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2007年3月17日 (土曜日)

Servant leader

松坂さんとお話ししていてもう一つ面白かったのは、女性で大きな組織の中でリーダーとして頭角を現していった人には、サーバントリーダー型の人が多いということだ。サーバントリーダーのことは私はニューシェルの本(『ケロッグMBAスクールで教えるリーダーシップ・エッセンシャルズ—組織・人材パワーの発揮へ 』、生産性出版、2006)で知って、とても面白かった。短く言うと、倫理的に優れたリーダーは、フォロワーに対して、彼らがより健康に、より賢明になって任務を全うしてくれるようにさまざまに気を配る責任を持っている。それをサーバントリーダーと呼ぼうというのである。

後日、神戸大の金井壽宏さんに、サーバントリーダーという概念は、ニューシェルよりもグリーンリーフが先であると教えてもらった。ニューシェルの本に参考文献のページが無かったからと言い訳したいところだが、リーダーシップ論の教科書(例えばYukl)を見ればグリーンリーフのことはちゃんと書いてあるので言い訳にもならない。

それはともかく、ニューシェルは職業軍人出身だという。軍隊のような命令絶対の組織(明白な不服従には死刑という罰さえあるような極端な組織)においてさえ、部下がどれほど意欲をもってくれるかによって部隊のパフォーマンス(成績)が大きく左右される。部隊の指揮官がサーバントリーダーであれば部下は喜んでついてくる。いわんや生死を賭すわけではない企業組織においてならばなおさらそうであるはずだ、とニューシェルは言いたいのだろう。

軍隊については、塩野七生さんも似たことを書いていたのを思い出した。イタリア旅行の文章だったと思うが、同じ船に乗り合わせた将校らしき軍人にどこの部隊かと尋ねたら「para」つまりパラシュート部隊、空挺部隊だという。前線の後方つまり敵地に降下する等の極めて危険な任務につく部隊の指揮官として、日頃から最も気にかけているのは戦闘中に限らず平時の部下の身辺のことや部下の家族のことである、そのように気を配っていればこそ、いざというときに部下は頑張ってくれるというのである。そういえば、空挺部隊のことを描いた映画(メル・ギブソン主演の『We were soldiers 』やスピルバーグとトム・ハンクス制作の『Band of brothers』には、指揮官(小隊長)がいつも最初に飛行機から飛び降りるという、他の部隊とは違う空挺師団の習慣が描かれていたのも思い出されるし、『硫黄島からの手紙』で渡辺謙演ずる栗林中将も(事実かどうかは未確認だが映画では)最後の夜襲で「余は常に諸君らとともにあり」と言っていた。

元軍人のニューシェルの示唆するように、企業においては部下に軍隊ほどには厳しいインプット(しばしば生命)を要求するわけではないので、上司がサーバントリーダーであれば、部下の意欲を引き出すには一層効果的であるとしよう。そうすると、冒頭に書いた「女性で大きな組織の中でリーダーとして頭角を現していった人には、サーバントリーダー型の人が多い」のは何故だろう? 「出る杭は打たれ」たり足を引っ張られて失脚するリーダー候補者が多い中で、サーバントリーダー型であれば支持者が多く昇進に異論が出にくいということだろうか。

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