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2005年3月の3件の記事

2005年3月27日 (日曜日)

さらば都立大

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25日は都立大の卒業式でした。4月からはここが首都大学東京のキャンパス(の一つ)になり、都立大は実質的に解体を始めます(夜間部を含めて新2年生が卒業する4年後に完全消滅します)。1983年4月以来、目黒キャンパスで8年間、そして南大沢キャンパスで14年間、気持ちよく働かせてもらいました。優秀な教職員、地味ではあるけれども概ね素直でまじめな学生、それに美しいキャンパス。大好きな職場で、できればもっと長く勤めたかったのですが、都庁の新大学構想と、われわれ経済学COEグループの考えのズレがあまりに大きかった(知事の記者会見の模様はこちら)ため、転出を決意せざるを得ませんでした。同グループ14人のうち11人がこの三月末で辞めます。月末には都内のイタリア料理店でCOEグループの解散記念パーティです。

2月に行われたゼミ生と卒業生たちの会合では、3月に卒業するゼミ生がパーティ用品屋さんで仕入れてきたらしい角帽と黒マント(ガウン?)を僕に着せて、「先生も私たちと一緒に卒業しましょう」と、僕に都立大の卒業免状を授与するという、泣かせる鼻向けをしてくれました。ところが別個にある卒業生が買ってきたMr. Incredibleのゴーグル(?)も同時に装着するになったため、泣けるというか笑えるというか、辛うじて泣かずに済みました。

縁あって4月には立教大学に移籍し、2006年4月に新設される経営学部の出発をお手伝いすることになりました。都立大で特にここ十年ほどいろいろと試行錯誤して何とか方向性が見えてきた「最も広い意味でのcommunication能力を涵養する」ような教育を、今度は立教大学経営学部で試してみたいと思っています。


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2005年3月12日 (土曜日)

ライブドアとニッポン放送/三井住友と大和証券
金融メルマガ第36号(2月15日配信)

以下のメルマガ本文中には日経新聞の記事データベースへのlinkがあります。しかし、新聞の発行日から約3ヶ月で新聞記事自体が日経のサーバから削除されるため、link切れになると予想されます。予めご承知ください。

このメルマガは現在も毎月配信されており、ここには約一ヶ月遅れで再録されます。

メルマガのお申し込みはこちらからどうぞ。

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【金融メールマガジン 第36号】

日向野幹也(東京都立大学経済学部教授)
url: http://www.mhigano.com
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(1)ライブドアのニッポン放送株取得

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050213AT3K1301413022005.html
http://it.nikkei.co.jp/it/news/keiei.cfm?i=2005020912020j4

もともと、ライブドア以前に、フジテレビとニッポン放送は株を持ち合っていて、企業規模からすれば小さなニッポン放送の方が持株比率で高く持っていたため、そうした逆転現象を解消しフジテレビが親会社になるためにニッポン放送株を買い集めていました。

そこへ業界外から急にライブドアがニッポン放送株を買い始め(おそらく外国投資家から買って)たちまち全株式の三分の一超を取得してしまったために、ライブドアがニッポン放送を通じてフジテレビの経営に影響力を持つ可能性が出てきました。三分の一を持つと(三分の二が必要な)重要議題について拒否権を持つことになるので、経営への影響力は一気に高まります(『南君の金融日誌』第8章)。

これを嫌うフジテレビも対抗策を出しました。ニッポン放送の全株取得は当面あきらめて、ライブドアに経営介入されるのを防ぐことに重点を移して、取りあえず25%を取得するというのです。この点は『南君』には書いていませんが、25%取得すれば、ニッポン放送が株主としてフジテレビに対して議決権を行使することができなくなる(商法の規定)からです。

http://it.nikkei.co.jp/it/news/keiei.cfm?i=2005021010062j4

これに対してライブドアも、ニッポン放送が増資すればいつになってもフジテレビはニッポン放送株の25%に到達できないはずだと牽制しています。ライブドア側は既に800億円とも言われる金額を株式取得に使っており、またニッポン放送株が少数の株主に集中すれば(西武鉄道の時と同じように東証の規定により)上場廃止になるので、取得した株式の値下がりが予想されます。そうなれば(フジテレビか誰かがライブドアからニッポン放送株を高値で引き取ることにならない限り)株価については損になる可能性があって、それを覚悟で買収を強行するかどうか、瀬戸際に来ています。

