怒濤の新学期(その3)〜メルマガ第52号
怒濤にのみこまれて今回の配信が約半月遅れてしまいました。授業がほぼ終わってようやく岸に泳ぎ着いたところです。
前回新しい方式による基礎ゼミを紹介しました。20クラスがそれぞれクラス内で3〜5のグループに分かれて事業・起業の提案(または書評)のグループプロジェクトを持ち、6月下旬をめざしてクラス内コンペを行ってクラス代表(1ないし2)を決めます。そしてクラス代表になったグループが7月上旬の学部全体でのポスターセッションに出場します。20クラスから出てきた合計約40枚のポスターを10の教室に掲示し、ポスターの前で来場者に説明し質疑応答も行います。審査員は教室を巡回して採点します。
このポスターセッションはその準備の時からかなり盛り上がってセッション当日はお祭りのようでした。そのうえポスターの質も口頭での説明も、4月の合宿の頃よりはっきりと向上していました。
このポスターセッションの40チームを教員の採点で10チームに絞り、三日後の本選を迎えます。本選はパワーポイントでによるプレゼンテーションです(PowerPointとは単に商品名ですが、ここではパソコンとプロジェクタでスライドを映写しながら説明するということですね)。既に4倍の激戦をくぐり抜けてきていることもあって粒揃いで、このまま学生ビジネスコンテストのようなところに持って行っても善戦するのではないかと思われるものもいくつかありました。
こうした光の部分だけでなく、もちろん影の部分もありました。まず、クラスの中で3つから5つのグループが並行してプロジェクトを走らせていたのに、クラス代表として選ばれるのは1つか2つだけなので、クラス代表が決まった後の3週間ほど、つまり予選までの間、代表にならなかったグループはどう過ごすかです。理想的には、代表に決まったグループの助言者になったりグループに合流したり、ということになるでしょうが、グループに合流となると人数が増えすぎてかえって困るということも充分にありえます。
また、ごく少数ですが最初から最後まで参加意欲の低い、当事者意識のない(また時として迷惑な)メンバーがいるかもしれません。このことは、どのようにグルーピングを行ったかにも大きく依存します。すなわちくじ引きや名簿順や、たまたまの着席位置などでプロジェクトへの参加が決まった場合は意欲を高く持てといっても難しいことがあります。
凝った方法の一つとしては、最初に2,3回機械的な方法のグループ分けをして各2週ほどを一緒に過ごして小さなプロジェクトを行わせ、最後にお互いを認めた同士でグループを作らせるという方法があります。これは最初から「一番最後には好きなようにグループを作ってもらうから、そのとき組む人をこの予備グループに居るうちに考えておきなさい」と言い渡しておくことが肝腎です。そうすることで、予備セッションにうちにお互いを知っておくこと・場合によっては売り込んでおくことを意識するからです。
この「凝った方法」はたまたま僕のクラスで実験してみたのですが、どうしてこんな手の込んだことまでする価値があるか? それは、良いプロジェクトを行うためには、Collinsの『ビジョナリー・カンパニー2』(原著 "Good to Great")によれば(1)最初に良さそうなプロジェクトの構想を作っておいてから人を集めるか、或いは(2)良い人を集めてから一緒にどんなプロジェクトにするかを考えてもらう、という方法があり、そのうちCollinsの薦めに従って(2)を試してみたかったからです。
この方法は企業その他のプロジェクトチームの編成で起きることを教室内で擬似的に再現するという面を持たせているつもりなのですが、どのグループにも入れない者が出てくることも予想されます。それが多数になると、プロジェクトチーム以外の仕事のある職場の場合と違って「どこにも入れない者だけで作った残差グループ」が出来てしまい士気の上がらないことはなはだしいので、予備セッションのうちから何度か注意を喚起しておく必要はあるでしょう。
このグループ分けの最大の特徴は、どのグループに入るかは自分の行動の結果であるために納得せざるを得ず、さらに、人選を行う間に自然にリーダーが発生して(またこのリーダーがプロジェクトの中味を考えるにあたってのリーダーとは違うこともありえますが)、それ以降の進行に弾みがつくことです。
とはいえ、まだ子供に近い一年生に、ある意味でこんな酷な経験をさせてまでグループ分けに凝る必要はあったのだろうかと実は不安でしたが、数週間経って出てきたプロジェクトの仕上がりや、土壇場で見せるメンバーの結束力を目の当たりにすると、無駄ではなかったと確信させられました。最後の学部全体でのプロジェクト報告会の予選や本選の様子は、立教大学経営学部のブログ「COB Today」に近々載ると思います。
(以上は日本評論社発行の『経済・金融メルマガ』でも配信しました。毎月一回発行の同メルマガのお申し込みはこちらからどうぞ。)
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コメント
経営学部ならでは、かつ時代にそった企画ですね。
将来「立教(経営学部or産業関係学科)卒」の優秀な人材が溢れるように、人財を先生方には発掘・育成していただきたいと思います。
投稿: でじ | 2006年7月21日 (金曜日) 01:25