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2002年10月の3件の記事

2002年10月30日 (水曜日)

2002年度Internship

2002年夏休みに小林義人さん・久冨和子さん(株式会社オーディーエス)と、テンキーラビットシステム(株)の宮田由美子社長が、ゼミ生をインターンとして受け入れてくださることになりました。まずはリラックスした雰囲気でインターン志願者と面談しよう、と宮田さんと久冨さんが、わざわざゼミ合宿まで来てくださったのには驚き、そして大変感謝しています。インターンになった学生たち(テンキーラビットシステムへは近藤侑子さん・伊達博子さん・川北智憲君・佐山奈津子さん、ODSへ大森重生君)は、アルバイトとも就職活動とも全然違う新鮮な毎日を過ごしているようです。フルタイムで働き始める前に企業や社会を知る場として、インターンシップはたいへん有意義な経験であろうと思います。近い将来に日本の大学生についても、在学中は勉強と両立するような形で種々のインターンシップに参加し、そして卒業後に本格的な就職活動を行う、というふうになっていくことを念願しています。(日向野幹也、2002年8月)

http://www.mhigano.com/blog/UploadedFiles/kudomi1.jpg

「それではあなたはどうしたいと思いますか」現在働いている環境でよく交わされる文章のひとつです。所属や肩書き、経歴には全く関係なく求めらます。「こうしたい」と発言するには、協力者も含めた自分自身の力量とそれに巻き込む相手(顧客やアライアンスパートナ)の対応予定など先を読めることが前提になります。今回のインターンシップでは個性豊かな社会人の先輩の働きぶりを体感することになり、折に触れて「こうしたい」と発言し行動する、その表裏に注目してください。企業の歯車としての限られた職務を全うする時代は終わった今、これから社会に飛び出そうとする皆さんの可能性は無限です。社会に飛び込んだ後、「こうしたい」と発言し、その夢を着実に実現してほしいと思っています。
  インターンシップについては、以前勤務していたフィンランドの会社では工科大学院の学生がパートタイムで自然に学業と仕事をこなしているのを目の当たりにして、日本でも学生と社会人の境目がもっと低くなればいいと実感しており、今回お手伝いさせていただくことにしました。こちらも勉強させていただくことが沢山あると思いますのでどうぞよろしくお願い致します。(久冨和子=株式会社オーディーエス ERコンサルティング部マネージャ、写真提供=テンキーラビットシステム、2002年8月)

↓テンキーラビットシステム社にて仕事中
 左から近藤さん・久冨さん・伊達さん・宮田さん。撮影=川北智憲君、2002年10月
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インターンへの採用は、合宿の飲みの席で決めていただきました。まだ始まって間もないですが、既に一人前に仕事をすることがいかに難しいか経験してばかりです。というのは、このインターンシップは、決められたスケジュールに沿って決められたことをするというものではなく、ある目的と大まかな決まりごとが与えられただけで、あとはその目的達成に向けて自分で仕事を見つけて実行するというスタイルだからです。一人前として扱ってくださるので、同じ目的の下に社会に積極的に参加しているのだ、という充実感があり、このようにインタラクティブな環境にいられて嬉しく思っています(近藤侑子、2002年8月、2004年4月より東京海上火災勤務)

「企画の立案から実行までを学生中心で」というのが今回のインターンシップの基本方針になっています。宮田さんの横で見習いをするのではなく、企画を実践することで身に付けていくというものです。「やってみようよ」と軽くおっしゃる宮田さんに乗せられて(?)どんどん大きくなっていくプロジェクトにプレッシャーを感じつつも精一杯頑張っています。企画書や案文の作成など、自分たちの考えを文字に起こす作業の難しさを実感する面が多く、そこではゼミでの日経当番や教科書要約といった作業の経験がとても役に立っているように思います。これからスパートですが、多くのことを吸収していきたいです。(伊達博子、写真下、2003年3月卒業、アメリカン・ホーム保険勤務、撮影=川北智憲、2002年10月)

