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2002年3月の2件の記事

2002年3月15日 (金曜日)

金融メルマガ第1号

元の記事の中には各ニュースごとに日本経済新聞の抄録のurlが書いてあったのですが、時間が経ってlinkが切れてしまったので省略してあります。このメルマガは現在も毎月発行されています。申し込みはこちらからどうぞ。(2005年1月追記)

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【金融メールマガジン 第1号】

資金繰りの本質——佐藤工業の倒産と中部銀行の破綻

日向野幹也(東京都立大学経済学部教授)

初めまして、日向野(ひがの)です。『経済セミナー』編集部を通してメルマガを発行することになりました。今回が第一回です。このメルマガは、雑誌『経済セミナー』とタイアップしており、連載「南君の金融日誌」の各号の内容を使って解読できる経済・金融ニュースを選んで、タイムリーな解説をメールでお届けするという企画です。印刷媒体とメールのそれぞれの良さ、つまり紙の読みやすさと、メールの迅速さを組み合わせられるのではないかと思います。このメルマガが届く頃には既に雑誌の四月号が書店に並んでいます。(雑誌は毎月12日発売。メルマガ配信は毎月15日頃です)

今回の連載講座は「学生生活と金融」というタイトルでした。お年玉や小遣いが唯一の収入源である小中学生、アルバイト収入が加わる高校生・大学生、いずれの場合も、キャッシュの入ってくるタイミングと出ていくタイミング、そのどちらが早く来るかが問題でしたね。不運にも、出ていく予定タイミングの方が早く来る場合には、家族や友人にキャッシュを借りるか、あるいは自分の持ち物を売るしかありません。これが資金繰りです。貸してくれる人がいなかったり、売るものが無いときは、楽しみにしていた支出計画自体をとりやめる他なくなります(ここまでについて詳しくは4月号を見てください)。

連載ではたまたま個人としての南君の小学生〜大学生時代を例にとって説明しましたが、資金繰りの本質は、企業でも政府でも金融機関でも実は基本的に同じです。先週もこれを思い知らせてくれる大きなできごとが連続しておきました。佐藤工業の倒産と中部銀行の破綻です。

●佐藤工業の倒産

佐藤工業が倒産した原因は資金繰りというよりももっと長期的な収益構造の問題でしょうが、このニュースの後半に書いてあるのは、佐藤工業倒産の余波が中小企業の資金繰りの及ぶということです。これはどういうことでしょうか。

ここでの中小企業とは、主に佐藤工業の下請けのことです。下請け企業は、佐藤工業が受注してきた工事案件を佐藤工業から請け負って実際の工事を行う。その代金は国から佐藤工業へ、それから佐藤工業から下請けへ、と払われます。つまり仕事の依頼も、代金の支払いも、国→佐藤工業→下請け中小企業、というふうに流れていきます。

ところが中間の佐藤工業が倒産(会社更生法適用)になると、終わった工事の代金が佐藤工業でストップしてしまい、下請けまで降りてきません。下請け中小企業は原材料を買って人を雇って工事したのですから、賃金や仕入れの支払いができなくなってしまい、連鎖倒産しかねません。そこで政府系金融機関が援助するという話になっているわけです。例えば、南君が、急に決まった旅行でバイトのローテーションに穴をあけないように友人の誰かを(内緒で)代役に立て、後でその分も含めて一ヶ月分の賃金をバイト先から受け取る。ところが南君は最近慢性的に使いすぎていて、代役の友達に渡す前につい流用してしまい、そのせいで友達も連鎖的に金穴になってしまう、例えばそんな状況に相当しますね。

●中部銀行の破綻

 静岡の中部銀行の破綻は、銀行自身の資金繰りの急速な悪化によって発生しました。ごく簡単に言えば、銀行からキャッシュの出る方は、預金引き出しの急増です。それに対して、貸出はすぐには引き上げられませんから、差し引きでキャッシュ不足になったものです。この記事によれば中部銀行は、増資(簡単に言えば株式の追加発行です)などの再建計画を発表したのですが、預金者の不安がおさえきれず預金解約が急増したようです。これでキャッシュは断たれたも同然になり、当局も救済するより破綻させたほうがいいと判断を固めました。

なお、銀行の場合倒産と呼ばずに「破綻」と呼ぶのは、法律上別な扱いだからです。なぜ特別扱いになっているか、どのように特別扱いなのか等はまた別の機会に。

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2002年3月 2日 (土曜日)

ゼミについて(日向野)

大学生の就職活動が年々早くなってきて、最近は三年生の冬に始まっています。企業が三年生向けにセミナーや説明会をその時期に設定してしまうからです。就活は約半年、四年生の夏ないし秋頃まで続きます。

授業担当者としては出席率が悪くてやりづらいのですが、それ以上に、大学の教育が軽く見られていると歯がゆい思いです。つまり、大学の最後の十数ヶ月(あるいは四年間?)で学ぶものなんて大したことないだろう、と企業の採用担当者がたかをくくっているフシがあるからです。

私は学生たちを鍛えて企業や役所を見返してやろうと決めました。都立大の学生はひと味違う、だから大学生は勉強を終え卒業してから選考したほうがいいかもしれない、と企業や役所が考え直すまで、鬼教師でいるつもりです。

幸い、既に手応えは出てきています。試験の成績よりも、むしろあるテーマについて自分で調べ、書き、自分の言葉で発表し、ディスカッションする、そうした力をつけた学生ほど就職も順調です。その力こそゼミで培われるものです。これと並んで(筆記試験や成績に表れる)講義中心の専門科目の知識があればまさに鬼に金棒というものです。

そのような考えにたって、当ゼミでは毎年新しいプログラムを組んでいます。コーポレートガバナンス、IT、金融などが最近の主な材料ですが、必要とあらば民法・商法・会計学などにも手をのばします。法学部からのゼミ参加者も受け入れています。例年、経済学部では二年生の11月頃に翌年度のゼミ生が内定しますが、このゼミでは内定後12月から直ちに三・四年生とまざって勉強してもらいます。それからの1年間は、メール(メーリングリスト)やウェブサイトも駆使してかなりハードに勉強することになります。

そういう厳しい勉強に耐えるには、一緒に頑張れる仲間が必要です。このゼミで二年余り猛烈な勉強をこなすうちにゼミ生たちはほとんど戦友?のように結びつきが強くなるようです。卒業してからもお互いに連絡を絶やさず、ゼミの飲み会やOBOG会、さらには合宿にも顔を出して後輩たちを励ましてくれます。まだまだ未熟な鬼教師ですが、熱心な学生たち・OBOGに助けられていると思うことしきりです(2002年3月)


つれない二人
fishingCouple.jpg

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