ALコーチの役割〜マーコード教授来日(その2)
講義セッションの合間に、シニアALコーチを含む認定ALコーチたち7名がメンバー(うち1人がオブザーバ)になり、マーコード教授がコーチになるという非常に贅沢な布陣で、質問会議を2セッション行うという貴重な経験をする機会に恵まれた。そこで気付いたのは(質問会議そのものに関係ある論点だけ通し番号をつけておくと)
(3)問題再定義に全然時間をかけない。つまり、真の問題が何であるかについての合意をとるために、問題提示者に二度三度と問題を再定義させることをせず、初回の問題定義に一致をみなかったら、何事もなかったかのようにアクションプランに移行してしまう。「あと5分くらい会議を続けますが、そのあとアクションプランを提示してもらいます」とだけ予告し、一致を見なかった点をアクションプランの中にどんなふうに取り入れるか(あるいは取り入れないか)は問題提示者の判断に任されていた。私にはこのほうが自然に思えた。その意味では、参加者の気分(と敢えて言おう)に配慮しすぎて何度も問題再定義を強要することはALコーチのやってはいけないことと教わってきたが、それにしてもマーコードさん自身の仕切りではYes/No/Closeのどれであるか意見分布を確認するという程度のものだった。意見の相違がどの程度残ったかを確認することよりも、学習のための振り返りにたっぷり時間をとっていた。
(4)セッションが始まる前に、マーコード教授は、メンバーの一人一人に今日はどんな発言を心がけたいかをリーダーシップスキルに関連させる形で宣言させていた。例えば「今日は視点を変える質問を心がけたい」とか「メンバー全員の参加を促すような質問をめざしたい」等。これは、質問会議の初心者には無理だが、何度か経験のある人には、とても有効な手法だと思う。
(5)マーコード教授はALコーチ役でありながら日本語を全く解さないので、通訳がついていた。質問会議の冒頭で問題提示部分だけは訳してもらっていたが、あとのやりとりは一切訳させず、メンバーの様子を見ているだけだった。それでも充分にALコーチ役ができてしまうのは、a)メンバーが規範とルールを熟知している人たちだった、b)マーコード教授がその道の権威(というか本家本元)であることを皆意識していた、という事情もあるだろうが、他に、c)メンバーの発言内容を理解していなくても、表情や話しぶりを見ているくらいでもコーチ役は務まるのだ、という重要な要因があるのだろう(これは質問会議におけるコーチでなくコーチ一般に当てはまる面があるかもしれない)。また、マーコード教授の場合を裏返して言えば、あまり英語が得意でない日本人が、英語で進行している質問会議のALコーチ役を務めることは、(質問会議の意義がメンバーにある程度共有されている場合は)そう難しくないと言えるかもしれない。
マーコード教授は、まる一日続いてお疲れの夕方の懇親会では(空きっ腹のはずなのに)缶チューハイを一口飲んで「何これ?アルコールの味がしないな」「あ、二口目は少し効いた」初めての飲み物に迷わず手を伸ばすところなど、好奇心もとても旺盛な方とお見受けした。
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