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2002年4月の2件の記事

2002年4月16日 (火曜日)

金融メルマガ第2号

元の記事の中には各ニュースごとに日本経済新聞の抄録のurlが書いてあったのですが、時間が経ってlinkが切れてしまったので省略してあります。このメルマガは現在も毎月発行されています。申し込みはこちらからどうぞ。(2005年1月追記)

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【金融メールマガジン 第2号】

日本の銀行の事務品質は過去のもの?
——みずほ銀行のトラブルをめぐって

日向野幹也(東京都立大学経済学部教授)


日向野@そろそろ花粉症明け です。私の花粉症歴は24年。最初の十年くらいは花粉症が病気として認知されておらず、口の悪い人には「根性がない」と批判され、優しい人にも「病は気から」と妙な励まされ方をしてしました。

さて4月1日からみずほ銀行のATMの不具合・口座振替の未了などで大騒ぎになっています。連載でも4月号・5月号で銀行の決済機能のことは詳しく説明していますので今回はこのニュースにしましょう。これに関しては概要は皆さんご存じでしょうし、実際ご自分の口座で二重に引き落としがされていたり、振込が遅れたりといった経験をされている方も居るかもしれません。

15日昼現在では、遅れている口座振替の処理はまだ終わってないようです。こうしたトラブルの予兆は3月末からあったので、1日の事故も予見できたはずだ、という方向に報道が進展してきています。その勢いで三特別顧問が退任する見通し、と日経新聞は13日づけで報じましたが読売の方はもっと慎重な書き方です。

また、今朝のブルムバーグによると、上の日経の報道に対してみずほ銀行はコメントしていないとのことです。ただ、新聞にこう報じられてしまうと、実際退任せざるを得なくなるといったことも、ある意味で危険ですが日本では非常によく起きることです。ブルムバーグは新聞報道の裏をとる確認報道をすることが多いので要注目です。ただし過去のニュースはウェブ上に蓄積されていませんのでリアルタイムで見る必要があります。

私の大学のゼミの卒業生にもみずほ銀行・みずほコーポレート銀行に勤務している人が相当数居ます。また、UFJ銀行にも卒業生がいて、その一人が曰く「UFJの口座二重引き落とし事故のときも、支店から連日応援に借り出されて支店も大変だった。今回のみずほ銀行はもっと凄いことになっているだろう」。また、この春就職したばかりのOGは、先週ゼミの飲み会に遊びに来てくれて「今月はじめに職場指定の給与振り込み口座を作りに行ったら、みずほ銀行の待ちはゼロ、隣の三井住友は30人待ちだった」と新・社会人としての経験を話していました。

「実害はなかった」などと国会で述べたみずほホールディングス社長(5月号p.6の写真中央で笑っていますが)の感覚のズレ方にも恐るべきものがあります。ユーザの不便もさることながら、みずほ銀行内部でも、その昔(1981年)「ベンチがアホやから野球でけへん」と言っ(たとスポーツ紙に書かれ)て阪神を退団した江本孟紀参議院議員(民主党、元プロ野球投手、南海→阪神)の心境の人も居るかもしれません。もし居ないならむしろ心配です。

この事故でみずほ銀行の不良債権が増えるとか取り付けが起きるといった性質のものではないのですが、日本の銀行の事務品質は、欧米と比べて格段に高いと言われてきたことが、過去のことになってしまった感もあります。欧米の銀行では、請求の間違いは日常茶飯事なので月末にユーザが全部チェックしてから最終的に銀行宛にチェック(小切手)を切るのが普通です。ある意味では銀行不信が根っこにあって、それを自分の損得のかかわるユーザ自身が入念に調べて最後に決済するのです。従って、日本のように、銀行が通知だけよこして、ユーザが放っておくと口座から引き落とされてしまうというやり方は到底考えられないという人が多いようです。銀行側からみれば、あちこちから送られてくる小切手の山を名寄せして預金者に郵送してチェックしてもらうというやり方は(日本式ほどではないにせよ)コストがかかります。今月号p.88に書いたように、欧米でデビットカードが急速に普及したのも、銀行がこうした小切手のハンドリングコストを節約したいという動機が強く作用しているからです。

