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2010年3月の4件の記事

2010年3月29日 (月曜日)

消費者はもう卒業

経営学部の一期生がいよいよ大学を卒業して社会に巣立つ。4年前の学部発足以来、従来の大学にはないいろいろな仕掛けと工夫を凝らし、新しい学部のカルチャーを作るのだという決意で学生とともに学んできただけに、彼らが社会でどういう評価を得るか、ほとんどわがことのように思える。一年前に決着していた彼らの就職状況は従来の立教大学の他学部とはかなり違う(超大手企業とベンチャー企業がともに多い)ものであったし、最近の立教生へのアンケート調査でも「困ったときに誰に相談しますか」という問いへの回答で、経営学部生は他学部比で圧倒的に「教員」という答が多かったことなど、手応えはあった。
 そういう一期生に向かって繰り返し言い、言いながら自戒としてきたことが「消費者のスタンスは卒業しよう」だった。問題に出会ったら、「問題が解決していない。責任者出てこい」ではなくて、「どうしたら解決できるだろうか。自分はその解決過程にどのように貢献できるだろうか」と考える習慣をつけようということである。小学生の頃から、親からもらった五百円か千円を手にコンビニに行くとちゃんと食事が買えて、大人の店員が「ありがとうございました」と言われるのを繰り返し経験してくれば「金をもっている俺様たちは文句を言う権利がある」という思考がデフォルトになって、骨の髄から消費者スタンスになってしまって無理はない。そのまま社会人になれば使い物にならないこと必定である。資格をもっていたって英語がいくらできたって「会社は俺様に何をくれるのだろうか」といつも査定していては実は自分にも進化はないので、短期的に得しようとして長期的に損するというおまけもつくのである。「こうしたら解決できるのじゃないか」と言い出すときに周囲から生意気とか余計なことをとか思われるリスクをとる。自分で解決策を思いつかないなら周囲から解決策をつのって一緒にリスクをとる。経営学部でうるさく言ってきたリーダーシップは、信長だのナポレオンだののリーダーシップではなく、そういうことである。
 というようなことを、もしご指名があれば卒業する諸君の前で言うつもりだったが、今年は珍しく機会がなかったので、ここに書くことにした次第。3月30日にゼミ生やBLPのアシスタントたちと卒業前最終の飲み会があるのだが、これを読んだ諸君からどんな反論があるだろう。

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2010年3月28日 (日曜日)

質問の効能~コートサイドにて

ピザを食べ過ぎた翌朝は紅白戦。花粉でテニスできない自分はコートサイドで見物するしかない。よしんばテニスできる体調であったとしても、選手たちの打球の速さを見ていると、自分がコートに入って練習に貢献できるとは思えない。それなのに一試合が終わると選手たちは走ってこちらに来て、律義に「アドバイスお願いします」と言う。
 はてどうしたものか。「エラーが多いな」とか「もっと走れ」とかテキトーなことを言ってもかえって恥をかくだけだろうと思うので一回目は「元気でいいね。頑張るように」とか無難なことを言って帰すが、ふとアクションラーングの手法を使うことを思いつく。「まずコーチのところに言って助言もらってきなさい」。コーチのところに行ってからこちらに来た選手には「コーチに何と言われた?」「その助言は腑に落ちる?」「これからどう練習する?」等と問答すれば本人の学習の定着には役立つだろうし、「アドバイスお願いします」という殊勝な心がけというか習慣も無駄にならない。これは質問会議のコーチ役が、コンテンツに全然入り込まなくても(コンテンツがあまり分からなくても)メンバーの学習を促進することはできるというのとほとんど同じなのじゃないか。

