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2006年12月 1日 (金曜日)

金融入門の入門 第1章の2 預金で支払う

 次に、公共料金の自動振替はどうでしょうか。自分の預金の一部を、相手(電力会社、ガス会社、自治体の水道局など)の預金口座に移転することで支払いが完了するのですから、預金で支払っていることになります。預金口座から預金口座へ移動し、相手もそれを現金として引き出さなくても次の支払いにまた使えますから、預金が転々と移転していくことになります。

肝腎なことは、このような移転(振替)の手続きによって、現金と同等に、特に相手方の了承を一回一回とらなくても支払いが済んだと認定される(裁判所が支払いとして認めてくれる)ことです。言い換えると預金には一般的受容性があり、それが法によっても後押しされているのです。これを短く言うと「預金は貨幣である」「預金は通貨である」となります。もちろん現金も、預金と同じく貨幣(通貨とも言う)です。ここで言う「預金」とは、具体的な商品名では主に銀行の「普通預金」や郵便局の「通常貯金」です。公共料金が引き落とし可能な証券投資信託口座などもこれに近いと言っていいでしょう。

もともと預金は、銀行に現金などを預けたことで発生しているのですが、誰にお金を預けてもそのように一般的受容性が発生するでしょうか? 友人に10万円預けて、その預かり証を持っていれば、あなたもその友人も知らない初めて入った店で、その預かり証と引換に10万円の買い物ができますか? あるいはその預かり証を郵送すると通信販売会社が受け取ってくれて買い物できるでしょうか? できませんね。つまり一般的受容性がありません。あるいは同じことですが、貨幣(通貨)として通用しません。

ところが預けた相手が友人ではなく銀行であれば、事情はがらりと変わります。銀行へ預けた金、つまり預金の一部を相手に移転すれば受容してもらえます。このバリエーションとして、自分の預金の一部を移転する手続きを、銀行に行かずに、買い物する店の店頭で行えるのが実はデビットカードです。(デビットカードについては詳しくはまた後で説明します。)

友人に預けるのでは駄目なのに、銀行に預けるのならば貨幣(通貨)として認定される、という意味で、銀行の預金は特別の扱いを受けていることになります。実はこの「特別扱い」というところが銀行の役割にとって決定的に重要なのです。銀行についてはこれからいろいろな文脈で言及しますが、銀行の負債である預金が通貨として通用すること、そして預金を不特定多数の人から集められることが非常に重要な特徴です。

(第2回終わり)

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