日本金融学会での報告
5月29日に日本金融学会全国大会(於日本大学)で「小口金融における実店舗の役割」を発表しました。取りあえず会場で使ったPowerPointのファイルの大半をjpgファイルに直したものを載せます(数表で省いたものがありますが)。文章にしたものもいずれ載せる予定です(追記:文章版も本日載せました。こちらからどうぞ。2005年8月2日)。
.ppt版の後に、当日村本孜先生(成城大学教授)からいただいたコメントも載せました。
日本金融学会 2005年度春季大会 第2日B会場 セッション:金融機関
日向野報告(小口金融における実店舗の役割)へのコメント
成城大学 村本 孜
1.日向野報告は、UKにおけるスーパーマーケットの金融における実店舗の重要性を、Tescoの事例(当初、ハウスカードから debit-card に切り替えての成功(金融サービス(checking a/c なし。貯蓄性預金と住宅ローン、一部の保険の提供と本業の売上げ増)それによる支払手段の急速な変化と、ドイツのGeld Karte(JR Suicaと類似)の問題点を再充填の不便さが、動線を妨げる(新たな動線を強いる)ことからreload terminal必要性を整理した。さらに、ネットバンキングの問題を「煉瓦とモルタル」を比喩に、必ずしも顧客の信頼に繋がらないことを、実店舗がサンクコストの負担による消費者へのシグナル(信頼獲得)であること、煉瓦(店舗ないしネーム)は実在しなくても信頼の現われであり、まさに資本となることを示した。
金融のデリバリー・チャネルの多様化が、電子マネーやネットバンキングに代表的なように無店舗化やその機能変化をもたらすとの議論に対して、店舗がもつ重要性を従来の観点からではなく整理した点で新たな視点を示したものといえよう。
2.日向野報告は、金融サービス供給にける店舗ないしサービス拠点の配置の重要性を指摘したものであり、利便性と顧客の信頼という資本の重要性を再認識した点で優れたものである。
しかし、日本では近年の金融M&A(合併・統合など)が進行しており、店舗統合が進んでいる。1990年代のピーク時に比べて主要行では20%ほど店舗は減少し、都市部では35%ほどの減少が見られる。地域金融機関でも合併などから店舗の減少は著しく、全業態でも約10%の店舗減少が見られ、顧客にとって利便性の減少、アクセスポイントの減少などが生じているが、このような状況をいかに評価するか。
さらに、信頼という煉瓦をもつ既存の銀行のネットバンキングは、店舗(支店)に代替可能なのか、もし可能だとしてもそれでも店舗は必要なのか。主要行と地域金融機関では同じ効果なのか、といった論点はありうるか。さらに、ネットバンクの評価は、あくまで小口取引のみか、あるいはコンビニバンキングは、Tescoのようにコンビニの本業の売上増に繋がっているか。
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