金融メルマガ第4号
元の記事の中には各ニュースごとに日本経済新聞の抄録のurlが書いてあったのですが、時間が経ってlinkが切れてしまったので省略してあります。このメルマガは現在も毎月発行されています。申し込みはこちらからどうぞ。(2005年1月追記)
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【金融メールマガジン 第4号】
ワールドカップと割引パック
日向野幹也(東京都立大学経済学部教授)
なんといってもいま話題はワールドカップですね。今月号連載のp.49に「ワールドカップの試合中継がある日は極端に客足が悪くなり」と書きました。あれを編集部に送ったのは4月末だったのですが、予想としては当たりでした。6/9の対ロシア戦の晩はテレビの無い店の客足は、酷かったようです。南君が居酒屋のキャッシュフローを改善するために採った割引パックに似たものはワールドカップ関連でもあちこちにありますね。
●ワールドカップ観戦割引運賃
これは往復割引と期間中自由乗降ですが、「観戦したいけど交通費が高いからな〜乗り合いで高速道路で行こう」等と考える人をひきつけるための割引でしょう。試合終了時に合わせた深夜臨時列車も出しているようです。車や高速バス、飛行機などと競合していて、しかも切符を持っている人は必ずどれかの交通機関を使うので運賃値引きの価格弾力性は高い(とJRは判断した)のでしょう。
そして恒久的・全般的な割引ではなく、期間限定・区間限定なので、典型的な価格差別です。その意味では南君の店の団体パック・ボトルサービス(団体客は価格弾力性が高い、と判断)と同じですね。
●利益とキャッシュフロー(資金繰り)
法人所得税は企業の利益(所得)をベースに課税されるので、赤字の企業は払わなくて済みます。それに対して、この外形標準課税は、企業の外形(規模など)に応じて課税されるので、赤字か黒字は無関係です。日商という中小企業の全国団体(簿記検定試験などもここが主催してますね)の会頭が、中小企業はいま資金繰りが
厳しいので赤字企業に課税なんて困る、と外形標準課税の導入に反対意見を表明しています。
「赤字企業は資金繰りがますます苦しくなるので」と会頭が言っていますが、今回の連載の最後のページに書いたように利益とキャッシュフローは似ていますが同じではありません。利益は上がっていても手持ちのキャッシュが不足することはよくあります(黒字倒産はそうやって発生します)。逆に、損をしていてもキャッシュは足りていることは、なくはないですが長くは続かないでしょう。
例えばツケで仕入れをしていて、実際に支払いをするまではキャッシュは出ていきませんが、会計上は既に買ったことになって利益を減らす要因です。仕入れして作った品物が売れないでいたりすれば仕入れ代金を払うやいなやキャッシュも不足するようになるでしょう。会頭の発言はこうした経緯を省略しているとも言えますね。
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