立教新座高校での驚きの三週間
4月末から5月連休明けにかけて、立教新座高校で三年生対象に出前授業を担当した。三週間連続だったので、敢えて経営学部一年生前期のBL0と同じ課題で課題解決プロジェクトの授業をやってみた。その結果は大学生と比べても唖然とするほどの出来の良さだった。手伝ってくれたSA(今期BL0のSA)たち三人は、自分たちの一年前や、いま受け持っている一年生と思わず比較して驚嘆していたし、厚意で遠くまで朝早くから審査に来てくださったローソンの部長さんも驚いていた。プレゼンに論理的な飛躍が全く無い。要所要所できちんとデータを取り、念入りなアンケートも行っている。前週の中間発表のときに高校生同士でフィードバックしあっていたが、そのフィードバックや質問は遠慮なく的確で質が高く、しかも一週間でそのフィードバックや質問を完全に活かして改善してきている。これにはたまげた。
翻って、ほぼ同じ課題(自分たちと同年代の若者の来店頻度を高めるにはどうしたらいいか)に取り組み始めた大学一年生はどうかと考えてみると、まだ高校生たちの出来を上回る出来のものは無さそうである点で、一緒に行ったSA三人(つまり3クラス分だ)の意見は一致していた。これはどうしたことか。高校生たちについてグループ分けはクラスと部活がばらけるように工夫したのでクラスメートは同じ班内に居ない。ただ、高校の過去三年ないし中学からの六年間(人によっては小学校からの12年間)にかかわりのある同士が多いようで、その意味では気心の知れた集団なのだろう。しかしそれにしても大学一年生たちはウェルカムキャンプを経てさらに一ヶ月経っていて、他学部の学生たちが驚くほどの仲の良さなのだ。しかも立教新座高校では最近では経営学部の人気が極めて高く最も優秀な高校生が経営学部に来てくれているはずで、それはいまの一年生でも二年生のなかにも大勢居るのである。経営学部を卒業したばかりの某君(立教新座高校出身)曰く、男子校で遠慮がない間柄で短期間でガガッと詰めていけるのに対して、大学に入りたては皆知り合ったばかりで遠慮があり、しかも半数は異性だから気取りや照れもあるんですよと。しかし男子高校生たちは付属高校の男子の視点でのみ考えていたかというと、そうでもなく、自分たち内部進学予定者とは違う一般の受験生にフォーカスした班もあれば(「世の中の大半はそうですから」と言っていた)、自分たち自身ではなく弁当を作る親たちに徹底アンケートをして弁当を作る側の事情を探ったりもしていた。そうしてみると、経営学部一年生たちは、せっかくのダイバーシティを活かせるほどの関係性をまだ築けていないということになろうか。
その関係性構築というのが単に長い時間過ごして仲良くなる、という方法に限定されてしまうと高校生から進歩がないことになってしまう。それほど親しくなくても、成果のためなら遠慮なく意見を言い合えるような関係になるスキルやそうした成功体験を得る必要があるということか。外部評価委員会でassertivenessが大切ですよ、と言われていたのに応えて、BLPではここ三年間ディベートを取り入れているのだが、まだ足りないのかもしれない。特に、ディベートや論理思考の経験によって次学期のプロジェクトの成果が向上するというリンクがまだ弱いために、assertするコストに目が行って遠慮してしまうのかもしれない。質問会議はいわば質の高い質問をassertすることによって全員の成果が向上することを分かりやすく経験できる装置でもあるので、SAの研修ばかりでなくもっとひろく受講生に経験してもらったほうがいいのかもしれない・・等々いろいろ考えさせられた有益な三週間であった。
[追記]学部のウェブサイトにこの高校生たちのプレゼンテーションの動画を収録しました。
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