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2005年5月12日 (木曜日)

ライブドアその後
金融メルマガ第38号(4月12日配信)

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【金融メールマガジン 第38号】

日向野幹也(立教大学経営学部開設準備室/
社会学部産業関係学科教授)
url: http://www.mhigano.com
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●ニッポン放送・フジテレビvs.ライブドア その後

前回配信の直後に東京高等裁判所の判断が出て、ニッポン放送のフジテレビ向け増資(毒薬)ができなくなりました。それで事態がぐっと進んでニッポン放送 株の過半数をライブドアが取得し、4月7日の報道によると、過半数株主としてライブドアはニッポン放送に(全部で20人のうち)11人の役員を送り込む 提案を行ったようです。

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050407AT2E0601D06042005.html

また、最新の報道では、ニッポン放送の亀淵社長は、買収を防げなかった責任をとって社長を辞める(任期が来て更新しない)ようです。

http://it.nikkei.co.jp/it/newssp/fuji_vs_livedoor.cfm?i=2005040910107ra

亀淵氏はかつてオールナイトニッポンという当時革新的な終夜DJだった人で、いまの50歳前後の人々にはファンも多いので、彼とライブドアの堀江社長を対比させて、新旧世代の対決・既成勢力と新興勢力の対決だ、などとも言われています。

これまでの報道では、こうした「対決」の面と、ライブドアとニッポン放送の攻防戦や、それに司法や法律がどうかかわるか、などが多くとりあげられてきま したが、見逃されがちなのは、今回舞台になっているのがもともと参入規制の厳重な放送産業であることです。

例えば
http://it.nikkei.co.jp/it/manage/foc.cfm?i=20050318t1000t1
の後半は多少この点にふれています。

放送業界の監督官庁である総務省は現存する放送局が買収されることは想定せずに免許制をとっていたので、間接的な出資を含めて外資規制をおこなうことを検討中のようです。

http://it.nikkei.co.jp/it/news/seisaku.cfm?i=2005033009836j2

しかしこれは外資規制であって、放送産業への参入規制そのものに関する議論ではありません。放送産業に参入するには免許が必要なので、既に参入済みの企業には超過利潤が発生しがちです。ライブドアはこの免許制を緩和せよと要求しているのではなくて、自分を入れろと言っているのです。経済学はなるべく免許制はしかずに自由にせよと議論することが多いのですが、この意味でライブドアを支持するのに経済学の自由競争の議論を使うことはできません。(ライブドアは自社が放送産業に参入した後、参入規制を撤廃せよと言うでしょうか?)

昨年10月にヤフーは自社への800MHzの携帯電話事業の免許を要求して却下されましたが、それと似た面があります。

http://it.nikkei.co.jp/it/newssp/cellphone.cfm?i=2005032910525zx

(ただしヤフーは最近作戦を変更して、今度は1.7GHz帯での実験局設置を申請しました。http://it.nikkei.co.jp/it/newssp/cellphone.cfm?i=2005040409943zx)

このように、ライブドアvs.ニッポン放送・フジテレビ には「競争vs.規制」という面よりも規制産業への新規参入の面が強いのですが、その参入手法が株式の買い付けであったこと、少し前にプロ野球にも参入しようとして失敗し一躍有名になったライブドアが今回の買収劇の主役であったことなどから大きな話題となり、「日本にも本格的M&A時代到来か」と受け取られています。しかし、M&Aそのものであれば約一年前におきたソトー社の買い付け(米国系ファンドによる)のほうが典型的と言えるでしょう。

●立教大学へ

既にお知らせしたように、4月1日から立教大学に移籍しました。2006年4月に発足する経営学部
経営学部の開設準備のために一年前から着任です。今年は4月上旬に急に気温が上がり花粉が爆発的に飛散するとともに桜がいっぺんに開花しました。小さなキャンパスなのですが桜は綺麗
です。

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