怒濤の新学期(その2)〜メルマガ第51号
合宿で幕開けした基礎ゼミを一学期間に渡ってどう運営するかについても少々工夫しています。もともと基礎ゼミは、一年生にも語学以外に少人数教育をしたほうがいいだろう、しかし専門知識を教える段階ではないから、文献を読んで意見を発表するといった基礎的なことを教えたらいいだろうということで十年くらい前でしょうか、全国の多くの大学で始まったように記憶しています。しかし伝え聞くところによると、その評判は教師にも学生にもあまり芳しいものではないようです。
内容を教員の自由に任せると専門を薄めた概論の講義になりがちです。逆に内容を教員間で共通にしようとすると、もともとそれぞれの分野の専門家として日々過ごしてきた教員たち全員にとって教えやすい共通教材というのは見つけにくいでしょう。
そこで、教材を共通にするのではなく、アウトプットの形式を共通にしてコンテストを行うことにしました。20クラスある基礎ゼミからそれぞれ1つまたは2つ、「起業・事業計画の提案」または「書評」を出品して、7月の基礎ゼミ最終週に学年全体で報告会を行うのです。一学期間の基礎ゼミはその報告会を目指して行われます。もちろん、起業・事業計画の提案にしろ書評にしろ、日本語で話す・議論する・読む・書くことができないとまともなものはできませんから、その訓練も適宜行わねばなりません。そうした訓練は、三ヶ月後に発表会があるという締め切りがはっきりしているときのほうが身が入るのではないかと思います。(これはパソコンの使い方についてもほぼ同様でしょう)
なぜここに「書評」が入っているかいうと、出品物は各基礎ゼミの学生の話し合いと教員の助言で自由に決めるので、事業や起業の計画ではなく、本を輪読するという形式になることがあります。その場合でも読んで例えば感想を書くだけに終わってしまうと、そのクラス外の人に発表するのになじみにくいでしょう。そこで、内容を紹介しつつ批評する書評にすればよいだろうと考えたわけです。
最後にコンテストを持ってきたのは、教員と学生が一学期にわたって明白な目標を共有して過ごせるからです。さらに今年は、ミズーリ大学とデュケイン大学の両方から5月に約30名ずつの学生団が経営学部を訪問したので、英語で討論する日米学生会議や、各クラスで1名ないし2名の米国人学生を担当して1日都内を案内するホストファミリープログラムなどもあります。ちょっとイベントが多すぎるくらいですが、裏返せば、基礎ゼミ内でチームワークとリーダーシップを発揮してもらうきっかけが充分用意されているとも言えるでしょう。
いまちょうど学期半ばです。学期末までにどんな成果があがるか、またこうした基礎ゼミのプログラムが学生からはどんな評価を受けているのか、楽しみでもあり少し怖くもあります。
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