ライブドアの堀江社長は、フジテレビの反撃は予想の範囲内だし、上場廃止の危険も最初から考慮済みのことだと強気の発言を繰り返していますが、これは、フジテレビとニッポン放送の株主たちへのメッセージでもあると受け取れるでしょう。株主・投資家の指示があればいくらフジテレビの経営陣がライブドアを嫌いでも抵抗しづらくなるからです。株主の支持は、買収完了までにどのくらい時間がかかりそうかにも依存しそうで、それはもう一人の大株主らしい村上ファンドがニッポン放送株を売るかどうかにかなり左右されると言われています。この原稿が脱稿してから配信されるまでの間にも事
態が大きく動くかもしれませんし、逆に買収完了まで長い時間がかかるかもしれません。

ではライブドアがこの買収で何を狙っているかというと、(高値で転売する可能性を別とすると)、放送業界への進出と、それに続くインターネットとの融合ではないかと思われます。通信と放送は永らく行政が別々に行われてきて、通信の方は最近10年ですごく競争的になりましたが、放送はまだまだです。インターネットは技術的には放送と融合しうるものですが、放送業界はそれを嫌っています。フジテレビのライブドアに対する強い警戒もその辺に根ざしているように思えます。

(2)三井住友銀行と大和証券の経営統合

http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt89/20050210AS1F1000310022005.html

この報道をめぐって、財界や政府閣僚は一応歓迎のコメントを出したものの、肝心の両社自身は「具体的には何も決まっていない」ような否定的にも思えるコメントを出したかと思うと、トップが「いや実は問題意識は共有しているのだ」と認めるような会見を行ったりして、実際にはどう統合していくかはこれからの協議次第のようです。

大型合併は事前に漏れると破談になると永らく言われてきましたが、今回はどうなのでしょうか。合併・商談に反対する勢力が反対の策動を行う時間を得てしまう、というのが過去の破談の原因であったとしたら、今回の場合は誰も反対しないということでしょうか。

記者会見で三井住友の西川善文社長は、「リテール(個人業務)も含めて一層強くしていかなければならないという課題は共有している」と言っているそうです。

http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt89/20050210AS1F1000D10022005.html

これは例えば、銀行の窓口に行ったら株も買えるということを念頭においているのでしょうか。株を売買する個人は今でもネットを使うことが多いので、それなら大した利便でもないように思えます。銀行・証券の人たちは「ワンストップ」(『南君』第13章)がお好きですが、一回のストップで買えるものが金融・証券・保険などではさほど魅力がないのでは? つまり個人から資金を預かろう・吸収しようという方向のワンストップではなく、毎日のように寄る食料品店の店頭でデビットカードを有利に・広範囲に使えるようになるといったように、単に預かり資金を増やすだけでない統合効果があれば、
喜ばれるような気がします。

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もう英語のカタカナ表記はやめたい(その4)

英語への入門としてカタカナ表記が良いというのは全く間違っていることはもうお気づきと思います。

カタカナ表記をやめて英語そのものを書くようにすると、今までカタカナ表記をしていたところが英語に置き換わるだけではなくて、いろいろな副作用が出てきます。

良い副作用の第一として、

(1)縦書き表記には英語は合わないので、カタカナ表記英語を減らして、可能な限り日本語でいいかえるようになる

それから、
(2)やむを得ず残った英語についても、今までカタカナで憶えていたので綴りや発音があいまいだったのが、辞書などで確認してから書くようになる。

(3)単に新しげな響きがほしくてカタカナ表記を濫用していた官庁作文が変わる

どうです? 良いことが多いですよね? 

ただ、負の副作用として、

(4)日本語の文章の中に英語を混ぜて書くと、キザな奴だと思われる

これは、英語カタカナ表記全廃運動の大きな障害となります。キザな奴と思われたくなければなるべく日本語に言い換えようとするでしょうから(1)と同じ効果もあります。ですが、どうしても対応する日本語がない場合(そしてそういう場合だけ英語を使うようにしていこうというもこの運動のめざすところです)というのは残るでしょう。

ここはぜひ国語審議会あたりに思い切って「英語のカタカナ表記は極力避けるものとする。例外はコレとコレ」などと定めてほしいところです。なんで急に政府が出てくるんだ?お上に頼るのは良くないのではないか?とうぶかしむ方もあるかもしれません。しかし自国語をどうするかというのは多くの国で重大な政策問題で、時には選挙の争点にすらなるくらい白熱しうる問題なのです。英語上達の最も重大な障害の一つを解消し、同時に日本語の伝統を守るために、英語のカタカナ表記全廃政策を真剣に検討してほしいと考える次第です。

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