再びTescoへ〜メルマガ56号
2004年3月に続いてロンドンでスーパーマーケットの店舗を見る機会がありました。まず業界首位のTescoは、前回と同じHammersmith店。有名な女性シンガーの出身地らしいのですが、それで選んだわけではなくて、車を使わず地下鉄で行けそうな郊外型(伝統型)支店の一つだったからです。
ヒースロー空港に着陸するすぐ前に、窓から市内西部に巨大な支店が見え、その屋根にTESCOと大書されていた(飛行機からの視線を意識しているのでしょう)ので、もしかしたらHammersmith店が改築になったかと思いましたが、別の店のようで、Hammersmith店は内装・外装ともに2年前とほぼ同じでした。
もちろんATMもあります
ただ、顧客の動線に関わる決済・レジ機能には進化があって、まず第一に、クレジット・デビットカードでの決済にPINコード入力が必要になりました。入力の方法は日本と同じように顧客側を向いたキーパッドに4桁の暗証番号を入れるだけです。Tescoの各店舗では2004年の6月からこの方式を導入する、と前回のTesco本社インタビューで聞いていました。その予定の日通りだったかどうかは未確認ですが、見る限り大小全ての店で導入されていました。一つ重要なのは、PINコード入力を必須とするかどうかは、経営判断であるという点です。英国では年金の自動振り込み(つまり小切手ではなく年金受給者の口座に国が直接年金を振り込む)の導入をきっかけにデビットカードが一挙に普及し、それにともなってクレジットカードもますまず普及しました。いまや小口の小切手使用は風前の灯火です(欧州は全般に同じで、いまや米国が少数派です。日本はもともと小口の小切手使用は非常に少なかったのはご存じの通り)。
しかし英国でのデビットカード・クレジットカードの普及ともにカード犯罪も激増していて、盗んだり拾ったりしたカードを不正使用する輩が後を絶ちません。そこで店頭でのPIN入力を義務づける店が増えているわけです。しかしPIN導入には費用がかかるので、導入のメリットとデメリットを店が比較して(カード会社の方針も考慮して)導入するかどうかを決断するのです。メリットがデメリットと比べて(現段階で)少ないと判断する店はPINを導入しないでしょう。実際、今回の出張中に経験したなかでは大英博物館のミュージアムショップは伝統的なサイン方式でした。
旅行保険や車の故障保険(ロードサービス)を店頭でパックで売っているのは前回同様です。
このパックをレジに持って行き、精算すればその時点から保険が適用になりますから、ドライブに出かける直前でもOKです(ただしClubcardの保有者つまり会員である必要がありますが、Tescoをよく使う人は皆会員ですからそれは大きな制約ではないはずです)。車と言えば、ガソリンスタンドpetrol stationや洗車機も併設されていて、「Tescoに行けば一カ所で用事が済む」という便利さをめざしていることがうかがえます。日本でも銀行などが証券や保険を併売することを「ワンストップ型」と一時期盛んに言っていましたが、銀行や証券会社が自分の都合で売りたい商品を一堂に集めてワンストップと称するのと、Tescoのように利用者の動線を考えて、生活全般に関することがワンストップで済んでしまうようにして本業の利用度を高めるというのとでは全くレベルが違うという印象を受けます。
他にコンビニ型というのか、小規模な都市型店は都心あちこちにできていたので入ってみましたが、決済については郊外型と同じです。店舗の外側にATMもあるので、かなり日本のセブン銀行に似た形とも言えます(銀行機能のみの支店がないことも共通です)
ちなみに、前回見て驚かされた寿司のパック売りはますます好調のようで、かなり大量に積まれていました。
[追記]カード決済にあたってPINを導入するかどうかと並んで、カードで決済できる金額に下限をもうけるかどうかというのも店の経営判断の問題で、Tescoは1ポンド(約250円)が下限でした。それに対して、老舗(しかしいまや低迷して再建中)のSainsburyは下限無しでした。下限がないことは消費者には歓迎されるでしょうが、コストを押し上げる要因になることは明白ですから、差し引きどちらをとるかは経営判断に属することになります。
| 固定リンク
「10. 南君の金融日誌」カテゴリの記事
- メルマガの刷新(2006.11.23)
- 再びTescoへ〜メルマガ56号(2006.11.09)
- 会社法改正
金融メルマガ第41号(7月13日配信)(2005.08.10) - 川越へ出張講義(2005.07.09)
- 再生ファンド近況/ソニーの新採用方式
(金融メルマガ第35号)(2005.02.09)
「04. 金融とgovernance」カテゴリの記事
- 企業の不払いと倒産(金融入門の入門1-8)(2008.11.12)
- 資金繰りとキャッシュフロー(金融入門の入門1-7)(2008.11.05)
- 企業の支払・受取・キャッシュフロー(金融入門の入門1-6)(2008.11.01)
- 個人が不払いを起こすと何がどうなるか(金融入門の入門第1章の5)(2008.10.30)
- 『貯蓄から投資へ』の今昔(続き)(2007.05.20)
「11. Mail magazine」カテゴリの記事
- Pasmo(2007.03.31)
- メルマガの刷新(2006.11.23)
- イタリア国鉄乗客の「動線」〜メルマガ57号(2006.11.17)
- 再びTescoへ〜メルマガ56号(2006.11.09)
- セントルイス訪問〜金融メルマガ第43号(2005.10.01)
「02uk. UK」カテゴリの記事
- ロンドンでリーダーシップの学会に参加してきた(2011.10.31)
- プロたちの集う教室(2011.09.12)
- Tube(2006.11.10)
- 現金無しで地下鉄に乗る(2006.11.10)
- 再びTescoへ〜メルマガ56号(2006.11.09)
コメント
実は私も10/26-11/5までイギリスに行ってきました。ロンドンTubeに乗りまくり、大分詳しくなりましたよ。ちなみに私はスーパーはM&Sを利用しておりました!
投稿: Kobe | 2006年11月 9日 (木曜日) 20:41
どうもKobeさん
どこかですれ違っていたかもしれませんね。Tubeのことは近々書くつもりでいます。Marks&Spencerではカードは使えますか?下限金額はありますか?ATMはありますか?(などと取材してしまう)
投稿: ひがの | 2006年11月 9日 (木曜日) 20:48
すいません、そこまで詳しく見ておりませんでした。。。ATMはあったと思います。(他のスーパーにも行ったため記憶が曖昧なのです)
Oysterカードはかなり優れものですね。cap applied機能が付いていて使いまくりました。途中紛失してしまったときも、即再発行してもらえましたしね。かなりの優れもので、是非日本にもあってほしいと思いました。
投稿: kobe | 2006年11月10日 (金曜日) 21:12