2006年4月から2019年3月まで,最初の11年は立教で,最近の3年は早稲田で(和が合わないのは2016年度は両方で統括していたからです),リーダーシップ教育科目群の最初にPBLを配置してきた経緯,そして2019年度からそれを変更して「理論とスキル」を学んでからPBLに入るようにした経緯は既にここでも書きました.
その後,春夏で1回転(理論とスキル→PBL)し,今は新しい受講生で秋冬の2回転目で,冬のPBLに入って3週目です.感覚での話なのですが,教員もTAもCAも一致したのが,昨年度に比べてPBLで本気を出すのが早いように見える点です.昨年度までは,8週のうち本気を出すのが5週目か6週目なのが常でした.
どうしてそう変わってきたかを考えると,一つには,理論→実践という自然な順番だからであるという議論がありえます.しかし実践のイメージがわかないうちに理論を教えても学ぶところは少ないので,少し実践してから理論を学んだほうが沁みるように分かるという議論もあり,私たちもそのほうがよかろうと考えて13年間は先にPBLを行ってきたのでした.これら両方のやりかたがあるという議論は,学習目標がリーダーシップであっても,実習・実践が可能な他の目標(例えばスポーツや化学)であっても共通でしょう.
この他に,リーダーシップ教育固有の理由はないでしょうか? 可能性があるのは,「理論とスキル」の8週間のなかにグループワーク・ペアワークが頻繁にあり,コーチングも含まれていたので,クラスメンバーの関係性が向上し,安心安全の場が作られていたことです.これを検証する一つの方法は,春の「理論とスキル」の受講生の一部が,夏のPBLではなく冬のPBLのクラスに入ったり,秋の受講生が翌年度夏にPBLに入るようなことが発生すると,メンバーが変わるわけで,それでもPBLがスムーズに回るのならば,特定個人間の関係性ではなく関係性そのものを構築する個人個人の能力があがったり,その組織の文化になりそれが伝承されていることになります.
さらに進んで,初対面の人とでも自分たちでチームビルディングをやってから協同で問題解決を始められるようになる,というのが上級編です.毎年夏に実施しているリーダーシップ・キャラバンでは,全国の大学でリーダーシップ教育を受けた学生が集まって,初対面同士でグループを組んで短期PBLを行ない,自分たちが上級になりつつあるかどうか試せる仕掛けになっています.このとき「権限によらないリーダーシップ」についての共通理解があるとないとでは,おそらく生産性にも関係性にも天と地ほどの差がありますね.例えば新卒採用選考のグループディスカッションではそういう理解がなくリーダーシップはドミナンスのことと思ってやたら仕切ろうとする学生がまだ多いと思われます.さすがに採用側はそうではなくなってきていると思いますが.