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2006年2月 8日 (水曜日)

ライブドア、エンロン、グーグル〜メルマガ47号

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●「虚偽」と「最低の企業統治」の間

ライブドアが粉飾決算や株式交換の偽装、その他証券取引法違反の疑いで家宅捜索を受けました。こうした容疑を捜査当局にかけられていることが明らかになった場合、公開会社の株価は回復不能な打撃を受けます。実際、ライブドアの株価は急落し、1月17日の一日だけでライブドアと子会社は全体で時価総額の15%を失ったと伝えられています。

ライブドアグループ上場7社、時価総額1530億円減

あまりの損に苛立った株主から出た噂でしょうか、耐震偽装問題をほじくられると困る政治家から検察に圧力がかかって、何か別の派手な捜査をせよ、と言われた検察がライブドアを狙ったという珍説があるくらいです。これほど投資家に損をさせてしまうのですから、当局は相当の覚悟をもって家宅捜査に踏み切ったはずです。粉飾の容疑が固まった場合、ライブドアの決算を監査した監査法人(会計事務所)にも捜査の手は伸びるかもしれません。

ライブドア事件の真相は捜査が進まなければ正確なことは分かりませんが、こうした偽装・粉飾事件は世界中で繰り返し起きています。経済学的には企業家と投資家の間の不完全情報問題の典型ですが、大きく分けると、ライブドアにかかっている容疑は(まだ裁判になっておらず、従って立証されていませんが)、有名なエンロン事件と同じように、投資家に対して正確に情報を開示しなかったという種類のものです。

それに対して、情報は開示するものの投資家に経営には介入させないという種類の距離の取り方もあります。それが米国のグーグルです。創業者2人の持っている株には、一株あたりで比較して、一般投資家の持っている株の10倍の投票権
がついていて、そのため2人の票数は全体の過半数を占めているといいます。

グーグル株、過熱の行方

経営が気にいらないものは経営に口を出すのでなく、早いところ株を手放してくれ、という、ある意味では一昔前の米国式です。グーグルのこの企業統治方式は、最近の潮流に対して真っ向から挑戦するもので、当初企業統治としては「最低」
の評価を受けていました。

「最低」の企業統治

しかし同社は最近、アナリストの予想を上回る業績が続いているために株価が急騰していていて、投資家の評判は上々のようです。エンロン(や、おそらくはライブドアも)のような粉飾・偽装による不完全情報とは違って、開示はするが介入はさせないというこの方式は良いものなのでしょうか?

業績が良いので不協和音が聞こえてこないですが、グーグルといえど、業績が停滞ないし悪化してくれば分かりません。過去一年半は次々に新しい事業のアイデアを出してはそれがヒットして高株価に結びついてきましたが、そういうことは
いつまでも続くものではありません。

そのときに、経営に介入はさせないという統治方式には、雇われ経営者の場合にも増して、都合の悪い情報は開示しないという誘惑が強いはずです。つまり株価が急落するような情報を正直に開示する動機が弱いことは否定できないでしょう。
そのときに正確に開示する・会社をたたんでしまう・売ってしまうといった行動がとれれば、凄い人たちということです。凡人というか、普通の意志の持ち主には難しいのではないかという気がします。

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