消費者はもう卒業
経営学部の一期生がいよいよ大学を卒業して社会に巣立つ。4年前の学部発足以来、従来の大学にはないいろいろな仕掛けと工夫を凝らし、新しい学部のカルチャーを作るのだという決意で学生とともに学んできただけに、彼らが社会でどういう評価を得るか、ほとんどわがことのように思える。一年前に決着していた彼らの就職状況は従来の立教大学の他学部とはかなり違う(超大手企業とベンチャー企業がともに多い)ものであったし、最近の立教生へのアンケート調査でも「困ったときに誰に相談しますか」という問いへの回答で、経営学部生は他学部比で圧倒的に「教員」という答が多かったことなど、手応えはあった。
そういう一期生に向かって繰り返し言い、言いながら自戒としてきたことが「消費者のスタンスは卒業しよう」だった。問題に出会ったら、「問題が解決していない。責任者出てこい」ではなくて、「どうしたら解決できるだろうか。自分はその解決過程にどのように貢献できるだろうか」と考える習慣をつけようということである。小学生の頃から、親からもらった五百円か千円を手にコンビニに行くとちゃんと食事が買えて、大人の店員が「ありがとうございました」と言われるのを繰り返し経験してくれば「金をもっている俺様たちは文句を言う権利がある」という思考がデフォルトになって、骨の髄から消費者スタンスになってしまって無理はない。そのまま社会人になれば使い物にならないこと必定である。資格をもっていたって英語がいくらできたって「会社は俺様に何をくれるのだろうか」といつも査定していては実は自分にも進化はないので、短期的に得しようとして長期的に損するというおまけもつくのである。「こうしたら解決できるのじゃないか」と言い出すときに周囲から生意気とか余計なことをとか思われるリスクをとる。自分で解決策を思いつかないなら周囲から解決策をつのって一緒にリスクをとる。経営学部でうるさく言ってきたリーダーシップは、信長だのナポレオンだののリーダーシップではなく、そういうことである。
というようなことを、もしご指名があれば卒業する諸君の前で言うつもりだったが、今年は珍しく機会がなかったので、ここに書くことにした次第。3月30日にゼミ生やBLPのアシスタントたちと卒業前最終の飲み会があるのだが、これを読んだ諸君からどんな反論があるだろう。
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