宿題提出とリーダーシップ
ピッツバーグに本社のあるDDI、その日本でのパートナーであるMSC、それにわがBLPの3者で「インタビューによるリーダーシップ計測法」というのを開発した。PM理論であるとP(成果指向)とM(人間関係維持)の2軸だが、この計測方法ではPが「積極性」と「(狭義の)成果指向」の二つに分かれる。積極性があるのだがツメが甘いために成果が出ないという(よくある)パターンと、積極的ではないが言われたことは間に合わせるという(これまたよくある)パターンを識別することができる。
Pの構成要素を2つに分けたことの利便性は意外に高い。学生の場合で言うと、宿題はきちんとやってくるがそれ以上のことはしないなら「狭義の成果指向」は高いが積極性は低いことになる。職場で言うと上司の指示には忠実にきちんとこなしてくるが、提案は出してこないタイプである。
逆に、言われたこと以上のことを提案したりするのだが、宿題はとなると締め切りを守らなかったりすっかり忘れていたりするタイプは、積極的で提案営業などはできそうなのにツメが甘くて顧客に頼まれていた書類を忘れたり社内手続きで遅れて顧客に迷惑をかけたりする。宴会や旅行の幹事を任せると、人は大勢集めてくるが、会場や料理や交通機関の予約や確認でエラーがあってイベント当日急に評価を下げるタイプでもある。学生のうちなら憎めないヤツ、くらいで済むが仕事がからむと深刻なことになりかねない。
これらとは別にM(人間関係の維持、他人への配慮)要因がある。この得点も高いにこしたことはない。空気を読むスキルと密接な関係がある。Mが高くて積極性が低ければ、発言せずに空気ばかり読んでいるタイプである。Mも積極性も高ければ、周囲をよく気遣い発言もする「まとめ役」である。
自分がどのタイプでどこを強化しなくてはいけないか(あるいは当面パートナーにどこを補ってもらうか)を意識していることはとても有益だと思う。私はというと、M要因が鍵を握っていてMに失敗すると(失敗したと自分で思うと)積極性ががた落ちになるが、(狭義の)成果指向まではめったに侵食されない。もっとも記憶力抜群で「歩くCD-ROM」と言われていた頃と違って、最近はICTの力を借りていても締め切りを失念することが多く狭義の成果指向も怪しくなってきて周囲に迷惑をかけているかもしれない。(なおCD-ROMは20年くらい前なら大容量で安定した記憶装置だったが、今では遅いメディアの代表になってしまった。昔のことなら憶えているが先月のことは忘れているという意味では、ディスクの読み出しは健在なのだが書き込みが弱っているのだろう。)
いま社会人一年生たちは会社で研修を受けている最中のところが多いと思う。人事部からすれば同期の間で誰がどのようにリーダーシップをとるかが定番の観察機会で、上記三要素が如実に現れる機会でもある。
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