新しい本を出しました
編著でリーダーシップ論・リーダーシップ開発論の本を出しました。2月に立教大学リーダーシップ研究所とBLP主催で行った国際ワークショップとシンポジウムに提出された論文と、そこから発展した論文を集めたもので、BLP担当教員も数人執筆しています。私は著者として第二章「大学教育におけるリーダーシップ開発」と、編者として後書きも書いているので、後書きをここに載せておきます。
「本書はリーダーシップ論・リーダーシップ開発論の入門書で、執筆者は研究者と実務家がほぼ半々であり、実用書と研究書の中間(というか両方)を狙うという欲張りな本である。リーダーシップとその開発に興味のあるビジネスパーソン、研究者の方々や、大学院生、学部学生の皆さんに読んでいただきたい。また、リーダーシップ開発は学習環境デザインとしても強力な効果をもっていると思われるので、大学における教育改革に関心のある方にも興味深く読んでいただけるのではないかと思う。
本書はバードさんのはしがきにも書かれているように、2007年2月20日に立教大学で行われたワークショップ「21世紀のリーダーシップ」に提出された論文と、それに触発されて書かれた論文から成っている。ワークショップとそれに引き続く公開のシンポジウムでの柱は三つあり、それがそのまま本書の三つの部となっている。
第一部は学生や比較的若いビジネスパーソンに対するリーダーシップ開発(リーダーシップ教育)の必要性と方法論議である。大学の学部で私たちが開始したリーダーシップ開発はこの第一部にある三つの論文(金井、日向野、久冨)に書かれているようなリーダーシップとその開発を念頭においている。第二部は企業において具体的に問題となっているリーダーシップについてであり、人事管理(松坂)、CSRと倫理(Davis)、ダイバーシティ(尾崎)、研究開発(石川、星)などにおけるリーダーシップ問題が論じられている。第三部は、2月のワークショップの中心議題でもあったglobal leadership development論への誘い(Osland=Bird、Mendenhall、Oddou、古屋=Stevens=Oddou=Bird)とそれに触発された論考(小坂、佐々木)である。
私事に渡って恐縮だが、22年間お世話になった東京都立大学経済学部を、首都大問題で退職する決意をしてから、縁あって立教大学経営学部から誘っていただいた時に、新設される経営学部経営学科のコアプログラムであるビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)の設計と実施も担当することになった。小生はもともと経済学者で、経済学は通例リーダーシップを充分に持たないような個別主体を想定しないせいか、リーダーシップ開発のプログラム設計を担当することになったと私が話すと驚いた同僚も少なくなかった。しかし都立大経済学部の経済学部門の同僚たちは本書のいくつかの章で強調されているemergent leadershipの見本のような人々だったし、リーダーシップ開発自体も都立大の私のゼミで(小さな規模ではあるが)直近の数年間にやろうとしていたことに近い気がして、自分ではさほど違和感を感じなかった。
とはいえ、リーダーシップ開発について体系的に学んでいなかったので、それから立教大でのBLPの開講まで二年近い期間は、この分野の文献を読んだり、企業の方にリーダーシップ開発についてヒアリングしたり、海外の大学でのリーダーシップ教育を見学する等、BLPの準備に集中していた。ミズーリ大学セントルイス校はその時期(2005年9月)に訪問し、臼井教授の紹介でバード氏に出会ったのである。臼井さんの綿密な計画のおかげでミズーリ大学とピッツバーグのデュケイン大学で短期間に数多くの授業を見学し多くの人と話し、多くのことを学ぶことができた。80年代に滞在したニューヨーク市立大学クイーンズ校・シティ校もその機会に再訪して、同様に学部の大小さまざまなクラスを見学した。
日本経済の熱心な研究者でもあるバード氏はその後もしばしば来日する機会があって、立教大学でリーダーシップ開発論の国際ワークショップをする話になり、それが本書出版の発端となった。神戸大の金井壽宏さんを始め、ワークショップやシンポジウムに熱心に参加してくれた皆さんに感謝したい。また企業での激務のかたわら、学生のリーダーシップ開発に社会的意義を感じて毎週大学を訪れ、教材開発や授業計画のディスカッションに参加し時には合宿にもつきあってくださる兼任講師の方々や、従来の大学の常識にこだわらず全く新しい試みに帯同して、常にフィードバックやアイデアを提供してくれたBLP担当教員の皆さん、さらに、試行錯誤の続く授業に対していつも明快な反応を示して授業改善に貢献してくれる学生の皆さんにもお礼を申し上げる。最後になったが、学部レベルでのリーダーシップ開発という未知の領域に踏み込む機会をくださった立教大学経営学部開設準備室の皆さんと、準備にも実施にも手のかかるBLPを支援してくださっている経営学部スタッフにも感謝したい。最後になったが、丁寧で献身的な仕事をしてくれる飯塚英俊さん(日本評論社)に今回も大変お世話になった。」
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