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2006年11月17日 (金曜日)

イタリア国鉄乗客の「動線」〜メルマガ57号

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前号で英国のスーパーマーケット・Tescoが顧客動線をどのように考え設計しているかを金融サービスやワンストップサービスとの関係で説明しました。今回は、決済と顧客動線という同じ切り口でイタリア国鉄Trenitalia利用の経験を書いておきたいと思います。

決済という点では、中長距離の列車の切符を買うのに、現金ばかりではなく汎用クレジットカードがほぼ常に使用できる点は日本のJRや私鉄より便利なくらいです。ミラノやローマなどの大都会であれば英語を話せる駅員も多く(地下鉄などに比べて)外国人にも不便はありません。地方に行くと窓口では直接英語は通じなくなりますが、地方でも主だった駅では案内所Informazioneが通訳も兼ねていて、どこそこにいつ行く列車の座席指定を買いたい云々と相談すれば、切符販売窓口の係員にも分かる形で必要事項を紙に書いてくれるので、それを持って改めて切符販売窓口Biglietteriaに行けば、乗車券や座席指定切符などを買うことができます。

ただ、切符を買ってからの乗客の動線には独特のものがあります。というのは、日本のような改札口が無い代わりに、列車に乗る直前に黄色の機械に切符を通して日時と駅名のスタンプを得なくてはいけません。降車駅でも改札口は無いので、一日に二回利用したり別な日に同じ路線に乗ったりという不正乗車を防ぐためのタイムスタンプなのでしょうが、このスタンプを押す黄色の箱状の機械の所在位置が、プラットホームの端だったり階段だったり、駅によって一定しないのです。

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そのため外国人のようにイタリア国鉄に乗り慣れないユーザはスタンプを忘れてしまうことになりがちです。私も一度忘れて、車掌検札で10ユーロの罰金をとられてしまいました。忘れなかった場合でも、大きな荷物を引いて急いでいる時などは特に面倒な動線です。

経営的には改札口を省力化できるので便利なのでしょうが、乗客に余計な動線を強いるというマイナス面があります。アメリカのAmtrakでも、イタリア国鉄同様に、改札口はありませんが、車掌検札が必ずあってそこでスタンプされますので不正乗車防止になっています。イタリア国鉄の場合は車掌検札は来ないときも少なくありませんから、アメリカ式のほうが人手がかかっており、その意味ではイタリア国鉄は日本の改札やアメリカの車掌の行う機能をまるごと乗客に動線として負担させていると言うこともできましょう。たかだか10ユーロの罰金をとられたせいで辛口になっているのではないつもりですが、慣れないユーザ(典型的には外国から来た人)にはこの動線は負担です。ただ、バスについてもほぼ同様のスタンプ方式がとられているので、イタリア人にとってはもう習慣になっていて負担とは感じられないのかもしれません。次の写真はバス車内のカードリーダー兼タイムスタンパーです。

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ユーザの動線負担という点では、ミラノ中央駅Stazione Centraleではさらに別の動線を強いられました。フィレンツェに行く切符を買ったのはいいのですが、十数本あるホームのうち何番線に列車が入るかが直前まで分からないのです。しかも、切符売り場にある電気(機械式)掲示板には、終着駅(終点)は書いてありますが列車番号はありません。他方、切符には列車番号はありますが終着駅は書いてありません。切符にある情報と掲示板の情報がリンクしていないのです。さらにミラノ駅では同時刻に発車する列車が何本もあり、切符に書いてある発車時刻から乗るべき列車を電気掲示板で探しても列車は特定できません。これは現地の人にとっても不安材料のようで、私の周囲にも、自分の行くべきホームが分からないイタリア人が大勢案内係に殺到して長い列になってしました。慣れているらしい人でも、結局掲示板の真下でじっと表示が変わるのを立ったまま待っていることが普通のようでした(指定席を買えなかった・買わなかった人は特にそうなのだろうと想像します)。他の駅でもそうした光景が見られたので、特にこの日のミラノ中央駅が特殊だったということではないようです。

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イタリア人たちはこれにも慣れているんでしょうか? フィレンツェから日曜にミラノに帰ってくるInterCityという急行列車も2時間半のところを3時間半もかかっていて、乗客たちは「明日払い戻し要求だな」と慣れたふうではありました。列車の遅れを告げる(らしい)車内放送をきっかけに指定席で同じボックスになったイタリア人女性3人と英語とイタリア語チャンポンで話し始めたのですが、日本の電車は時刻通りが普通で、最近、1分の遅れを取り戻すためにカーブで減速せずに脱線して大事故を起こした運転手がいたと話すと、皆たまげていました。

(ところで一番上の写真は動線というより視線ですね・・・イタリア人は、「見つめる」ことに非礼を感じない人たちのようです。英米独仏とは違います)

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