ローマの食堂
一年遅れの欧州出張記・特別篇、三番目はイタリアです
●リストランテとトラットリア
美味くて安い食事処をどう見つけるか、これはいつでもどこでも面白く難しい問題ですが、今回の経験からまた思い知らされたのは、「活字媒体に載ったらもうその店はダメ」ということです。『地球の歩き方』はもちろん最初から駄目ですが、Lonely Planetでも大同小異(もともとLPの食事処案内は価格偏重ですし)、ミシュランになんぞ載ったら価格が上がるか又は予約の列ができるのは必定です。
そこで手近な方法としては宿のフロントに尋ねることです。ただしこれにも落とし穴があって、木賃宿だと食事処案内も価格偏重になりがちです。泊まるだけなら一つ星とか星無しとかも僕は経験あるし短期間なら平気ですが、美味しい店の情報源としてのホテルならば、イタリアの場合まあ三つ星以上かなという気がします。逆に三つ星以上でも大型ホテルになってくると団体客も大勢いて、とにかく既に定評のある無難なところを紹介することになりがちかもしれません。三つ星か四つ星の小さなホテルで、食いしん坊そうなフロントの人に尋ねると吉、といったところでしょうか。
ローマでは最初2,3軒、活字に載っているところに行って全然ダメで、次に最初の宿(三つ星)の人が教えてくれたところに行ってまずまずで、その後自分の勘で数軒試したら悪くはないけど高めだったり不味かったりしました。そこで紹介されたもとのところに戻ったら店主が憶えていてくれてメニューに載ってないものとか出てくるようになりました。この店は気に入ってしまって、結局ローマ滞在後半の夕食はいつもそこでした(・・・という情報をどこか活字媒体に投稿して採用されるともうそれでアウトですね)。
慣れてきたので、店に入ると店主におおげさに声をかけ、椅子を確保したら奥の前菜置き場に見にいく。このクラスの安食堂では前菜は作り置きです。指さしてあれとこれ、それに炭酸のボトル、と頼みます(ボトルで通じなかったらボテッラとかボトッラとか言っているうちに通じる・・わはは)。前菜は野菜やキノコをふんだんに使ったものが多く楽しめました。次にパスタを食べるかどうかは腹の空き具合次第。スキップして肉か魚のメインディッシュに行くもよし、パスタだけ食べて打ち止めにするも良し。しかしパスタを食べてさらに肉と魚両方というのはさすがの僕でも無理でした・・・
前菜かメインディッシュに合わせてワインも頼む。ワインも炭酸もボトルで頼むので、いつも帰りは両手にワインと炭酸の大瓶を下げて酩酊で帰還でした。
炭酸は高速道路のサービスエリアみたいなところでAcquaと言ったらそれが出てきて、飲んでみると微炭酸。これが車内でぬるくなっても真水より美味しく飲めるので気に入ったのですが、今回はワインの合間に飲むと具合がいいのも再認識。日本のイタリアレストランでもデフォルトで置いてあるといいですね。普通の水だとガボガボになってしまいますが、微炭酸だと不思議にけっこう飲めてアルコール分解を促進し体にもいいはずです。(うるさいこと言えば、ペリエは炭酸がきつすぎて、食事の味を邪魔する気がします)
僕も食いしん坊なのを分かってくれたか、ドルチェとエスプレッソはおごってくれたりしました。明日は日本へ帰るという日は、頼まないのにいきなり肉系と魚系のスパゲティ2皿が出てきて、その後のメインディッシュに辿り着くのが大変でした。
●味の力強さ
この店で特に感じたのは、イタリア料理の味の力強さです。日本料理や日本のイタリア料理店の一部のような微妙なバランスとか舌触りとかではなく、例えば上質なオリーブオイルとガーリックとちょっぴりの赤唐辛子を基本にして、力強いというのか、夏でげんなりしているとき(というのは僕にはほとんどないので、二日酔いのときですかね)でも食欲をかきたてそうな味というか、本能に訴える力があります。日本の自称イタリア料理通なら「ちょっとこのスパゲティはゆですぎ」とか「太すぎ」とかうるさいこと言いそうですが、そういうことは本質的でないことを思い知らせてくれる、そんなパワーです。日本の中高級イタリア料理店でそういうパワーを感じたことがないのはどうしてなんでしょう。日本人の味覚に合わせて繊細さを重視しているからでしょうか。
●オーリオ
オリーブオイルをイタリア語ではオーリオと言うそうですが、テーブルに醤油のように置いてあるオーリオを手のひらにとって直接なめてみてびっくり。全然油っぽくなく、青い果実の香りと味がします。日本のスーパーでExtra Virgin Olive Oilと称して売っているものとは全然違います(よく探せば日本にもそういうのもあるんでしょうか。念のため今回現地で3缶買ってきました。重い重い)。逆に、炒めたり揚げたりするには油分が足りなさそうなので、料理用と食卓用は別のオイルを使っているのかもしれません。
白身の魚を焼いたものが出てきたときに、テーブル横で皮を剥いでしまうのですが、そのまま食べると「なぜ皮を剥いだんだよ」というくらい淡泊すぎる味になってしまいました。でもオリーブオイルをかけると良い具合です。
帰国して、秋のオーリオ収穫期に個人輸入しました。
●Pizzeria
87年にローマに行ったときよりも今回pizzeriaを多く目にするような気がしていたら、どうやらそれは事実らしいです。87年は、日本人がよく泊まる大きなホテルだったので日本人団体旅行者も多く、その人たち向けなのか、フロントに大きく「ピザ屋は夜だけです」とヘタな手書きの日本語で張り紙がしてあったりしました。
その頃はローマの人たちの中でも、昼にワインvinoも飲み大量に食べて、昼寝して、午後3時頃から仕事に戻り8時か9時まで働いて、夕食は軽くピザあたりを食べるというスタイルの人がかなり多かったのではないかと思います。実際、当時昼飯時に大衆食堂風のところに入ると、頼みもしないのに最初にワインが出てくるという経験も何度かしました。それなのに、当時は昼間にピザを食べたいという日本人観光客が多くて店を紹介できなくて困ったのでピザを食べたいなら夜ですよ、という張り紙をしたのではないでしょうか。
ところが今回はそういう経験はなく、周りの人にも昼間からワインを飲んでいる人は(いなくはないけど)少なくて、飲むならば夜という人が増えた気がします(ローマでも他でも平日はそうでした)。そうすると昔は主に夜食用だったピザを昼飯に食べる需要も出てくるからピッツェリアが増えたんでしょうか。ホテル近くのコインロンドリーの職員たちも近所からピザを買ってきてランチしてました。看板にピッツェリアと併記したリストランテも多い気がします。
テイクアウトの店も実に多く、特にチェーン系ではないところは個性があって面白いです。生地が厚いのと薄いのというバリエーションもあります。上に載っているものもさまざまですが、僕が急ぎの昼飯用に気に入っていたのは、トマトと緑のバジルやルッコラがたっぷり乗っていて、イタリア国旗のような色になっているピザです。
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