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2004年2月の1件の記事

2004年2月13日 (金曜日)

金融メルマガ第24号

元の記事の中には各ニュースごとに日本経済新聞の抄録のurlが書いてあったのですが、時間が経ってlinkが切れてしまったので省略してあります。このメルマガは現在も毎月発行されています。申し込みはこちらからどうぞ。(2005年1月追記)

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【金融メールマガジン 第24号】

日向野幹也(東京都立大学経済学部教授)
url: http://www.ann.hi-ho.ne.jp/higano
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●今月はソトーとカネボウ化粧品部門の買収合戦を見てみましょう。この二つの買収合戦の共通点は、買い手の候補者が2人(2グループ)以上居て競っていることです。違いはいろいろありますが、最も大きいのはソトーは会社まるごとであ
るのに対してカネボウは化粧品部門だけの営業譲渡だという点です。ちょうど南君が大沢庵を手放すときに、大沢庵を営業したままで売る営業譲渡の形にして、しかも会社としてのプチエコーは存続した(第5章)のと同じです。カネボウは会社としては存続して、化粧品部門だけを売ろうとしているわけです。

当初、カネボウと花王の共同出資で別会社を作ることで化粧品事業を統合しようとしたのですが、営業譲渡に方針を変更したとも報じられています。

http://www3.nikkei.co.jp

共同出資は南君と堀之内さんがプチエコーを作ったときとだいたい同じです(第4章)。実現はしなかったものの、もしこのカネボウと花王の作る会社なら有限ではなく株式会社になるでしょうけど。

●さて、花王が営業譲渡を交渉しているときに、横合いから投資ファンドのユニゾンキャピタルが出てきて、営業譲渡ではなく共同出資で会社を作ろうという商談を出してきました。花王の最初の案に近いことになりますが、これはカネボウの現経営陣がヨリ受け入れやすいのではないかという読みかもしれません。

http://www3.nikkei.co.jp/

投資ファンドや買収ファンドについては『南君の金融日誌』144-145ペー
ジを見てください。

次にソトーの方ですが、

http://www3.nikkei.co.jp/

毛織物染色加工のソトーに対しては投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドと大和証券グループのエヌ・アイ・エフベンチャーズ(NIF)とが買収合戦を展開しています。上場会社に対してこういったオープンな買収合戦(TOB合戦)が起きるのは日本では初めてのことです。TOBは南君の本ではほとんど説明していません
が、買う人が流通市場で株を買っていくのではなくて、いわば取引所の外で、新聞などで株主に売ってくださいと呼びかけて買う制度です。このソトーの買収合戦については、NIF側は現経営陣と共同しているので、MBO(management buyout)提案でもあることも注目されます。つまり現経営陣側と外部の投資ファンド(買収ファンド)側がこの企業を我が物にしようと値を競っているわけです。(ということはもともと経営陣はいわゆる雇われ経営者だったわけで、それがオーナー経営者になろうとしていることです。103ページ参照)

また、別の記事によるとソトー現経営陣がMBOに成功したら非公開会社にすることを考えているようです。第11章で紹介した「ウォール街」の主人公も南君も、それからつぼ八(128ページ)も上場をめざしていたのですが、上場(公開)は究極の到達点ではないということです。従業員が、意識せずに自社株のインサイダー取引(第10-12章、数カ所)を行なってしま
うリスクも、上場を嫌気する原因の一つになりえます(148ページ)。

TOBやMBOはますます増えそうなので、南君の本の改訂版や続篇を書く機会があれば詳しく取り上げたいと思います。それにはストーリーをどう持って行けばいいんでしょうね<笑>。どなたかアイデアがあったら教えてください。

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