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2008年1月16日 (水曜日)

イタリアへの「けものみち」

 リーダーシップは、組織やグループに属しながらそこに貢献する形で発揮されることもあるが、もう一つの重要な現れ方がアントレプレナーシップだと考えられる。そこで、今年のBL3(BLPの三学期目、二年生後半)では起業家の体験談を聞く時間を三週ほど設けてみた。きょう(もう昨日だ)はイタリア料理研究家・イタリア料理関係事業仕掛け人(?)の沈 唱瑛さんをお招きして、約100人の学生に講演していただいた。
 沈さんは「大学受験では先に受かったほうに大学に何となく決めてしまったし」「料理と並んでゲームも好きだったからあまり考えずゲームの会社に就職してしまった」というふうに、「キャリアをデザインする」という発想など全くなく大学を卒業し就職する。しかし沈さんは「ゲーム機会社でお荷物扱いされていた部門(お化け屋敷)をローテク一本槍で再建してしまう」「飛び込み営業で人に話を聞いてもらう」といった経験を積みながら、もともと好きだったイタリアとイタリア料理の方向へじりじりと近づいていく。ここで「好き」を貫き、しかもイタリア料理の調理そのものではなく、「イタリア料理店の経営のためには必要なことだがシェフたちにはできないこと」に特化するのである。就活や就職を前にした学生、とくに女子学生にはとても励ましになると思われる。(同時に私にそんなことができるかしらと不安になる人も出てくるかもしれないのだが)
 ゲーム機の会社を辞められてからの沈さんの道はいわば梅田望夫氏の言う「けものみち」に相当するのかもしれない。「えっ私の来た道はけものの道?」と驚かれると困るのだが、「けもの」に主眼があるのではなく、重点は前人未踏ということである。梅田氏の『ウェブ時代をゆく』の「けものみち」論は、インターネットによってますます高速化する道路と「その先の大渋滞」を対比して、渋滞を抜けてさらに高くそびえる道を行くべく同じ方向で研鑽を続けるのではなく、高速道路を降りて、人の足跡の無い道を敢えて選んで行くのもまた一つの方法である、という主張である。二十代から三十代の女性にこの「けものみち」論が支持されているらしいのは、おそらくインターネットの話のせいではないだろう。ネットとは関係なく、結婚や出産や予定外の転職で一度高速道路を降りたら、復帰するには「けものみち」を行くしかないのだ、という文脈なのではないか。これについてはいずれまた書いてみたい。

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