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ある病院に対し新しいビジネスプランを提案するための事前調査のお手伝いをODS社で致しました。病院でのヒアリングに同席して記録を取り、それをもとに文書や資料を作成することが主な仕事です。このインターンシップにおいて、私は学生というよりもメンバーの一員として扱われたために、最初は戸惑うことも多々ありましたが、今となれば、特別扱いを受けないことでかえって常に緊張感を持って仕事に取り組めましたし、実際の仕事の現場の様子も理解できた気がします。また、教育係の津田さんには、ビジネスマンとしての作法から始まり、就職活動や留学に関しての助言を頂く等、公私にわたってお世話になりました。(大森重生、2002年9月、2004年4月より三井物産勤務)

オーディーエスにて 左から大森君、津田誠さん、久冨さん、一人おいて右端小林義人さん

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2002年10月17日 (木曜日)

金融メルマガ第8号

元の記事の中には各ニュースごとに日本経済新聞の抄録のurlが書いてあったのですが、時間が経ってlinkが切れてしまったので省略してあります。このメルマガは現在も毎月発行されています。申し込みはこちらからどうぞ。(2005年1月追記)

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【金融メールマガジン 第8号】

リースと流動性

日向野幹也(東京都立大学経済学部教授)
url: http://www.ann.hi-ho.ne.jp/higano

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●立ち飲み屋いろいろ

先日寄ってみたJR総武線某駅のガード下立ち飲み屋は、ある意味で典型的・伝統的なサラリーマン男性向けタイプでした。店は綺麗で手入れが行き届いており明るく、繁盛してます。60歳くらいの店主と若い手伝いの男性の二人でやっていて客も店側もまったく男性のみ。生ビールは冷えてほどよい泡でサッと出てくる。キノコの辛い炒め物300円はお徳。安いわりに、料理は結構まともな味でした。

客層は20代から60代までいずれもサラリーマン風。一人の客もいますが、多くは会社の同僚と来ている感じでした。上司と部下という感じの一団もいましたが、一説によると、そういう飲み会を嫌う若い社員たちも、立ち飲みなら1時間以上居ることにはならないし安いので参加しやすいとも聞きます。

一方、連載本文に登場するブラジルなスタンドバーも、実在の日本橋の店の様子を書いたのですが、上のようなガード下の店とは全然逆方向です。客層はむしろ女性の方が若干多いくらい。大半の人が酒屋コーナーで選んだワインを飲み、料理もどちらかというと洋風。料理の味はさきのガード下の店のほうがしっかりしているかもしれませんが、こちらには社交場の面もあって、この店で知り合ったらしい常連たちも多い様子でした。酒屋と兼営しているこの店をヒントに、次々号あたりで南君もまた新しい店舗を展開するかもしれません。

さて今回の連載の金融にかかわるキーワードは流動性とリース・クレジットあたりでしょうか。リースは金融の変型(プラスα)であるということはしっかり理解してください。

●リース

ホンダ、ロス市から燃料電池車を受注
http://www3.nikkei.co.jp/

ここでいうリースは、ホンダがロサンゼルス市役所に燃料電池車を売るときに、分割払いにする金融サービスと、メンテナンスのサービスを付けるということでしょう。

三井リース、西日本銀系リース会社買収
http://www3.nikkei.co.jp/

この記事の中には「企業の設備投資低迷でリース業界では淘汰が厳しい」と書かれていますが、リースはまさに南君の新店の内装工事と同じように設備資金に使われるものだからと言えます。

みずほ銀、中小企業向けの新融資
http://www3.nikkei.co.jp/

中小企業向けリースのノウハウを持つリース会社が借り手を選別し、銀行が資金を供給する。リース会社が借り手選別の責任をとるべく、債務を保証する(借り手がもし返せなくなったら借り手に代わって返済する)、という提携です。リース会社は資金が足りず、銀行は中小企業へのリースのノウハウが足りない。そこでお互いに足りないものを補い合うわけです。

