Knowledge is power.
"Knowledge is power."とは、高校生なら「知識は力なり」と習うところだろう。勉強すれば良いことがある、知識は自分の力になる、という意味である。ところが、これを「知ることは権力である」つまり「何かを知っていることは権力になる」「(他人より早く)知ることは権力の源である」という意味に読み替えると、にわかに別の意味を帯びてくる。
組織の中で、地位が上の者はさらに上から降りてくる情報を独占し、一部しか伝えない。また、下から上がってくる都合の悪い情報を握りつぶし抱え込んで上に上げないことにより上の評価を(短期的に)保とうとしたり、場合によっては良い情報を上げずに上に対して謀反を起こしたり脅迫する材料にする。これらはいずれもKnowledge is power.の例である。
ここからKnowledgeは諜報intelligenceや情報informationのことである、という方向に話をもっていくこともできる。しかし今日はその話ではない。90年代に、新興産業を中心に米国の大企業では"Knowledge is power."であるような組織は悪い組織であり、knowledgeは共有したうえでリーダーシップを発揮できるのが本当のリーダー、デジタル時代のリーダーだというのがバード博士の議論だった。
だとするとリーダーは知識を共有する方法をある程度知らなくてはいけない。そのインフラが無ければ整備するように関係方面に要求するなり、自分で作るなりしなくてはいけない。昔なら会議の数がやたら増えることになるが、会議とITとを上手に使い分ける方法を知らなくてはいけない。ITと言えば、メールと電話と会議をうまく使い分けろ、くらいは常識である。いまはメール洪水に対処するために広い意味のグループウェアが必須である。例えばwikiやintrablogのようなものや、もっと明快な目標があるときに使う電子ホワイトボードや、あるいは今まで遊びにしか使われてこなかったmessengerの職場での利用などである。
ところでBird博士によれば、こうしたデジタル時代のリーダーはhorizontal leaderとでも呼ばれるべきもので、従来の「命令系統chain of command」を前提とした上下のリーダーシップとは全く異なる。しかも問題ごとに別々のリーダーが出てくるのは自然なことということになる。問題を見つけ、自らそれを解決していけば、周囲がそれを認めてその分野のリーダーになれる、というのである。わが経営学部のBLPで涵養したいリーダーシップもこうした種類のリーダーシップである。いままでの意味の経営者を養成するというのとはかなり違う。
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