« 芝生でビール | トップページ | イタリア携帯電話事情管見 »

2004年8月18日 (水曜日)

金融メルマガ第30号

元の記事の中には各ニュースごとに日本経済新聞の抄録のurlが書いてあったのですが、時間が経ってlinkが切れてしまったので省略してあります。このメルマガは現在も毎月発行されています。申し込みはこちらからどうぞ。(2005年1月追記)

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
【金融メールマガジン 第30号】

日向野幹也(東京都立大学経済学部教授)
url: http://www.ann.hi-ho.ne.jp/higano
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

お盆のためちょっと配信を遅らせました。

まずお知らせです。

●Blog『続・南君の金融日誌』開始
http://blog.goo.ne.jp/mhigano

『南君の金融日誌』は、プチエコーが大企業になった夢のところで終わってしまって、実際に大企業にはなっていません。従って大企業特有の現象(例えば今回のUFJ銀行をめぐる買収合戦)もあまり扱っていませんし、海外進出もしていませ
ん。他にも新しいことが次々に起きているので、それをカバーすべく続篇を書く計画があります。雑誌やメルマガに連載してから本にするつもりなのですが、その準備として、最近半年で仕入れたネタを短いメモにしたものを書きためておく
ことにしました。その方法として、最近爆発的に普及しているBlogを使ってみることにします。匿名でのコメントやトラックバック(逆リンクみたいなもの)もできますので、気軽に読み書きしてください。

http://blog.goo.ne.jp/mhigano

さて、今回はニュースも盛りだくさんです。なんと言ってもインパクトが大きかったのがUFJ銀行の合併合戦でしょう。

●UFJ銀行の買収

これについては多くの報道があるのですが、あまり大きくは書かれていない割には見逃してはならないポイントをさらっておきます。

(1)不良債権処理が遅いとたびたび金融庁から注意を受けたUFJの株価が下がっていた
(2)不良債権を別とすれば、UFJの支店網・スタッフ・顧客層(特にリテール)は競争力を持っていると評価されていた
(3)自前で新しくそうした店舗・スタッフ・リテールの顧客を築き上げるよりも、割安ならばまるごと買ってしまって自陣に加えようと考えるライバルが複数いた

(3)の「ライバル」が国内では東京三菱と三井住友であり、海外ではシティが狙っていたと言われています。UFJの現経営陣は東京三菱との合併を望んでいましたが、株主の意向を重視していなかったので、そこを突いて、高く買い取って株主
に報いる用意があると宣言したのが三井住友の作戦です。三井住友の作戦はこれまでのところUFJ経営陣の意向と裁判所の判断に阻まれて成功していませんが、株主に支持を訴えたという意味では画期的です。東京三菱は慌てて買収にかける費用を上積みすることを発表しました。つまり、

(4)二人(二社)以上が競う大型買収について、買い手・売り手経営陣が売り手企業の株主の意向を気にせざるを得なかった点で画期的

もう一つ、

(5)合併交渉に対して、リアルタイムで裁判所の判断が重大な影響を与えた

この点も今までの日本には見られなかったことです。過去の大型合併については独占禁止法に違反するかどうかについて公正取引委員会の動きが注目された(もし告発すれば裁判所が動く)ことがありますが、独禁法のような公共政策的な問題ではなく、私企業同士の契約内容に踏み込んだ判断でした。

つまり、問題となったのは独占禁止法ではなく、UFJと住友信託銀行が、UFJ信託の買収交渉の独占契約をしていたのに、東京三菱とUFJは信託部門を含めて合併交渉をしているのは契約違反であるとして、住友信託側が東京地裁に訴えたのです。目下、東京高裁は既にもう独占契約の基礎は失われたと判断して、東京三菱に事実上のGOを出しています。住友信託はおさまらず、最高裁に判断を求めており、近日中に結論が出るでしょう。住友信託社長は高裁に対して怒りのコメントを発表しています。

http://headlines.yahoo

●会社法制の大幅変更

株式会社と有限会社の共通点は有限責任制度で、違いは最初の最低資本金額と、発足してからの出資分の譲渡が自由にできるかどうかでした(南君の金融日誌、第4章と第8章)。ところが、最低資本金の額は株式会社であっても当初は1円
でいい、というように規制が緩和され、それが相当の起業促進効果を持つと見られることから、最低資本金規制は廃止することになりそうです。

1円起業の効果
http://www.nikke
http://it.nikkei.
http://www.nikkei

さらに、有限会社を制度として残しておく意味が少なくなったので、新しくできる会社については有限会社をメニューから外してしまうことになりました。

有限会社制度の廃止
http://www.nikkei

そして、有限会社そのものの代わりではないのですが、有限・株式会社のいずれよりも自由度の高い会社制度として「合同会社」を加えることもほぼ決まりそうです。

合同会社制度の創設
http://bizplus.nikkei

記事の中にもあるように、この制度はアメリカのLLC (limited Liability Company) 制度が手本で、出資額と発言権が比例しないような取り決めをしてもよいことになっており、経営に専念する人と主に出資だけする人の分業を積極的
に許容する効果があります。所有(出資)と経営の事実上の分離は永らく株式会社制度の問題点と言われてきましたが、この合同会社やLLCの制度の着想は、分離したら困ると株主が思っているならともかく、分離して構わないと株主が思っ
ているならわざわざ分離しないように法律で縛ることもないのではないか、その方が起業も促進されるのではないか、ということでしょう。

以上は会社を作るときの制度の話でしたが、会社を終わらせる時の「破産法」も90年ぶりの大改正が近いようです。法律の話が続きましたので、これについてはまた別の機会に。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

|

« 芝生でビール | トップページ | イタリア携帯電話事情管見 »

10. 南君の金融日誌」カテゴリの記事

04. 金融とgovernance」カテゴリの記事

11. Mail magazine」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 金融メルマガ第30号:

» メルマガの効果 [ネットビジネスの原理原則が分かる「優良」e-bookレビュー]
メルマガを発行する理由はビジネスでいえば成約率が上がるからです。 [続きを読む]

受信: 2007年5月28日 (月曜日) 20:58

« 芝生でビール | トップページ | イタリア携帯電話事情管見 »