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2006年9月15日 (金曜日)

日本精神

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ゼミ生たちが長庚大学の学生たちと夜市に行っている間、僕は一人でもっと台湾ローカルのものでも食べに行こうと出かけました。

その結果入ったのが写真にあるような家族経営の店で、写真右奥にはお釈迦様の姿を描いた仏壇らしきものも見え、ちょっとだけ日本的です。暇そうな店主さんらしき人物(写真左端)は店の奥(写真左手)にあるテレビで日本のNHK-BS放送を見ています。(このBS放送は日本語の音声はそのままで、要所要所に中国語の字幕が入ります。) 店主さんや店のおばさんにメニューを指さすと「それ辛いよ」くらいは日本語で言ってくれるのですが、少し複雑になると駄目です。

すると店主さんが、「お客さん、日本人?」と尋ねて、携帯電話をどこかへかけ、僕に話せと受話器を渡すのです。出てみると「わたしは元日本兵で日本名を柳川と言いました。何が食べたいですか?」と流暢な日本語が聞こえてきます。「いまそこにいるメガネをかけた男がいるでしょ、それが私の息子ですよ」。つまり店主は、日本語の通訳をしてもらうために父親に電話したのです。すいすいと話が進んで無事に注文が通ります。元日本兵だというのですからおそらくは80歳代でしょう。注文の話が終わっても電話を切る気配がありません。「私はね、李登輝(り・とうき)総統と同じく日本精神(リップンチェンシン)が大好きですよ」

台湾のお年寄りには日本に大変な親近感をもっている方が多いとは聞いていましたし、前回台湾に来た時にも、古い美しい日本語でお年寄りに話しかけられて驚嘆した記憶もありました。しかしそのときは「日本精神」のことは知らず、数年前に読んで知ったばかりでしたから、今回こういう形で実際に台湾で耳にするのは新鮮でした。

日本精神は、「勤勉で正直、約束を守る」という意味で、台湾で「いまの若いもんは」とお年寄りが嘆くときには「日本精神が足りないのだ」と下の句に使うのだそうです。日本の台湾統治時代には日本による教育と統治のおかげで台湾人がそうであったのに、今はそれが失われつつあるという趣旨でしょう。しかし、その意味の日本精神は、今の日本でこそむしろ失われつつある美徳ですから、台湾の方にそれが日本精神であると言われると、襟を正せねばならないような、しかし他方で不思議な気持ちになります。しばし電話でお話しするうちに「今度うちに遊びに来てくださいよ」とまで言ってくれたのでお礼だけは言いましたが、いまになってみるとご招待を真に受けて本当に遊びに行ってしまえばよかったかなとも思えてきました。

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