日本式はシステムの設計上も、人手のかけかたも、支店でのチェック体制も欧米より事前段階で既に厳重でコストがかかっています。例えば、支店で現金の勘定が1円でも合わないと全員が残業して原因をつきとめるといった従来のやり方は、労働コストがすごくかかります。欧米の銀行は、事故が起きるのは当たり前で事故の発見にユーザの労力を拝借し、さらにデビットカード導入でコストをカットし、対する日本式は事故が起きないように事前に(欧米的基準で言えば)過剰なまでのコストをかけるわけです。

ところが今回のみずほ銀行のようなことが起きると(特に、今後も起きる可能性があるとすると)、高いコストを払って自動引き落としシステムを維持していることの是非も問われるでしょう。高校生や大学生に言わせると、「だから銀行に口座なんか作るとウザいんだよ」。4月号に書いたように、コンビニ決済をメインにすれば、手元のキャッシュ(このキャッシュはお札・硬貨のことです)と銀行の口座残高の二つを並行して管理する必要はなくて手元のキャッシュ(同)だけに注意していればよく、またコンビニへの来店・決済も、期限日の何週間遅れまではペナルティがない等と計算して全てを自分で管理
できます。今回の事故は、高校生・大学生の銀行離れを加速するかもしれません。その流れは学生に限らず銀行と取引しなくて済む人へ、もっと広がっていくかもしれません。

連載来月号では南君は脱サラして居酒屋を開業します。居酒屋は私もよく利用するので(笑)、結構リアルに書けたつもりです。お楽しみに。

このメルマガや連載記事についてのご意見ご感想をお待ちしています。メールでへどうぞ。いただいたメールには必ず目を通し、今後のメルマガや連載に反映させていきたいと思います。

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2002年4月 2日 (火曜日)

2001年度ゼミ生手記

<卒業生から>
日向野ゼミでは、金融を中心にしながらも法律、ITなど経済に関連する幅広い分野を学習し、またメーリングリストを利用してゼミの時間外に日経新聞、英Economistの読み合わせも行っています。常に世の中の動向に目を向けながら、勉強できるわけです。また、アフターゼミ(飲み会)、合宿、OBOG会、先生のお宅訪問など、たくさんのイベントがあります。
 ゼミでの「勉強」というのは、大学前半までの「勉強」とはまったく違うものです。自分で「調べる」「考える」「発表する」「討論する」そして、何より先生に相談しゼミの仲間たちと協力して、楽しく勉強する環境を作り上げていく。社会人になった今も、ゼミでの2年間が自分の財産であると感じることができ、さらには今年も新しいことに挑戦しているに違いない現役ゼミ生たちをふと羨ましく思ってしまう。日向野ゼミはそんなゼミであると思います。(有野正路=2002年4月卒業、野村総合研究所勤務、写真前列右から二番目)

18Graduation.jpg

<在校生から>
経済学で何を学びたいか考えた時、今の日本経済の低迷は主に金融システムの問題によるのではないかと思いました。そこで、金融面から経済を捉えようと日向野ゼミを選びました。ゼミで扱う分野は幅広く、時には法律や雇用問題も取り上げます。学生主体の討論が中心で、活発な意見交換が出来ます。また、個人が関心を持つテーマを研究し調査発表も行います。ハードですが物凄く色々な事が吸収できます。更に、飲み会や合宿も盛んで、ゼミ生同士そして先生、さらにOBOGとの交流も深いです。先生は厳しいけど生徒思いで、弾けても面白いという、滅多に出会えないタイプの方です。(近藤侑子=2002年4月当時3年生、写真左端、2004年4月より東京海上火災勤務)(東京都立大学発行『大学案内2002-3』掲載原稿)

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