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2006年1月11日 (水曜日)

ベトナムでATMと米ドルを使う〜メルマガ46号

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【金融メールマガジン 第46号】

日向野幹也(立教大学経営学部開設準備室/
社会学部産業関係学科教授)
url: http://www.mhigano.com
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卒業旅行などで冬から春にかけて海外旅行に行く人が少なくないでしょう。先月ベトナムに行ったときに、米ドルのトラベラーズ・チェック(T/C)を持って行ったのですが、全然使いませんでした。それというのも、日本国内にある自分の普通の(円建て)預金から、ホーチミン市のATMで引き出せたからです。それも現地通貨(ドン)で出てくるのです。これは欧米では珍しくないサービスですが、こういったATMネットワークがベトナムのような国にもあるというのは驚きでした。需要があって、ネットワークが広がってきているのでしょう(「南君の金融日誌」では第13章で少しふれました)。


●トラベラーズ・チェックtraveller's check, T/C

10年前ならば日本から米国にある程度の期間にわたって旅行する人がT/Cを持って行くのは常識でした。初心者のための旅行ガイドなどには今でもそう書いてあります。しかし日米どちらでも使えるキャッシュカード(ATMカード)があれば今ではその必要はほとんどなさそうです。

90年代後半に米国ではATM増設ラッシュが起きて台数が増えましたし、その間に日本の銀行の方でも国際ATMネットワークであるCyrrusやPlusに対応するところが増えたからです。ただ、米国人はいまだに個人小切手を多用しており、国内旅行でも旅行小切手は依然として使われているようです。

欧州では、国によって内訳が異なりますが、小切手がますます使わなくなっている点はほぼ同様です。欧州大陸側はもともと米国よりも現金使用比率が高く小切手は米国ほどには使われていませんでしたし、英国でも小切手は急速に廃れて、(現金使用ではありませんが)キャッシュカードをデビットカードとしても使うことが普及してきました。これは前にも書いたことのあるスーパーマーケットでのデビットカード普及によるところ大です。

個人小切手personal checkと旅行小切手traveller's checkはもちろん別のものです。旅行小切手は前払いですから、銀行や受取り手から見て旅行小切手には(偽造されない限り)信用リスクはありません。個人小切手には信用リスクがあ
ります。しかし個人小切手があまり使われない国で旅行小切手だけはよく使われている、あるいはその逆という国は見あたらないように思いますので、両者の普及度にはゆるい相関関係あるいは因果関係があると言えるかもしれません。

また、欧州では小切手からカードへ、日本では現金からカードへと支払い習慣のシフトが起きている中で、米国ではいまだに小切手の使用率が高いのは、米国社会に根強い銀行不信のせいだと言われています。米国では、クレジットカードを使用した場合に毎月のレポートが来て、それに納得したら一枚小切手を書いて、小切手が銀行に回ってきたらそこでやっと引き落としが行われます。日本のように「これこれの期日までにご異議申し立てがなければ自動引き落としします」といったことは行われません。従ってクレジットカードが普及してもその最後の締めが小切手なので小切手使用枚数の減少には下限があることになります(仮に日々の支払い全てをクレジットカードで行ったとしても、毎月締めの日にはクレジットカードの枚数だけの小切手をカード会社に送ることになります)。


●ベトナムで流通する米ドル

米ドルのT/Cは使わなかったのですが、9月に米国に行ったときに余っていた米ドル現金を持って行ったら、ベトナム旅行中はどこでも使えました。日本で米ドル(であれ他の国の通貨であれ)が一般の店で通用するということはないですね?
 従ってどこの国でも起きるという現象ではあります。

外国通貨が流通する原因はいくつかあって、一つは国内通貨が(政権が不安定であるなどの理由で)あまり信用されていない場合。例えばソ連崩壊直後のロシアではルーブルよりドルの方が流通していました。もう一つは強大な隣国との貿易や人・資本の結びつきが強くて、隣国通貨で支払う場面が多いため、国内の取引でもその隣国の通貨が使われてしまう場合。例えば南米のいくつかの国はこれに当てはまります。カナダも、そしてベトナムもこれに近いと言えるでしょう。南米ではパナマのように国内通貨1単位(1バルボア)を1米ドルと互換と公定してしまった国もあります。カナダ人の中には自国内で米ドルがわがもの顔に流通するのを快く思っていない人もいるようです。ベトナム人でも事情は同じかもしれません。自国通貨の力が国内ですら弱いというのは、国民から見れば大変心細いというか、威信にかかわることなのでしょう。

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