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2004年8月22日 (日曜日)

デビットカードの日米英独比較

ドイツの消費者の支払い習慣についていろいろ聞き出していくうちに、ゲルトカルテよりもドイツでのデビットカードの普及過程の方が面白く思えてきました。

というのは、ドイツではもともと英米と違って現金の比重が高かったのですが、デビットカードはまず個人小切手を銀行が保証するためのIDカードとして普及したのです。(なお以下の話のうちドイツに関する部分はまだ文献での確認は行っていません)(下に続く)

そして、80年代に小切手を介さずにデビットカードとサインだけで直接引き落としてしまうサービスを行なう代行業者が現われました。銀行はこれを安全性の面で問題があると言って歓迎せず、といって代わりに同等に便利な方法を提供できたわけではありませんでした。代行業者がミスして憶えのない請求がきた場合には、6週間以内なら訂正要求をできるのですが、訂正要求をすると、その口座は銀行のブラックリストに載ってしまい、クレジットカードも停められてしまう扱いを受けたそうです。

90年代末になってようやくICチップ入りデビットカードを使って安全迅速なデビットができるようになり、小売店の店頭でも誰もがデビットカードを使うようになりました。迅速というのは、カードに載っている金色のICチップと店頭の読み取り機がローカルに通信するだけで認証が済み、いちいちセンターに問い合わせなくてよくなったからです。いまでは地下鉄の自動販売機にもデビットカード(つまり銀行のキャッシュカード)を入れるスロットがあります。

英米では小切手の比重が高く銀行の小切手取り扱いコストがかさんでいたために、デビットカードを導入することでこのコストを節約したいという銀行側の動機が強かったのですが、ドイツは英米と対照的です。

日本と比べるとどうでしょうか? そもそも個人小切手が普及していないので、取り扱いコストのかさむ小切手代替物にしたいという銀行側のニーズ(英米)も、小切手の保証IDとしての銀行側のニーズ(初期ドイツ)も日本にはありません。

消費者の方にも、クレジットカードがあるのにわざわざデビットカードを使う人といえば、クレジットだと使いすぎてしまうという自戒のためのニーズしかないと言って過言ではありません。しかしデビットだと預金残高をまるごと瞬時に不正に使われてしまうのではないかという不安も拭えません。

これまでの日本で最もデビットカード導入に熱心なのは、数千円から数万円までの買い物の多いカメラ屋系量販店など一部流通業者です。現状ではデビットカードの方がクレジットカードよりも取り扱い手数料より安いためポイントも多くして顧客を勧誘しています。

他方、銀行側は銀行側で、ICチップの搭載を機に、クレジットカードとデビットカードを1枚に統合しつつあります(その速度は銀行系クレジットカード会社と銀行本体の統合問題にも依存しているかもしれません)。そうなると消費者は店頭で「即金」を選べばデビット、後払いを選べばクレジット、というように一枚のカードでクレジットとデビットをシームレスに使い分けられるようになるでしょう。しかしそれでもデビットを不正使用されてしまう不安がある点は別途対策が必要になります。

また、ここに電子マネーが入り込む余地があるのかどうか、疑問のあるところです。元来匿名性を売りの一つにしている電子マネーが、匿名でないデビット・クレジットカードと同じカードに同居していて、「そこは匿名ですから安心して使ってください」と言われてもユーザは信じるでしょうか? それなら小銭を使うのではないでしょうか? (まして電子マネーを使うために行列するなど論外です)

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