●流動性

もう一つのキーワードである流動性は、連載本文では南君の手元にあるキャッシュやすぐ換金しやすい金融資産のことを指していました。これを手元流動性と呼ぶこともあります。

それに対して、流動性の高い資産そのもののことを流動性と呼ぶことがあります。

http://www3.nikkei.co.jp/

この記事では日銀が流動性を供給すべきだ、つまり日銀が民間金融機関から金融資産を買い取れば、その代金は日銀にある預金口座に振り込まれますから、民間にとっては、持っていた証券などが日銀への預金に換わることになり、手元流動性が増します。さらに、売買高の多い市場はそれだけ有利な換金の機会が多いので、流動性の高い市場である、といった用法もあります。

このように流動性は、
(1)金融資産の換金性
という元の意味から、
(2)企業や個人の手元流動性の量
という意味、次に、
(3)その総計つまりマクロでの流動性の高い資産の量
という意味、さらには
(4)市場や取引所の取引量・頻度が多ければ資産の換金性が高い
のでこれを流動性の高い市場と呼ぶ、といったように、多様に使われます。しかし基本は換金性なので、それさえしっかり分かっていれば他の意味に使われていても読みとれるようになるでしょう。

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2002年10月 4日 (金曜日)

カウベル効果

これは金融市場でよく見られる模倣現象のことです。例えば銀行Aが企業Xに貸出を行っているとき、(ごく簡単に言えば)Aが貸しているのだからそう危ない企業ではないだろうと判断して銀行Bが同じ企業Xに貸し出しを始めることがあります。この場合、銀行Bは銀行Aの審査能力にただ乗りしていることになります。ちょうど牛の群をカウボーイが誘導するときに、鈴をつけている何頭かを動かすと鈴の音にひかれて他の牛も動き出すのに似ているので、カウベル効果と名付けました。

これをカウベル効果と(世界で!)最初に命名した論文は日向野(1984)です。その後、1986年と1995年の著書で再説しました。ところが最近はアメリカの文献が出典であるかのように「カウベル効果(The cowbell effect)」等と表記されたり、また経済学と全然関係なさそうところ、例えばMacintoshユーザグループ"Link Club"のニューズレターでも見かけて驚いたことがあります(確か、ベンチャーへの投資にも模倣現象があるという文脈でした)。

融資行動・投資行動の模倣が自由に行われるようになると、先に融資(あるいは社債の購入)を決めた貸し手・投資家は損することになってしまいますが、例えばアメリカの私募社債の市場ではこの審査コストを内部化する工夫がかなり以前から見られます。すなわち最初に私募である企業の社債Xを買う投資家は、いったん全額を買い取り、その後に一部を他の投資家に転売します。そのときに手数料を上乗せするのです。アメリカの社債市場においては、1990年から始まった規制緩和によって投資家(生保)がこのようなアンダーライターのような業務を行えるようになったために顕在化した現象です。他にも金融市場や政策金融のあちこちで類似の現象が見られます。
民間投資家(金融機関)の間であればこのように審査料となって顕在化しますが、政策金融においては政府系金融機関が先行貸出や信用保証を行うときにこうした料金は徴収されないことがむしろ多いことは日米共通です。この場合、審査料をとらない分は実質的に追随する民間投資家(金融機関)に補助金を与えていることになります。

なお、牛の首にベルを付けていたのは文字通り牧歌的な時代のことで、既にだいぶ前からポケベル(pager, beeper)に変わったとも聞きます・・・・


「『協調』融資と審査能力--日本開発銀行のケース」、『経済学論集』、東京大学経済学会、
第50 巻第1号、pp.70-82、1984 年4 月。
『金融機関の審査能力』、東京大学出版会、1986 年。
『金融・証券市場--情報化と審査能力』、新世社、1995 年。

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