金融入門の入門 第1章の3 カードで支払う?
ここまで紙幣・硬貨で支払いをする場合と、預金の振り替えやデビットカードで支払いをする場合を説明してきました。他に日常の支払いで皆さんがよく使う支払いの方法としては・・クレジットカードとプリペイドカード(または電子マネー)でしょうか。
まずクレジットカードですが、クレジットカードで払った場合、当然ですが、翌月か翌々月に銀行口座から引き落とされたり、代金分を後でコンビニに現金で払いに行ったりします。
従って、最終的には預金か現金で払っていることになりますから、クレジットカードは(最終的な)支払い手段ではないのです。分割払いの場合も同様です。デビットカードは預金でリアルタイムに払うための道具であるのに対して、クレジットカードは預金で(あるいはコンビニにて現金で)後で払うための道具とも言えましょう。
次にプリペイドカードはどうでしょうか。この場合はクレジットカードとは逆で、先に現金などで買っておくのですから、やはりカード自体が支払い手段なのではありません。ではプリペイドカードとは一体なんなのかと言えば、発行会社に対して予め預けておく一種の預金です。2000円のプリペイドカードを買えば、その会社(鉄道・バス・電話会社など)に2000円を預けて、それを徐々に使っていくことになります。
その意味でプリペイドカード(を買うこと)は預金(すること)と同じなのですが、銀行預金とは違って使い道は限定されていますから、貨幣(通貨)とは言えません。各種の電子マネーもプリペイドカードの進化したものですが、先払いである限りは同様です(写真は電子マネーの先駆、ドイツのゲルトカルテGeldkarte。公共交通機関や駐車場の支払いに使われてきましたが、ドイツでは後から普及したデビットカードやクレジットカードに押されています)。
結局、クレジットカードもプリペイドカードも(またデビットカードも)それら自体は最終的な支払いの手段ではないので、社会に広く通用して(一般的受容性)貨幣(通貨)として機能しており、なおかつ法律(裁判所)もそれをバックアップするものは、国内の紙幣・硬貨と銀行預金だけ、ということになります。
(追記)一般的受容性を持っていながら例外的に前払いなのが、トラベラーズ・チェックです。日本国内では全く使われませんが、米国では国内旅行でもよく使われてきて、米国国内線の出発ロビーにも(米ドル建ての)トラベラーズ・チェック自動販売機が設置してあるのを見かけます。しかし90年代に米国では凄い勢いで全国にATMが増設されたため、かつてほどは見なくなりました。また、さらに最近は日本から海外に出かける場合に、現地の提携ATMを使えばそのまま現地通貨を引き出せる、いわばグローバル仕様のATMカード(キャッシュカード)サービスが普及しつつあるので、トラベラーズチェックはあまり使われなくなっていくと予想されます。
(第3回終わり)
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