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冬のピザの試練再び

先週、大学の体育会テニス部の合宿に行ってきた。テニス部の副部長になってから二年以上経つのだが、まだ一度も合宿に行ったことがないので、一度くらいはどんなものか見ておこうと思った次第。東伊豆の稲取にあるスポーツヴィラというところで、これは実はルネッサ系列だったのが、伊豆バイオパークを持つ会社に買収されて名称も変わったらしい。稲取は、都立大@八王子時代に2泊3日の合宿に来たことがあったが、最近は遠ざかっていた。
 体育会の練習はハードだから最後の晩にお邪魔して料理でもして慰労しようと鉄鍋を送っておいた(あの重さと大きさのローラーダッフルを千円ちょっとで送れるのは助かる)。料理をする部屋に風呂がありますというから、例によって風呂でピザ生地を膨らませればいいと思っていたら、「いやバスタブはないんです」というのが最初の難関。しかも行きに池袋で買ったドライイーストがいつものと違って「英国製の強力なものです」ってのがどうも変で全然膨らまない。バスタブがないので洗面台に栓をして湯を張ってボウルをうかべるものの栓が甘くて湯がなくなっていくため温度が安定しないからますますいけない。
 13人の部員に最初の鶏・キノコ・チーズの蒸し焼きを供したまでは良かったが、ピザ生地が全然膨らまないため、第二のおかずを作るのはあきらめ、急遽予定を変更してパスタを連続して作らざるをえなくなった。500gのパスタをゆでること三ラウンド、合計1.5kgのペンネをジェノベーゼ、アラビアータ、アーリオオーリオペペロンチーノで次々出してもまだ食べるスピードが落ちず、ゆでたズッキーニと茄子をワインビネガー味で出し、あと500gのスパゲッティーニを残すのみとなったとき漸く落ち着いた。
 さすが体育会諸君の食欲は凄いと思ったらまだその後がある。いったん解散したあとピザ生地が心持ち膨らんできたので、下級生を部屋に返し4年生とコーチたちだけで膨張率の悪い生地でピザを作って食べてみたら、いつもような軽くてぱりぱりというのとは違って食感は重いが味はなんとかなる。用意した800gを5人くらいでほぼ完食。生地が半端にしか発酵しない場合でも焼けば何とか食べられるというサバイバルtipを学ぶ。

【追記】その後、学生の発案で、炊飯器の保温機能を使えば、簡単に発酵させられることが分かりました(2012年5月)。

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2010年3月 4日 (木曜日)

アシスタントのワークショップで質問会議

一年前から小規模に試行していたんですが、先週金曜日、ついに質問会議を大学の授業の学生アシスタントと有志教員のワークショップに導入することができました。
 どうして質問力をあげる必要があるかというと、リーダーシップ開発の授業では、グループで問題解決・企画提案プロジェクトを行うことが多く、そのプロジェクト期間中は教員もアシスタントも受講生たちに知識をインプットするというよりはプロセスを見守る役割になります。授業中にも机をグループごろに島状に並べ替えて、各グループがディスカッションを行う時間がありますが、島の間を巡回しているときに受講生から「どうしたらいいんでしょうか?」と相談されることはしばしば起きます。そのときに「こうしたらいいのでは」とついインプットしたくなる。どこまでインプットするか迷う。あるいはインプットしてしまってから後悔する。こんなときに受講生からの質問に直接答えないで、逆に質問で返すという技があります。
 もちろんどんな質問でもよいわけではないので、的確な(聞き手に学習を引き起こすような)質問を良いタイミングで行うために練習と経験が要るわけです。
 当日はアシスタント学生(学内規定ではstudent assistantという妙な名称です)3名と教員1名、それにプロのALコーチ(アクションラーニングコーチ)が1グループになり、そのグループが7つ、同時並行で質問会議を進めました。日本アクションラーニング協会の講座では最初からALコーチの養成を意図しているためか、交替でALコーチ役になる仕組みになっており、その準備のためにALコーチ業務の説明にかなりの時間をとられます。さらに、ALコーチになることをめざしているのか、メンバーとして質問力をあげることをめざしているのかが初心者には分かりづらくなっていると常々思っていたので、今回はALコーチ役はプロの方々に完全にお任せして、メンバーは質問役に徹してもらいました。これにともなって、質問会議の前に全体で行うオリエンテーションも、「問題解決のために良い質問・悪い質問」「どういうときに質問をしづらくなるか」など、質問の効能や良い質問が出るための条件などのディスカッションに絞り込みました。
 もともとBLPは、アクションラーニングの考え方で構成されていて(逆に言うと質問会議はアクションラーニングの一形態にすぎない)、当日参加した学生たちもBLPは1年間以上受けているので、振り返りの習慣はついており、質問会議の「学習促進」も違和感なく実行できたようです。この点についてALコーチの方々からお褒めをいただけたのも嬉しく思えました。
 受講生にも大変好評でした。朝から夕方までみっちりワークショップを行った後、受講生たちはバスでさらに伊豆へ合宿に出かけて、ウェルカムキャンプと新学期の準備のためにまた密度高く過ごしました。

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