だったのはこんなセッションだった。クラス40人を二つのグループに分割して、20人は教室の中心部に内側を向いて着席する。あとの20人は周りにオブザーバとして座る。内側の20人は40分間で「このリストにある(架空の)遭難した9人のうち1人だけ救助できるとしたら誰を救うべきかという問題を解く。9人の中には副大統領が入っていたり(おまけに大統領本人は病気であるという想定)、心臓移植の名医あり、まもなく子供が生まれる女性あり・・てんでに議論しているうちにタイムキーパーや司会が現れてくるのは予想できる通り。25分くらい議論して決着がつかず手詰まり感が漂ってきたときに、局面を変えたのは、小さな声でぼそぼそと話すアジア系の一人の青年だった。ここまで5つくらいの基準で誰が優先されるべきかと議論してきたが、その5つはいずれも価値であって優越をつけられないのである、と。つまりどうやっても唯一の正解にはたどり着けないことがここで全員に共有されたのである。日本人同士のグループワークだとここで諦めてしまうかもしれないが、そのあとの追い込みが面白かった。正解がないのだが、だからといって誰も救助しないのは無駄であるから名簿の1番上にある人にしようということで合意してしまったのである(多数決は最初から禁じられている)。これは抽選にしようと合意するのに近いが、抽選よりもさらに(日本人なら)抵抗が大きそうな決定であろう。何しろ名簿の1番上だからというのであるから。
 教員のほうで用意した仕掛けとして面白かったのはこのセッション直後のリフレクションで、外側にいる人たちはバルコニーにいて、内側のダンスフロアで踊る人たちを観察しているのだ、ということを最初から言い渡してあって、セッション後に気付いたことを順に言ってもらうのである(ハイフェッツ教授のバルコニーとダンスフロアについてはここここにも書いた)。リーダーシップ科目の一番最初のほうに、こうしたフィードバックを与え、受ける機会を持って、その後の授業でいつもフィードバックの有効性を意識してもらうことは非常に有益と思われる。一緒に授業見学をしていた卒業生のK子さんによれば、APLPの場合は、多国籍なので、あの短い40分のあいだにいろいろな議論のしかたをする人がいるのだという多様性を全員が体感できるというメリットもあるようだ。

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