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【金融メールマガジン 第36号】
日向野幹也(東京都立大学経済学部教授)
url: http://www.mhigano.com
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(1)ライブドアのニッポン放送株取得
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050213AT3K1301413022005.html
http://it.nikkei.co.jp/it/news/keiei.cfm?i=2005020912020j4
もともと、ライブドア以前に、フジテレビとニッポン放送は株を持ち合っていて、企業規模からすれば小さなニッポン放送の方が持株比率で高く持っていたため、そうした逆転現象を解消しフジテレビが親会社になるためにニッポン放送株を買い集めていました。
そこへ業界外から急にライブドアがニッポン放送株を買い始め(おそらく外国投資家から買って)たちまち全株式の三分の一超を取得してしまったために、ライブドアがニッポン放送を通じてフジテレビの経営に影響力を持つ可能性が出てきました。三分の一を持つと(三分の二が必要な)重要議題について拒否権を持つことになるので、経営への影響力は一気に高まります(『南君の金融日誌』第8章)。
これを嫌うフジテレビも対抗策を出しました。ニッポン放送の全株取得は当面あきらめて、ライブドアに経営介入されるのを防ぐことに重点を移して、取りあえず25%を取得するというのです。この点は『南君』には書いていませんが、25%取得すれば、ニッポン放送が株主としてフジテレビに対して議決権を行使することができなくなる(商法の規定)からです。
http://it.nikkei.co.jp/it/news/keiei.cfm?i=2005021010062j4
これに対してライブドアも、ニッポン放送が増資すればいつになってもフジテレビはニッポン放送株の25%に到達できないはずだと牽制しています。ライブドア側は既に800億円とも言われる金額を株式取得に使っており、またニッポン放送株が少数の株主に集中すれば(西武鉄道の時と同じように東証の規定により)上場廃止になるので、取得した株式の値下がりが予想されます。そうなれば(フジテレビか誰かがライブドアからニッポン放送株を高値で引き取ることにならない限り)株価については損になる可能性があって、それを覚悟で買収を強行するかどうか、瀬戸際に来ています。
ライブドアの堀江社長は、フジテレビの反撃は予想の範囲内だし、上場廃止の危険も最初から考慮済みのことだと強気の発言を繰り返していますが、これは、フジテレビとニッポン放送の株主たちへのメッセージでもあると受け取れるでしょう。株主・投資家の指示があればいくらフジテレビの経営陣がライブドアを嫌いでも抵抗しづらくなるからです。株主の支持は、買収完了までにどのくらい時間がかかりそうかにも依存しそうで、それはもう一人の大株主らしい村上ファンドがニッポン放送株を売るかどうかにかなり左右されると言われています。この原稿が脱稿してから配信されるまでの間にも事
態が大きく動くかもしれませんし、逆に買収完了まで長い時間がかかるかもしれません。
ではライブドアがこの買収で何を狙っているかというと、(高値で転売する可能性を別とすると)、放送業界への進出と、それに続くインターネットとの融合ではないかと思われます。通信と放送は永らく行政が別々に行われてきて、通信の方は最近10年ですごく競争的になりましたが、放送はまだまだです。インターネットは技術的には放送と融合しうるものですが、放送業界はそれを嫌っています。フジテレビのライブドアに対する強い警戒もその辺に根ざしているように思えます。
(2)三井住友銀行と大和証券の経営統合
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt89/20050210AS1F1000310022005.html
この報道をめぐって、財界や政府閣僚は一応歓迎のコメントを出したものの、肝心の両社自身は「具体的には何も決まっていない」ような否定的にも思えるコメントを出したかと思うと、トップが「いや実は問題意識は共有しているのだ」と認めるような会見を行ったりして、実際にはどう統合していくかはこれからの協議次第のようです。
大型合併は事前に漏れると破談になると永らく言われてきましたが、今回はどうなのでしょうか。合併・商談に反対する勢力が反対の策動を行う時間を得てしまう、というのが過去の破談の原因であったとしたら、今回の場合は誰も反対しないということでしょうか。
記者会見で三井住友の西川善文社長は、「リテール(個人業務)も含めて一層強くしていかなければならないという課題は共有している」と言っているそうです。
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt89/20050210AS1F1000D10022005.html
これは例えば、銀行の窓口に行ったら株も買えるということを念頭においているのでしょうか。株を売買する個人は今でもネットを使うことが多いので、それなら大した利便でもないように思えます。銀行・証券の人たちは「ワンストップ」(『南君』第13章)がお好きですが、一回のストップで買えるものが金融・証券・保険などではさほど魅力がないのでは? つまり個人から資金を預かろう・吸収しようという方向のワンストップではなく、毎日のように寄る食料品店の店頭でデビットカードを有利に・広範囲に使えるようになるといったように、単に預かり資金を増やすだけでない統合効果があれば、
喜ばれるような気がします。